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004 「わたしと「土曜日の本」が出会ったときの話」

じゃあ、わたしと「土曜日の本」が出会ったときの話をそろそろ始めるね。

わたしたちの通っていた女子高。

結構古くて歴史のある学校だ。

古めかしい木造の旧校舎には、戦時中の機銃掃射の後があるらしい。見たことないけれど。

学校は森に囲まれている。

正面の正門は車道に面しているけれど奥のほう、旧校舎が残っているあたりは、半ば森の中に埋まっていた。

深くて暗い森。

それは学校の裏手にある小だかい丘へと続いている。

そして、その丘の麓。

森の闇がもっとも濃くなる場所に、旧図書館がある。

もともとわたしたちの学校のある場所は、土御門家という資産家が屋敷を建てていたところらしい。

その屋敷はもちろん取り壊されて校舎が建っているのだけれど、旧図書館だけはその土御門家の屋敷であった部分だ。

そもそも土御門家の書庫として使われていた建物なのだが、その膨大な蔵書ごと学校に寄贈された。

だから、ただの女子高の図書館にしては不釣り合いな、稀稿本や古書の類が大量に眠っている。

わたしは、その旧図書館にいつも入り浸っていた。

なにしろ本棚が幾重にも重なり合って迷路を作り上げている建物だから。

わたしがこっそり隠れていても、誰も気がつかない。


ある日のこと。


わたしはいつものように、朝学校に行くと教室には顔を出さずに図書館へ潜り込む。

ふと。

わたしは、奇妙な違和感を感じる。

わたしは、本棚が作り上げた迷路の奥に、見慣れないドアを見つけた。それが、違和感の正体らしい。

なにしろ無計画な増改築を積み重ねたらしい、複雑な形をした図書館だ。

毎日通っているわたしですら知らない部分は、ある。

でも。


そのドアは、間違いなく昨日はなかったはず。


わたしは誘われるようにドアノブに手をかけていた。

扉を開く。

そこには、真っすぐに昇っていく階段があった。

奥のほうは暗くてよく見えない。

わたしは、なにかに背中をおされるように、階段を上がっていく。

気がつくと、縦長の薄暗い部屋にいた。

壁には窓がなく、天井にある天窓から光が射している。

部屋の一番奥の壁際にデスクがおかれていた。

書斎で執筆に使われるような、木製のおおきなデスク。

そのデスクの上に、一冊の本がおかれていた。

その本の表紙にはこうかかれている。


「book of saturday」


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