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018 「世界は、あなたを選んだ」

さて、自己紹介をするね。

わたしたちの紹介。

普通はそこから始めるだろうって?

まあ、いいじゃない。そんなの。


わたしの名前は、別宮理図。

あなた、つまり双子の姉の名は、別宮里沙。

ちなみにお母さんの名は沙羅。

お父さんは、いない。

放浪の旅をしているらしいが、本当はどうなんだか。

籍はどうやら入ったままのようなので、離婚はしてないようだ。

とにかくわたしも、あなたもわたしたちのお父さんのことは知らない。


わたしは16才になった。

高校生だ。

あまりちゃんと学校へ通ってるわけじゃあないけれど。


わたしとあなたは、幼い日には一つの存在だった。

世界がわたしたちを引き裂くまでは。

じゃあ、そのときの話しからはじめるよ。


わたしたちは、幼い日いつも公園で遊んでいた。

風の音を聞き、流れる雲をみて。空を渡っていく太陽と、日々色を変えてゆくそらと木々をみて。

その日もわたしたちは、沈みゆく太陽を眺めていた。

西のそらは金色に燃え上がり、天の高みは深く濃い青に沈んでいく。

わたしたちは、その自然が奏でる色のシンフォニーを見ていた。

はずだ。

はずだった。

でも、わたしは気がついてしまう。

あなたが、沈みゆく太陽を見ていないことを。

あなたの瞳には何も映っていないようだ。

あなたの全身は、硬直している。

そう、まるで。

まるで何かが。

無理矢理あなたの中へ押し入ろうとしているの、じっとこらえているようだ。

でも、わたしには判った。

あなたは、世界を見ていたのだ。

残酷で恐ろしい。

邪悪で傲慢な世界そのものを、見ていた。


世界は、あなたを選んだ。

それは、わたしには堪え難いことだった。

わたしは、生まれてはじめて孤独とはなにかを知る。

しばらくして、気を失ったあなたと号泣しているわたしは大人に見つけられ、病院へ運ばれることになる。


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