112 「意外な真犯人を名指した探偵」
わたしたちは、玉座の部屋へと、案内される。
そこでは、エリカとパイロンが、何やら話し合っていた。
ローゼンフェルトはどうやら退去させられたらしく、その部屋にはもういない。
エリカは、顔をあげて、わたしたちを見る。
その瞳が、道化を見つけたとたん、まるで黒い炎につつまれたように、暗く輝く。
黒の剣士が、道化の前に姿を現すと、剣を喉元に突きつけた。
「結局のところさあ」
エリカは、無理矢理激情を押さえつけているような口調で、語る。
「諸悪の根元は、あんただよね」
道化は何も言わず、少し悲しげな瞳をしただけだった。
剣の先端が喉に食い込み、赤い血を白黒の市松模様へ滴らす。
「ちょっと、やめなよ、エリカ」
思わず声をかけたわたしを、エリカは睨み付ける。
「あんた誰?」
ああそうか。
わたしは、今理沙の身体の中にいるんだ。
「えっと。リズ的なリサ? もしくはリサ的なリズ?」
「言葉がおかしいよ」
会話が迷走しそうなのを見てとったパイロンが、割ってはいる。
「君は、理沙の身体へとりこまれた理図だね」
「まあ、そうともいうわね」
「あらまあ」
エリカは目を、丸くする。
「何にしてもさあ」
わたしは、エリカに話しかける。
「自分の父親殺すとかやめなよ。目覚めが悪いよ。それに、多分この道化が諸悪の根元ってことは、ないと思うけど」
「じゃあ」
エリカは、射抜くように鋭い目で、わたしを見た。
「だれが、諸悪の根元なのよ」
「えっと」
わたしは、少し躊躇いながらも、はっきりと言う。
「それは、わたしです」
そこに居合わせたひとたちは、いっせいにわたしを見る。
まるで。
意外な真犯人を名指した探偵を、見るような目で。