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おまけ話15

 いつもより文字数が少し多くなりました。

〈Happy Birthday ~当日~〉




「あれ、姫森、大荷物だね。どうしたの、それ?」


 姫森さんは、缶ジュースと紙パックのジュースを両手にかかえながら、ゆっくり落とさないように、私のいる方へ向かって歩いている。

 自販機のある方向から来たから、買ってきたばかりなんだろうけど、量が多いね。買い出しを頼まれたのかしら?


 とりあえず、現在、私は紙袋やエコバックのような仕舞える袋は持っていないので、直接手で持ち運ぶのを手伝えばいいかな。

 姫森さん、歩くたびに飲み物を落としそうで、ちょっと冷や冷やするし。



「んふふふふ、実は今日、あたしの誕生日なんだよね。だから、これは誕プレの一部♡ さぁ火置も、あたしを祝って、祝えー!」

「えー、そうなの! 誕生日おめでとう。誕生日、今日なんだ」


 姫森さんは四月生まれなんだ。早いね。

 ……って、ああ、しまった!! 私、誕生日プレゼントを用意してない。お祝いの言葉だけになってしまう。



「んん? なーに? 火置ったら、もしかして、ちゃんとしたプレゼントをくれるつもりだったの? ふふふ、太っ腹じゃーん!」

「今日中は流石さすがに難しいけど、知ったからには、ちゃんと用意するよ」


 何をプレゼントしようかな~?

 好きな人や恋人枠ではないから、友人枠で贈り物を選べはいいのかしら。



「……まじか、律儀りちぎだね。あたし、あんたにたかろうと思ってたのに」


 姫森さんはパチパチとまばたきした後、ボソっと、そう答えた。



「どうせなら、リクエストしてもいい?」


 明るくて積極的な姫森さんにしては、珍しくひかえ目な質問が出る。

 


「うん、いいよ。あっ、でも、あまり高価な物は……」


 申し訳ないけど、ブランド物の高価なものは金銭的に無理かな。それに、高いプレゼントを親しくない異性から貰うのって、個人的に嬉しいんだけどちょっと怖い気持ちにもなるからやりたくないな、私は……



「大丈夫、無理なら別に良いから。どうしても、欲しいってわけじゃないからさー」

「そうなの? それじゃあ、何か聞こうかな」

「えっとねー、あたしの欲しい物は――――」






「…………で、ミーナは、これを買ってきたと」


 みなと君の学習机に置いてあるビニールで包装された衣類(新品)をカレンちゃんは指差す。



「姫森さんへのプレゼントは、それなんだけど……まだ話の続きがあるんだよ、カレンちゃん。その後、のろのろと歩く私たちの姿を見かねた事務の先生が、レジ袋を持ってきてくれてたんだ。そのおかげで、俺たちは教室まで飲み物を落とさず運べたんだよ」

「あー、うん、良かった、解決ハッピーね……それで、ミーナは、あれを本当に誕生日プレゼントとして贈るの?」


 カレンちゃんは、再度さいど、学習机の方へ指を差す。



「うん、そのつもり。だって、姫森さんの希望通りの品物をちゃんと用意したんだからね」


 姫森さんに尋ねたところ、彼女は、とても意外な物を欲しがっていたのだ。

 そのため、手に入れるのに、少々財布さいふに痛い出費になってしまった。

 けれど、リクエストに沿ったプレゼントだから喜んでくれるはず。彼女へ渡すのが楽しみ。



「……う、うぐぐぅー、もう、何なのよ! 誕生日に男性用の下着を欲しがる女ってどうなのよ?! 意味が解らないし、訳が判らない。あの娘、そんな変梃へんてこな行動、今までとらなかったじゃない。もう、変なことされると私が困るのよ! はぁぁ~~、きちんと前回と同じ行動をとってちょうだいなっ!」


 カレンちゃんはうなりながら空中をビュンビュンと飛行している。激しくもだえていて、かなりあらぶっている様子だ。



 カレンちゃんの気持ちも解る。


 私も理由を知るまで、男性用の下着を欲しがる姫森さんは何て積極的で大胆だいたんな攻略対象者なんだろう、と思ってドキドキしたし、私も彼女を見習って、もっと攻めの姿勢でドンドン突き進んだ方が良いのか、と一瞬いっしゅん悩んだりしたもの。


