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おまけ話一

 今回からおまけ話の数字は、漢字になります。

あいすべき胸像きょうぞう




 ミナミナの忘れ物を届けに過恋かれん学園を訪れたんだが、用事が済んでしまえば、途端とたんに暇になってしまったな。

 此処ここまで来たことだし、適当な攻略対象者の情報でも集めてから帰還するか。

 


 ……適当な攻略対象者と言ったが、一体誰にしようか。

 まだミナミナが出会っていない人物は除外するとして、どうせなら、あまり親しくしていない人物を僕は選択肢にげたいところだ。

 そうなると、一つ上の学年の攻略対象者たちが、この条件に当てはまる。

 早速、彼らの教室をのぞきに行ってみるか……






 二年生の教室は三階にある。

 目立たないように侵入するならば、廊下側よりも窓からの出入りをこころみる方が、てきしているだろう。

 確か、ベランダが無くて、腰窓こしまどには落下防止の為の手摺てすりそなえ付けられている。

 それと、遮光しゃこうカーテンが取り付けられていて、更に、棚のように広い窓台まどだいも有ったな。

 僕としては、これくらいゴチャゴチャしてくれる方が、隠れるのに大変都合(つごう)が良い。



 黒板の横の掲示板に貼ってある時間割表を、遠目で確認しながら、攻略対象者の教室を探す。

 廊下側だと入口にある教室札で、彼らの在籍ざいせきするクラスがぐに判明はんめいするから、教室を回らずに済むので、そちらから侵入するのでも良かったな。

 僕の存在に気付くかんするどい人間なんて、抑々(そもそも)の話、校内には一人も居ないだろうし……少し過剰かじょうな反応だったかもしれない。






 ――見付けた。


 何クラスかめぐめぐって、ようやく目的の人物がいる教室へ辿たどり着いた。

 少し前に授業終了のチャイムが鳴り、すで十分じゅっぷん程の短い休み時間に入っている。

 こっそりとカーテンに身体を隠しながら、きょろきょろと目を配って、僕は彼らを急いで捜す。



 攻略対象者の――古賀こが篤行あつゆき臥龍岡ながおか友愛ともなるは、まったりとリラックスしながら、談笑だんしょうしているようだ。


 どんな話題で盛り上がっているのやら……少し気になるな。 

 僕は耳をませて、彼らの姿を観察しながら会話を聞く。






「ユウ、聞いたか? 五月の胸像は子どもの日にちなんで、こいのぼりをかかげるらしいぞ!」

「……かなりどうでもいい情報をありがとうございます、トク」


 ふーん、どうやら、学園に設置している初代理事長の胸像について、二人は話している様子だ。



「ホウホウ、今年は無難に子どもの日の仕様なんだ。ありきたりで普通! それなら、去年のみどりの日をテーマにした、自然を愛するネイチャー初代理事長像の方が、インパクトがあって面白かったね」

「やっぱり、地味な姿になったのは、前にやらかした悪ふざけが尾を引いているんじゃないのカネ?」


 クラスメイトたちが、彼らの会話に加わった。

 でも、話の中心は理事長の胸像なのか。もっと有意義な話題があるだろうに。何故、こいつらは胸像にこだわるのだ。



「悪ふざけ……? ああ、もしかして、去年の小便小僧による初代理事長包囲網(ほういもう)のことか! ははは、御先祖様が完全にロックオン&ホールドされて面白かったな」

「ホウホウ、なつかしい。確か、とんでもないあおり全裸キッズ(小便小僧)が来校したと話題になったねぇ。新聞部が号外ごうがいを出していたし」

「ん~、女子と先生方には不評ふひょうだったけど、斬新ざんしんな侵入者たちだったことは記憶に残っているのだガネ。でも、悪行ばかりだけではなく、花壇に水やりをしていたのも、ちゃんと僕は覚えているのだガネ」

「はぁ、思い出すだけで、頭が痛くなる事件でしたね……」


 ……? 沢山たくさんの小便小僧を使って、理事長の像を囲む――――それは何か意味がある行為なのか? いや、絶対に意味なんて無いだろう。アホなのか……

 何と言うか、たまに、この学園の奴らは、よく解らない行動をするな。






可憐かれんに委員会へ潜入せんにゅう




 今、私は愛巣あいす高校の()()()()()()へと忍び込んでいる。


 サポート妖精である私が、態々(わざわざ)この場所までやって来たのは何故か。

 それはミーナの忘れ物……というよりは、落とし物を見付けて彼女へ届ける頼まれごとを、ったからである。


 とても優秀な私は、何処に落としたのかぐに分かったのだけど、まさか、遺失物いしつぶつがあるはずの空き教室が、現在進行形で使われている最中さいちゅうだったとは。

 ああ、タイミングが悪いったら、の上無い。


 待つのは面倒で仕方がないけど、終わるまでこの場所で隠れながら待機になる。

 ああ、時間が勿体もったい無いったら、ありゃしない。



 ……それにしても、何の為に生徒たちは集められたのやら、不思議ね。






「今日は我が委員会の証である登録証の作成を行います。学級委員のメンバー登録と推しサルの貼り付け作業が終わり次第、帰っていただいて結構です」

「皆さん、カードに貼り付ける『推しサル』の画像を用意しましたね。画像を貼り付ける前に、推しサルの証明確認作業を行いますので、用意した画像とお名前を此方こちらに提出してください」

