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023 「誤りとは、量子力学的なふるまいをする事象」

誤りとは、量子力学的なふるまいをする事象だと思う。

個々の愚かな行為を行っている間、そのときの行為はシュレディンガーの猫が生と死が重なりあった状態にあるように、それはまだ誤りとは決定されていない。

でも。

愚かな行為が積み重ねられ、それが自らの重みで崩壊して誤りと決定された時。愚かな行いだけではなく、積み重ねられた全てが誤りの自壊へなだれこんでいく。

コヒーレントに重なり合った波動関数が量子重力の崩壊で、一意に極所実在化するようなものだ。

わたしは。

愚かなことをした。

それでもそれがわたしの愛を巻き込むことになるなんて、ちっとも理解してなかった。

ああ。なんてことなの。

愛を汚してしまうなんて。


いじめグループの証拠をあげるなんて他愛のない作業だった。彼女らはいわゆる学校裏サイトと呼ばれる掲示板で連絡を取り合い、いじめの計画を立てている。

彼女らは、ネット上ではとても無防備だった。掲示板やコミュニティーサイトあるいはブログに自分のipアドレス剥き出しで書き込んでいる。ひどい子は出会い系サイトにまで出入りしていた。

わたしは学校裏サイトの掲示板を探り当て、彼女らのパソコンのリモートホストとipアドレスを確認した。後は彼女らが持つ表のブログにアプローチして、同じリモートホストとipアドレスである証拠をつかめばいい。

彼女らは狡猾なようにみえて、実に愚かだ。

わたしは掴んだ証拠を、教育委員会とPTA会長に送付する。いかに学校教師が無能であるかを添えて。

さらに、福祉の充実を公約に掲げていた市会議員にもアクセスし障害者のいじめを容認する学校の存在を、マスコミにリークしましょうかと脅してみる。

なんのことはない。

そのへんのモンスターペアレントがやっているのと、同じことをわたしはやったのだ。


その結果。

教師たちはPTAと教育委員会という自らの生殺与奪を握るものたちから、吊し上げられた。

当然彼らは慌てて生徒を脅しあげる。進学という武器を使い、いじめグループに制裁を加えた。

その結果、あなたへのいじめは無くなる。

でも、それがわたしの目的ではない。表面的にいじめを無くせても、それが地下にもぐり見えなくなったのならよけいやっかいだ。

わたしは、すべてはわたしが仕組んだことであるというのがいじめグループに、判るようにした。

つまり。

わたしは、いじめの標的をあなたからわたしへ振り替えたのだ。


それは。


愚かであるのは間違いない。

でも、間違ったとは思ってなかった。

わたしはでも、間違っていたらしい。

わたしは、彼女らの幼稚ないじめくらい耐えられると思っていた。


それがわたしの、誤算だった。


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