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第1話 出会い

『環境への適応能力』。

これははるか昔から、生物が生き残り子孫を残すために最も大切な要因だ。


一説では、あの恐竜が絶滅したのは氷河期に突入した地球環境の変化に耐えられなくなったからだとか。

一憶六千万年という途方もない時間、地球を支配していた恐竜でさえも、「環境の変化」には勝てなかったのである。


今は例えで分かりやすく恐竜を挙げたが、なにもこの話は恐竜に限ったことではない。

そもそも、生物の絶滅というのは珍しいことではないのだ。


『マンモス』。『トキ』。『ニホンオオカミ』。

有名どころとしてはこのあたりだろうか。


敗因―――とでもいえばいいのだろうか。間違っている気がしないでもないが、まあいいだろう。彼らの敗因はほぼ間違いなく、『環境への適応能力』の不足だと思う。


この考え方には異を唱える者も多いだろう。色んな団体からクレームが来るような考えかもしれない。

そういった人たちの意見の中には、こういう意見があるはずだ。


『人間が滅ぼした生き物だってたくさんいるじゃないか』。


なるほど。確かにそうだ。人間が原因で絶滅してしまった生物だってたくさん存在する。そして、それを防ごうとする人たちが数多くいるという事も知っている。


だが、俺は―――俺個人の意見としては、それもまた『環境の変化』の一種なのだと思う。

人間の活動。文明の発達。それらによる自然環境への悪影響。それは人間が生み出した『環境の変化』なのだ。

近年、多くの生物が絶滅していっているのは、その環境の変化があまりに早く、適応しきれないためなのである。さっき恐竜の絶滅で話した、地球の氷河期への突入。これと何ら変わりはない。


だからと言って、適応できない生物は全て絶滅すればいい、なんて考えは俺は持っていない。生物の絶滅を防ごうと活動する団体や人々を否定するわけではない。


ただ―――どうでもいい。俺はそんなことよりも今晩の晩飯の方が気になる。多くの人にとっても、そうではなかろうか。

一種の生物が絶滅しようが、ほとんどの場合、話題にも上がらない。仮に上がったとしても、1日2日経てば余程のことがない限り二度とその話題は上がってこないだろう。


さて、長々と語ってしまったが、本題に入ろう。

あまりに長すぎて読む気を失せた人、不快な思いをした人は多いはずだ。ここまで読み進めてくれた人には感謝の意を表する。ありがとう。


ただ―――悪いが、大した話ではないのだ。

俺が言いたいのは、『環境への適応能力』の必要性は人間関係においても成り立つ。そのことだけだ。

適応能力の強い者が人間関係で優位に立つ人物であり、それが弱い者は人間関係がうまくいかない、なんてこともあるだろう。


俺は自分でいうのもあれだが、適応能力を得た人間だ。

俺は今高校2年生で、多くの友人がいる。その友人との関係も良好だし、今のところ不自由はない。俺自身、今の環境には満足している。


それでも、俺の脳裏を離れないあの言葉。

今日の放課後、たまたまクラスに一人残っていた女子と初めて会話し、言われた一言。


『私はあなたが嫌い。自分に嘘をついてる、あなたとは話したくもない。』


…なんだ、あいつは。まさか、5分も話していない相手にここまで言われるとは思ってもなかったよ。

俺が呆然としていると、そいつはさっさと帰り支度を済ませ、帰ってしまった。


その子はクラスでも一人浮いていた子だ。

クラスの女子曰く、「話しかけても一言返すだけで、会話にならない。」らしい。


整った顔に、黒く綺麗な長髪。物静かな雰囲気と、漂う気品。

密かにクラスの男子間でつけている学内美人ランキングでは、常に上位に位置するほど、魅力的な外見を持つクラスメイトの女子。

しかし、その冷たい反応からか、友人と呼べる人間がいるのかわからない。俺も2年になってから彼女と初めて同じクラスになったが…進級から1ヶ月、彼女が誰かと談笑している姿を見たことがない。


そんな彼女が、少し気になっていたのだ。

言っておくが、下心は一切ないからな。断言する。

帰ろうと教室にかばんを取りに戻ったら、たまたま彼女がいて。ちょっと話してみたくなったから話しかけただけ。それだけだ。


しかし、自分に嘘をついてる、か。

そんなことは初めて言われた。友人にも、両親にも、最近俺にだけ反抗期な妹にも、言われたことがない言葉だ。


…とりあえず、俺も帰ろう。そして、明日もう一回話しかけてみよう。

彼女とは…なんというか、その…もっと話がしてみたい。不思議とそう思ったのだ。


明日どうやって話しかけよう。

そんなことを考えながら、俺は教室を出た。

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