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003 「世界が残酷な刻印をあなたにしるした」
あなた。
あなた 。
愛おしい あな た 。
わたしは、ようやくあなたとひとつになれた。
あなたはわたしであり、わたしはあなたである。
そう。
子供のころのように。
世界が残酷な刻印をあなたに印し、わたしとあなたの間を引き裂いた。
今ではその世界があなたを破壊したその刻印すら、わたしのものである。
ああ。
わたしは幾度呪ったことか。
なぜ、世界はあなたを選んだのだろう。
なぜわたしではなく。
もし選ばれたのがわたしなら、こんな孤独をあじあわずに済んだはずなのに。
でも。
もうわたしたちは、ひとつのもの。
あなたの瞳をとおしてわたしは世界を見ている。
足元には、ひとつの死体。
それは、かつてわたしであったもの。
いまは、ただの抜け殻。
ああ。
わたしはあなたに、話さなくちゃあいけないね。
どうしてこうなったのかを。
それは、ひとつの本との出会いから始まる物語。
その本の名は、こういいます。
「土曜日の本」