「何らかの理由で、今日中に証の登録が出来ない場合は、後日ごじつ改めて個別での登録を行います。日程にっていが決まり次第、担任の先生から連絡が来ますので、必ずその日に登録をお願いいたします」


 ふふーん、学級委員の集まりのようね。

 でもって、お役所の仕事みたいなことをしているのね。



 ――推しサルか。

 確か、学級委員会の証はネックストラップで、推しサルとはそれの中に入っているカードに貼り付けている画像のことよね。

 推しサルとは、推している猿。推しメンみたいなもの。解りやすく言うと、インターネット内で自分のプロフィール欄に貼っている画像みたいなものかしら。



 相変わらず、この高校は変なルールがあるわね。絶対にルールの撤廃てっぱいなんてしないし、変梃へんてこな学校だわ。



 さて、このままボーッと、時間が過ぎるのをだらだら待つのは、退屈でつまらない。暇潰しにどんな推しサルを選んだのか調べてみましょうか。

 私を見付けられる人間なんて、ミナミナやミーナ以外に居やしないし……ねっ。

 

 




「お猿さん、何を選んだ? わたしはリスザル。目がくりくりしてて可愛いの」

「あっ、本当に可愛いお目目。アタシはねぇー、アイアイ♡ 見た目は少し怖いけど、名前が可愛いから好きなの!」

「アイアイって、こんな見た目をしているんだ。ちょいこわ可愛いね」

「でしょー?」


 ふーん、これが女子生徒が選んだ推しサルなのね。なるほど、なるほろろ。

 男子生徒の方は、どうなかんじなのかしら。


 あら、丁度ちょうど良いところに、ミーナのクラスメイトがいるじゃない。



「ねぇ、田所たどころ君の推しサルは何? あたし的にはスーパー攻めているイメージなんだけど、どう? 合ってる?」

「(せめ? 責めるってことか?)期待に沿うかは知らんが、俺は三猿さんざるを選んだな……あれくらいの拒絶きょぜつを一回くらいはしたいものだ。委員長の方は何にしたんだ?」

「あたしはね、スローロリス。毒を持っている素敵な猿よ。ポイズン。毒属性は、危険なにおいがするのがたまらなく良いのよね~」

「……そうか、好きなんだな」


 へー、名前以外も登録が出来るのね。他にもやっている生徒って居たりするのか、気になるわ。

 『ことわざの猿も木から落ちる』や『桃太郎の登場人物の猿』は通りそう。あとは、意外と人形焼きの猿も大丈夫そう。

 幅広はばひろくなるから、色々な推しサルが居そうね。



 他の男子は何を選んでいるかな――あの三人組なんて面白そうね。じっくりと観察しましょうか。



「サバンナモンキーで登録をしたんだけど、何故かイチャモンをつけられた。あの大空のような青々(あおあお)しい色の部分を加工するか隠せってさー、ひどい指示じゃない?」

「えー、あの人たちがそんなこと言うかな? ちょっと見せてみんしゃい………………って、無修正はヤバいって!!」

「何で股間こかんのアップ写真で登録したの?! つーか、登録が出来るの? よく許可が下りたね……」

「ウッウッ、ここにも味方がいない」

「当たり前だろう。いくらなんでも、青が好きだからって、これだけは無いわー」

「青金玉にモザイクでも貼って誤魔化せば何とかなるでしょ。つーか、青々しいっていう言葉を、ここで使って欲しくなかったね」


 ノリと雰囲気ふんいきがミナミナに、ちょっとだけ似ている男がいるわね。

 気になるわ。もう少し三人のおしゃべりに、耳をかたむけましょうか。



「――オレの青春にかげりを落とす無粋ぶすいなモザイクなど不要。もしも、使うならこれだ! でよ、近所の小学生たちとカードバトルで勝利した際に、貰ったカッコいいマークのシール!! そして、見てくれっ、『太陽』と『両腕りょううでえた太陽』と『一つ目太陽』の三種類のセンスが良いシールを!」