 でも、姫森さんが何故下着(男性用)を欲しがったのか、きちんと理由が判明すれば、その悶絶もんぜつは消滅すると思う。モヤモヤはたちまち晴れて、すっきりさわやかです。



「カレンちゃん、姫森さんは男性用の下着が必要だったんだよ」

「男の下着が必要になるシチュエーションなんてあるの?! どんな状況よ! 男装でもするつもりなの……?」


 悲鳴のようなツッコミをカレンちゃんが入れる。

 マイナスのイメージがただよっている。やっぱり、きちんと理由を話した方が良いね。

 理解出来ないって、すごくストレスがまってイライラするもの。



「男装というより、姫森さんは抑々(そもそも)くつもりはないようだよ。防犯に必要だから欲しいみたい」

「ぼ、う、は、ん……下着で防犯?」


 カレンちゃんは首をかしげた後、飛ぶのを止めて学習机へ無言で降りる。


 先程からベッドに座りながら会話をしていたけど、彼女に説明をしたいので、移動して椅子いすに腰掛けることにしよう。



「現在の姫森さんってアパートで独り暮らしでしょ? そういう場合は、独りだと思われないように洗濯物に男性服を混ぜるんだって。でね、服は用意してあるけど、下着は持ってないから欲しいんだって」

「な、なるほど? 本当に防犯の為なのね」

「そう、それで、頑張って強そうな下着を選んでみたの!」

「(強そうな下着って何? 破れなくて丈夫じょうぶってこと?)そうなの、そうなのね……」



 どうやら、カレンちゃんは不安ながらも納得してくれたようだ。良かった、良かった……


 そうだ! 理解して貰ったことだし、プレゼントする前の下着をカレンちゃんに見て貰うことにしよう。



「強そうな下着といって連想されるのは、やっぱりふんどし! 今回プレゼントするにいたって、カラーは熱血・危険・憤怒ふんどをイメージさせる赤い色を俺は選択してみました」


 そう言いながら、机の上にあった赤褌をカレンちゃんの方に見せる。



「出た、赤ふん……」

「これさえあれば、ここには雄々(おお)しい人間が住んでいると勘違いしてくれるはずです!」

「雄々しい人間……? うーん、目の前の愛用者は別にそうではないような……?」


 カレンちゃんは時折ときおり私の顔を見ては悩ましい表情をする。

 この様子だと、褌だけでは防犯的には今一つインパクトが足りない。

 しかし、私が姫森さんにプレゼントするのは、褌だけではないので、次に紹介する下着で強さをアピールして挽回ばんかいを目指します。



「次は、この下着です。悪い人が褌を知らない場合にそなえて、トランクスを用意してみました」

「(褌は知ってても使用したことがない男性は多くいそう)トランクスなら、まぁ大体の人は知っているものね」

「この下着は何と言っても、悪人たちがおそおののくデンジャラス刺激を目に焼き付けるような代物しろものなんだ。えっと、だから、要するに攻撃的ながらってことです」


 プレゼントする予定のトランクスとは色違いバージョンです。サンプル用に購入したもの。

 それを手に取り、カレンちゃんにも柄がよく観察が出来るように近付ける。



「ふーん、ビビらせる柄ってこと。どれどれ……って、こわっ! しかも、目が沢山たくさんあって気持ち悪い柄っ!!」


 カレンちゃんは驚いた後、困惑しながら後退あとずさりする。


 よし、効果は抜群ね。これならば、不審者にも効きそう。

 口やくちびるの模様と悩んだけど、目の方が効き目があると信じて良かった。 

 何と無く、目や眼球の方が監視や魔除まよけの雰囲気ふんいきがあると感じて選択したけど……うふふ、バッチリ正解を引いたようね。



「確かに一級品いっきゅうひんの怖い目ばかりがそろっているけれど、でもね、ほらっ、よく見て……履くと丁度ちょうどズボンの右側のポケットが有るこの部分の目、すごーく小鹿ちゃんぽくて可愛くない? 周りに浮いている目は、死んだ魚の目とか、瞳孔どうこうが開いている目とか、ホルマリンけのような気味の悪い眼球がんきゅうとかだけど、このつぶらな草食系のバンビちゃんアイだけはいやしキュートなんだよー!」


