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122 「わたしは、知っていたはずなのに」

世界が時間を遡ってたどりついたのは、幼いわたしたちの前だ。

そう、わたしは、知っていたはずなのに。

世界が、あなたを選ぶということを。

わたしは、次第に濃くなってゆく、世界の殺戮への意思を感じている。

多分、わたしは世界のアビリティーがどのようなものであるのかを、理解していた。

それは、時間線を遡り過去においてひとを殺し、現在時間において消滅させ、その空白を過去から招きよせたひとによって埋めるというものだ。

そして、世界のサクリファイスとして選ばれたのは、あなた。

あなた、なんだ。

わたしは、それを知っていたというのに。

きっと、道化もこうなることを、知っていたんだ。

道化にしてみれば、流竄院秋水は恋敵である。

彼が消えて、春妃が残るというのが、道化にとって最良の結果なはず。

もうすぐ、世界は光の矢を放ち、あなたを破壊しようとするだろう。

わたしの身体は、ここにないのだから、防ぐ手だてを持たない。

わたしは、赤の女王を呼び出してみる。

驚いたことに、彼女は出現した。

虹色に燃え盛る水晶の城を前にして、薔薇のように紅いドレスを着た守護生命体が不敵な笑みをみせて現れる。


(だめよ、理図)


あなたは、わたしに警告する。


(あなたまで、死んでしまう)


わたしは、叫んだ、そして、泣いた、そして、叫んだ。


「冗談じゃあないわ、せっかく一つになったのに。死ぬのは一緒よ」


わたしは、思う。

死ぬのは、今だ。

この時なんだ。

わたしたちが戦って死んだから、あなたは破壊されながらも生き延びた。

でも、結局ここに戻ってしまう。

ああ、死にたくない。

わたしは、叫ぶ。

それは、荒野を渡る風のように、暗闇を貫いてゆく。


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