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125 「待たせたわね」
わたしは、涙を流し鼻水もたらしながら、文句を言う。
「来るのが遅いよ、わたし」
春妃は、全く根拠の無い自信に満ちた笑みで、それに応える。
「待たせたわね。封印が結構厳重でさ、食い破るのに時間食ったのよ」
春妃は、妙に晴れやかな顔で、世界を見る。
黒い金属で出来た、身長よりも長そうな剣を、肩に担いで。
不敵に、微笑んでいる。
わたしは、そんな春妃を見て思った。
敵にまわすと、こんな嫌なやついないと思うはずなのに、なぜ味方にしたらこんな頼りないやついない、と思えてしまうのだろう。
まあ、わたしだから、仕方ないか。
春妃は、わたしに向かって手招きする。
「何よ」
「よこしなさい」
「だから、何よ」
「ああもう、決まってるじゃん馬鹿ね、まあ、わたしだから仕方ないか」
どうも、考えてることは、同じらしい。
「空間断層の盾を、一枚作ってよこしなさい」
わたしは理解して、鋏を少し動かして、不可視の盾を春妃へ放る。
見えない盾を、春妃は片手で受け止めた。