 分かりやすいように指でツンツン、オススメポイントのお目目をつつく。



「(……トランクスを履いたんだ)確かに、他のと違って可愛いらしいわね。しかし、パンツに目目連もくもくれんが取りいたような柄ねー、これ」


 もくもくれん? 木蓮もくれんなら知っているけど、何かな? 植物や園芸品では無さそうだけど。 



「カレンちゃん、もくもくれんって何?」

「うーんと説明すると、目がいっぱいある日本の妖怪。で、えーと、見た目が障子しょうじの障子紙部分に目がびっしりと配置されているかんじで、悪さは多分しないあやかしだと思う……? ごめんなさい、私もそんなに詳しくないの」

「なるほど、つまり、ちょっと怖い妖怪なんだね」


 ふむふむ、和室に居そうな目の妖怪ってことだ。


 妖怪に似ている柄。なかなか強そうな下着なのではないかしら。私は恐怖感を与えたいのだから、コンセプトにピッタリと当てはまる。


 これならば、姫森さんも満足してくれるプレゼントになる!

 よし、後は可愛い箱に仕舞ってラッピング! 素敵なプレゼントに仕上げて贈りましょう。









〈Happy Birthday2 ~誕生会たんじょうかい~〉




 ピンポーン


 玄関のチャイムが鳴らされる。



「はい、はい、ちょっと待ってねー、つくちゃん」


 あたしの誕生日がある週の休日――今日は二人だけで祝うあたしの誕生会がある。

 本日のハッピーバースデーイベントに参加するメンバーは、つくちゃんとあたし。以上、紹介終わり。

 まっ、あたしのアパートをよく知らん奴らを招待して以降いこう、ここをたむろに使われるのは超迷惑だからね。

 誕生日会は、自分(あたし)と仲良しのつくちゃんだけで開催するのがベスト選択なのさー




 急いで玄関の扉を開ける。すると、


「わたしが時間通りに来ているとはいえ、ちょっと無用心よ、小桃。開ける時は何者か見極みきわめないと、もうすぐ日が落ちる時間帯なんだから危険……」


 しぶい顔をしたつくちゃんに玄関の前で注意をされる。

 独り暮らしになると、家の中で注意されるのが珍しくなっていく。

 んー……しかられるのも何だか新鮮な気持ちになるね。



「はいはいっと、次はちゃんと内側から確認するからね、今回だけは許してね。そんでもって、いらっしゃーい、つくちゃんー♪」

「悪い、お祝い事なのに無粋ぶすいだったね……ごほん、では、お邪魔します」


 扉に鍵とチェーンをしっかり掛ける。施錠せじょう完了っと。

 振り向いて、つくちゃんの顔を見ながら、


「気にしてないよ。それよりも、つくちゃんはスリッパを履くー?」


 気無げなく、スリッパを履くようにすすめる。

 あたし、裸足はだしで床を歩くのって嫌いなんだよね。

 だから、家だと靴下とスリッパを手離せないし、学校でも水泳の授業以外は素足すあしにならない。



「……防犯の方は少しは気にして欲しいな。可愛いスリッパ、ありがたく借りるね」

「あたしってば、センスが抜群ばつぐんに良いからね♡ はい、どうぞー」


 アライグマのスリッパをつくちゃんに手渡す。

 つくちゃんが可愛い系ならば、あたしは格好いい系のサメのスリッパを履くことにしよう。

 そうして、パタパタとスリッパの足音を二人で立てながら、荷物を持って台所の方へと向かっていったのだ。






 つくちゃんが持って来てくれた夕御飯のおかずを冷蔵庫に入れる。

 つくちゃんのお母さんの手作りのおかず。美味おいしそうだったなぁ、夕飯が楽しみだー♪



「あっ、そうだ、ケーキ。冷蔵庫に入らないから、今、食べちゃわない?」


 冷蔵庫にごちそうを仕舞ったら、残念なことにはじき出されてしまったあたしの誕生日ケーキ。

 嗚呼、可哀想。味が落ちる前に、あたしたちがペロリとお前をたいらげてあげるからね。



「小桃が良いなら食べるけど、夕飯前なのに良いの?」

「カップルサイズだから、そんなにでかくないでしょ。さぁ食べよう、食べよー」


 テーブルの上にケーキの入った箱を置く。

 さてと、ケーキに合う飲み物は、やっぱり紅茶だよね。早速お湯をかしてれるかねー



「わたしも手伝おうか?」

「つくちゃんはお客様だから、そこのソファーで待ってて。ぐに済むからさー」


 お気に入りのソファーベッドへ座るようにうながす。

 また、つくちゃんが退屈しないようにテレビをける。

 おもてなしの精神。これは友達が遊びに来るとガンガン発揮される。


