127 「わたしたちは、闇の中を墜ちてゆく」
わたしたちは、闇の中を墜ちてゆく。
現在に向かって、時の穴をおりていった。
過去へ向かったときと同じように、色々な記憶の中の景色が、カレイドスコープを見るように乱舞してゆく。
わたしは、間違っていたらしい。
世界は、死んだわけではなかったようだ。
春妃の破壊したのは、世界の一部にすぎない。
その全体は、広大で、土曜日の本と深いところで結び付いているようだ。
今更ながら、わたしはそのことを理解した。
落ちる速度は、どんどん速くなる。
いつか、身体が浮き上がるような感じになり、落ちているんだか昇っていってるんだか判らなくなったとき。
すとんと、穴にはまりこむような感じで。
わたしたちは、自分の身体に戻った。
わたしたちは、元の部屋に戻っているのに気がつく。
目の前には、とても蒼ざめた顔をしているエリカと。
そして、相変わらず人工的な笑みを浮かべる、道化がいた。
わたしの中で、かちりとスイッチが入った気がする。
気がつくと、わたしは赤の女王を呼び出していた。
傲慢で残酷な笑みをその美貌にのせた、赤いドレスの守護生命体が、道化の前にたつ。
「ティル・オイレン!」
わたしが叫ぶと同時に、赤の女王が道化の顔を蹴りとばす。
赤の女王に、ナチの軍用ブーツを履かせられないのが、なんとも残念。
道化は床に倒れても尚、笑い続けている。
まあ、当然と言えば当然。
道化なんだし。
「リズ、言っておくけど」
意外にも、エリカが声をかけてきた。
「あなた、勘違いしてるよ」




