表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/132

106 「ちょっと長い物語に、なりますけど」

わたしは、あなたの身体を使い、立ち上がる。

あなたは現在の状況に混乱し、意識の奥底に身を潜めていた。

わたしは、金髪で碧眼、貴族的に整った顔立ちである、そのナチスの殺し屋を見る。

金髪の野獣は、抜刀した。

足を少し引き摺っているのは、あなたに靭帯を痛めつけられたせいだ。

わたしの中には、あなたの記憶もある。

もうわたしたちは、ひとつのもの。

あなたの瞳をとおしてわたしは世界を見ている。

足元には、ひとつの死体。

それは、かつてわたしであったもの。

いまは、ただの抜け殻。


わたしは、あなたに話をしたい。

あなたは、もう知っているかもしれないけれど。

ここに至るまでの、わたしの、そしてあなたの物語を。


けれど、今はそれどころではない。

ラインハルト・ハイドリッヒ、ナチスの殺し屋が、足を引き摺りながらわたしたちに、近づいてくる。

もう一度、赤の女王を呼び出して、鋏を振るわなくては。

わたしの隣に、赤の女王が実体化する。

けれど、金髪の野獣はもう目の前まで来ていた。

ラインハルトは、獰猛な笑みを浮かべる。

そして、その剣を、ふりかざす。

間に合わない。

その時、銃声が轟いた。

ラインハルトは、未開民族の舞踏を踊るように身体を痙攣させると、血を振り撒きながら地面へ沈む。


わたしは、銃声のしたほうを、見る。

アリスが、アサルトライフルをかまえて立っていた。

そして、その横に、彼女がいる。

別宮沙羅、わたしたちの、お母さん。


「理沙!? ねえ、これは一体どういうことなの?」


わたしは、力尽きて膝をつくと、かろうじて言葉を振り絞った。


「ええと、ちょっと長い物語に、なりますけど」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