 ――この時間帯だとろくな番組がやってないけど、BGM代わりにはなるか。


 ケーキボックスの横にテレビのリモコンを置くと、再び台所の方へ向かう。ちゃっちゃっと、済ませちゃいますか。






「んー、甘くて美味しい。やっぱりケーキはチョコレートが一番いちばんだねー」

「小桃はチョコが本当に好きだね」

「つくちゃんはショートケーキ派だっけ? いや、違うな……あたしの記憶によれば、確かモンブランかパイ生地きじ派だったはず! ずばり当たりでしょー?」


 つくちゃんに尋ねた後、チョコレートケーキに付属していたプラスチックのフォークをかじる。

 御行儀おぎょうぎが悪いけど、なんとなーくガジガジしたい気分だ。



「うん、ケーキの好みは正解だけど、でも、特に好き嫌いは無いよ」


 言い終わるとほおに手を置いて、甘味かんみなるケーキを噛み締めるつくちゃん。

 我が親しき友の言う通り、基本的にケーキは、どの種類も美味しいか。味のはずれも有るけど、あたしもケーキならどれも好きだし。



 ところで、つくちゃんが気になっているであろう事柄に、そろそろ斬り込んでみようか。

 あたしも贈られたプレゼントの中身が気になることだし、ねっ……



「ふー、ケーキも大分だいぶ腹に納めたし、貰ったプレゼントを見てみましょーか。一番手は……っとぉ、火置からのやつね!」


 と、勝手に宣言してみた。プレゼントを開ける順番は、貰ったあたしが決めるのは当然の結果なんだけどね。

 さてさて、チラリと横目でつくちゃんを見ると、案のじょうそわそわしている。

 大事な幼馴染おさななじみ君からの贈り物だからね。気になるのは当たり前か……



「つーても、火置からのプレゼントは、他の人からと違ってリクエストしたやつなんだよねー」

「ふーん、そうなんだ。それじゃあ、プレゼントで驚きはなさそうだね」


 そうだよね、そうだよね、普通はそう思うよねー♡



「ヒヒッ、ちなみに、何をリクしたと思うー?」

「……物凄く嫌な予感。何を強請ねだったの?」

「それはねー、ななな、なんと下着でーす!」

「は?」


 驚いた顔のまま、ピシリと石像みたいに固まるつくちゃん。

 どうやら、話した内容をちゃんと飲み込めてない様子。だったら、もう一度、繰り返してあげよう。

 あたしってば、超親切!



「だからね、あいつからのプレゼントは男性用の下着なんだよー」

「は、はぁ~~?! な、何でそんな物をプレゼントに選んだの!?」


 石化していたつくちゃんは、再び動き出す。

 贈られたプレゼントへの疑問・不満・苛立いらだちをぶちまける為に……



 うんうん、これよ、これっ! サイコーよ♡



 ……あたしはね、『びっくりする』よりも『びっくりさせる』方が好き。とっても大好きなの。


 そういう悪癖あくへきなんで、貰った誕生日プレゼントによって自分自身が驚くよりも、周りの人をあたしが貰った誕生日プレゼントで驚かせたい派の人間。

 プレイヤーとして選ぶとしたら、ターゲットよりも仕掛人を選ぶってこと。


 どういう訳か、どっきりについては、『したい』よりも『させたい』が強いだよね。何だろう? 前世からの因縁いんねん? そんな訳ないよねー



 とにかく、一年に一度しかない自分の誕生日。優先すべきことは、自分の好きで決まりでしょ? 今日きょう一番のあたしの正しい選択。



「おやおやー、何故か貰ったあたしよりもつくちゃんがあせっている様子。でも、おとなりさんだし、火置のパンツなんて見慣れているんじゃないのー? 風で飛ばされたりしてるでしょう」

「なっ、なな、何でそうなるの。そんなことない。全然そんなことない! 人様の洗濯物なんてじろじろと見ないし、パンツなんてうちに迷い込んで来ないんだからっ!」


 いきおいよく首をぶんぶんと横に振って、必死に否定している。ヒヒッ、揶揄からかったら面白いことになった。


 しかし、やり過ぎには注意。あんまり、しつこいと嫌われちゃうので。

 あたしは、そこんとこ、わきまえている玄人(プロ)なんで、心配は要らないんだけどねー



「まぁ、つくちゃんが見慣れているであろうパンツは置いといて……プレゼントを開封するとしますか」

「見慣れてない」

「ふーん、下着は二枚あるのかー……」


 箱から出して、手前のやつから中身を取り出す。

 パッと見ての感想は赤い。柄無し。シンプル。だけど……


「何? このヒラヒラ?」


 それはひもが付いた細長い布だった。これ、下着か?