「テンション高めで何か取り出したよ、この人」

「んんー……? どこかで見たことがあるような。つーか、これって地図記号の『工場』と『発電所』と『灯台』のマークだね。君ってば、気付こうよ」


 ただ三人組で会話しているだけなのに、外から見るとコントをしているように見えるわね。



「…………」

「ああ、もう、無言で玉の上に工場を建設するな。まったく、す・ね・な・い・の!」

「…………」

「他のシールも貼ろうとしないの。つーか、地図記号の工場って廃止されたんじゃなかった」

「!? うそー、まじまじのマジで? タイムスリップってヤツじゃん。オレは股間に過去の工場を建ててしまったのか?! っしゃああーー、こうしちゃいられない。探せ探せ、お仲間を~~!」


 三人組の中で一番テンション高めの男子生徒は、急にスマートフォンをポケットから取り出して、何やら指先でぽちぽちと検索をして何か探している。



「………………これだっ!! 同じ廃止友達である桑畑くわばたけのマーク、コイツを使おう。見た目はどうの長いYだ、オレでも書けそう――よしよしよし、ポツンと廃工場は寂しいからな。俺が黒マジックで、周辺に桑畑を作ってやるからな。廃止同士で仲良くするんだぞ~」

「植えるな植えるな、しげらせるな。意味深にとらえる人が出てくるでしょうが……」 

「更に、濃いものになっている。つーか、下手へたすぎて角の生えた幼虫に囲まれているとしか思えないよ」

「今は使われていないものが二つもそろう……何だかノスタルジックな気持ちになるなぁ」

「こんなに自己主張の激しいはかなきものってあるのかな? 確実に生き残るパワーを感じるのだが……」

「バリバリ可動している現役げんえきって感じだよね。つーか、登録が終わったんだから、もう帰ろうよ」


 つるの声で、彼らは帰り支度じたくを始めた。


 お笑い番組を見ているような独特の面白さがあったトリオだったわね。仮想空間だったら、おひねりを投げてたかも。なかなか楽しめた。


 ふふーん、他にも面白い人物はいるかしら。



 …………って、あら? 田所たどころ日狩ひかりが居るのは分かるけど、何故か姫森小桃が此処ここにいるの。あのって、交通安全委員会に所属していたような気がするけど……



「あれ? 貴女って学級委員だったっけ?」

「いいえ、違いますー、誕プレ炭酸飲料たんさんいんりょうの借りで、副委員長の代わりに来ました。今日のは本人じゃなくても登録が出来るって聞いたので、手続きに必要なものは預かってきたんですー」

「ああ、そうなの。ん~~、一応並ぶ前に確認とった方がいいかもしれないわね。えっと、推しサルは干支えとさるね。画像は文字だけど、これなら大丈夫よ!」


 やっぱり合ってた。

 記憶違いかと一瞬いっしゅん悩んでしまったけど、自分の記憶が正しかったようね。



 では、気を取り直して、推しサルウォッチングを再開しましょうか。

 そうねー、そろそろ、推しサルの登録が出来ない生徒のパターンも見てみたいのだけど。



「○ーモンキーで登録しようとしたら、『○ーモンキーは魚だから駄目です』って断られた。くーっ、何でなんだーーっ!!」

「ドンマイ。百日紅さるすべりやモンキーレンチも無理っぽいから仕方がないよ」

「……お前は斉天大聖セイテンタイセイでいくのか。ゴッドなの選んだな~~」

「へへへ、イイっしょ? 登録が無理なら、ゴールデンモンキーで設定し直すつもりだし。妥協だきょうは大事よ?」

「くーっ、何だかカッコイイことを言いやがってーーっ!」


 まぁ、確実に猿では無いものは駄目よね。当然の結果だわ。

 さぁ、次の登録失敗例は……



「!? に、人魚のミイラを登録するのですか? 人魚を推しサルにするのは、流石さすがに無理がありますよ! 何でこれを選択したんですか?!」


 うーん、人魚のミイラを登録しようだなんて、大物がやって来たようね。

 登録の受付担当者が、困惑こんわくしているわ。



「ええ、貴方たちは、そう言うと思いましたよ。ずばり、お答えしましょう。人魚のミイラの上半身は猿を使っている場合があると聞き、ぼくは人魚を選択したんです。そういう訳で、推しサルにエントリー出来るのではないかと考えたんです。どうなんですか? 出来ますか?」