「紐があるし手拭てぬぐいの亜種? わかんないー、謎の布だよー」

前垂まえたれやカフェエプロンのたぐいじゃないの? きっと、港も後で考え直して、まともな物をチョイスしたんだよ」


 つくちゃんは胸に右手を置いて、ほっとしたご様子。

 えー、火置ってば、本当に逃げに走ったの。だったら、幻滅。つまんない男。あたしをがっかりさせないで欲しいな。



「うーん、まじでエプロンなのかなー。ちょっと違うような感じだけど……?」

「確かにたてに長すぎるし、何だろう……あっ、分かった! 棒が付いてないから判りづらいけどはたなんじゃない、これ!!」

流石さすがつくちゃん、えてる! 天才! ほー、それっぽいね。何でくれたのか、意味不明だけどねー」


 なるほど、旗ね…………って、何で赤い旗をプレゼントしたんだ?

 闘牛だったら効果があるかもしれないけど、防犯力は絶対にないだろうに。

 パタパタ振っても何も起きないと、あたしは思うけどなー。まじで何を考えて寄越よこしたのやら、謎。



「まぁいい、次よ。きっと、これこそが本命に決まりねー」


 プレゼントの箱から、もう一つの方を取り出す。

 今度は、ちゃーんと希望した男物の下着が入っているといいんだけど。



「…………ん、んん? は? うわっっ、何これ?! だだだ、ダッセーっ!! まじでキモダサいんだけどー!?」


 実は開ける前からパンツの柄がチラリと見えていた。

 だけど、全体像が判るまでは我慢して黙っていた。

 そんなが訳ない、そんなが訳ない、と。

 でも、結局は、こいつが袋から出てきた。



 アホかー、女の子がパンツを寄越せって言ってんだから、勝負パンツを持ってこいやー、コラーーーっ!!

 何だよ、この目玉たっぷり柄の気持ち悪いトランクスは。何だよ、この360度、全方面ガンつけてるパンツは。パンツの分際ぶんざい喧嘩けんか売ってるのかよ……

 くそー、白ブリーフの方が十倍ましだっつーーの。今からでも遅くないから、自慢の一張羅いっちょうらを清潔感のあるホワイトブリーフへと変更しなさい、火置っ!!



 ハァーー、脳内だとしても、異常に対してのツッコミ作業は疲れるよー……



「……つくちゃん、あまりひどいことは言いたくないけどさー、君の幼馴染のセンスは死んでいるよ」


 目玉大集合柄の威嚇いかくトランクスを愛用している奴はヤバいって。おしゃれセンスがイカれているし、目撃したら何メートルか距離をけるレベルだよ。

 あたしだって、知り合いだとしても近寄りたくないもん。


 

「とても個性的な柄。銭湯に行ったら悪目立わるめだちしそう」


 つくちゃんは、このクソ・ダサ・キモい柄を見ても狼狽うろたえず、冷静に感想を言う。付き合いが長いからスルー出来るのかなー?

 いや、もしかして、あいつは常に私服がダサいタイプの男なのか? 

 学校以外で会ったこと、あんまりなかったから気付かなかったなー。そうか、センスが死滅しているのか。



「はぁーーっ、パンツと視線が飛び交う男たちがいっぱい現れそう。それって、どんな事案だよ……意味わかんないー」

「身長が小さい子なら『あのお兄さんのパンツと目が合った』ってゆびされながら言われそうね」


 パンツと目が合うことなんて日常であり得るの?! 

 パンツと見つめ合う……それってめっちゃかれているパンツじゃん! めっちゃ呪いのパンツじゃん!

 もう、嫌だー。滅茶苦茶、家に置いときたくないパンツだー。


 っていうか、貰っておいてなんだけど、これを洗濯物と一緒に干したくない。

 ご近所様に変な人と思われそうだし、火置に返却したい。こっそり、火置のロッカーに戻したら駄目かなー


 流石に駄目だよね。


 仕方がない。父の日にラッピングし直してパパに渡すか、パパが泊まりに来たら、これらを差し出そう。

 可愛いあたしの贈り物だからね。絶対にパパは使用してくれるはず。

 パンツ問題は、これでまるっと解決かなー

 いや、結局パンツを買いに行かないと駄目だ……






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