「えぇーーっ、その、申し訳ないのですが、猿の一部が入っていても、人魚として成り立っているのならば、登録不可となりますね」

「……まだ証拠が足りてないということですか。いたし方ありませんね。解りました。今から人魚のミイラを奉納ほうのうしているお寺に忍び込んで、DNAを採取してきます」

「あっあっ、る高貴なお寺に迷惑を掛けるのは駄目ですよ。解りました、今日は仮登録で受け付けましょう」

「そうですか、仮ですか。仮が取れるように頑張りますね」


 押しに弱い受付ね。

 駄目なものは駄目って、ちゃんと断った方が身のためよ。

 こういうのって、一度許可を出すと大抵たいてい(ろく)でもないことが起きるものよ。



「後ろの方に並んでいる子が、『人魚が許されるなら河童かっぱも大丈夫だろう』と河童を押し通そうとしていますよ!! どうしますか?」

「面倒なので、河童は尻子玉しりこだまかすめ取る可能性があるので不可、と禁止事項きんしじこうに書き込んじゃいましょうよ」

「うぅっ、何で今年は、こんなに登録に問題児が来るんですか……妖怪が良いなら狒々(ひひ)を選んでくださいよ」


 早速、思い込み系・言いかり系・無茶振り系、三タイプのからまれると相当鬱陶(うっとう)しくなる存在が出現したわ。


 はぁ、なんだか大変ね。御愁傷様ごしゅうしょうさま



 ……ところで、いつ委員会は終わるのかしら。


 落とし物をひろったら私は、さっさと帰りたいので、この集会を早く終わらせてちょうだいな。








〈可憐に委員会へ潜入:ボツネタ〉



 教室のはしっこの方にも、登録が失敗した生徒は居る。

 再登録する羽目はめになって可哀想に。登録に行くのって面倒なのよね。



「ゴリラは、ゴリラ・ゴリラだから、ごり押ししても無駄だって……俺、絶対に登録ができると思って画像を作ったのに、どうやら、俺自身におごりがあったようだ。はぁ、廃棄はいきするのは名残惜なごりおしい」

「(ゴリ何回言っているんだ)残念。かきごーりでも食って帰る?」

「まぁ、カテゴリーエラーだなんて可哀想ね! それで、どんなの作ったの? 良かったら、ワタシに見せてくれない」

「おぅ! 見てくれ見てくれ、力作りきさくのゴリライダーだ」

「(ゴリライダー? 何だか嫌な予感がする)バイクの上に重なるように、ゴリラの証明写真が貼ってあるのは、何でなんだ? ゴリラ単品たんぴんだけで良くないか?」

「ウ~ン、ワタシには、これがゴリラの生首に見えて、イイ写真とは思えないわ。この下のバイクの部分がなければ、もっとゴリラに力をそそげたんじゃないの?」


 お友達にも不評ふひょうの様子。気合いを入れて作成したのに残念ね。



「……俺はバイクが好きだからゴリラを選択したんだ。だから、ゴリラの部分を削るのは許容きょよう出来るが、バイクの面積をこれ以上減らすのは我慢ならない。このゴリラも登録するのに顔面だけ用があった訳だし……」


 ほー、なかなか最低な言葉が出てきたわ。

 そういったなら、落とされても仕方がないわね。ちょっとゴリラ愛が足りてないもの、貴方。



「(なるほど、道理どうりで)だから、ゴリラの写真を適当に切り取って、ペタリと張り付けた感じだったのか」

「ゴリラに興味がなかったから、この有りさまだったの。じゃあ、次は、ちゃんと愛がある写真にすればいいわ――かき氷でも食べながら、登録残念会でも開きましょうか」


 そういえば、切り取る前のゴリラの写真は、どういったものだったのか。少し気になるわね。

 なんとなくだけど、提出ていしゅつ書類と一緒に置いてそうね。こっそり、バレないようにあさってみましょうか。

 


 ゴソゴソ



 ………………あった! ふふーん、全体図は、こうだったの。

 これって、切り取らない方が断然だんぜん良い写真ね。

 私と同じ感想を彼らも感じるんじゃない。

 はさみを入れる前の写真を、お友達にも見せてあげましょう。そおーれー……



「ああ、イタズラな微風そよかぜが、俺の写真をもてあそぶ…………突然、此方こちらへ吹っ飛んで来たっ……?!」

「(何と! ゴリラの元写真か、これが!)お前、御食事中の無防備むぼうびな姿を激写したイカした写真だったのかよっ! 隠し撮り臭いけど、明らかに、こっちの方がいいじゃん。何で切り取ったんだ!」

「ウ~ン、謎のカメラマン組織と闇の取引をして手に入れた写真なの? ワタシ的には、うつりが良い素敵な写真だわ……どうして、切り取ってしまったのか、理解に苦しむけど。こういう行為を次はしないようにね。はっきり言って、面白くないから」

「何で急に責められているんだ? うぅ、ゴリラはもうりだ……」


 お友達に向けて投げたら、丁度良い位置――彼らの足元に落ちた。

 そして、私と同様の感想を次々と吐く。やっぱり、元の方が良い写真よね。

 しかしながら、ゴリラでの登録は出来ないので、残念だけど御蔵おくらりね。




 


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