うっかり・みなと君
「失礼しました」
退出の挨拶をして、職員室の扉をピシャリと閉める。
いや~、入部届の書類を提出するのをすっかり忘れていたわ。
帰りのホームルームで手渡ししてもいいけど、ぶっちゃけ、忘れそうなんだよね。
こーゆーのって、記憶がある内に出した方が良いパターンなので、ちょっくら行ってきました。
俺はフットワークが軽めの男だからー、パパッと済ませちゃう。直ぐに行動する俺、偉すぎ~♪ 褒めてくれても構わんのだよ、人類君~♫
いや~~、でも、おっちょこちょいだな、俺。いや、ドジっ娘の方が可愛いか。
俺は『おっちょこちょい』よりも『ドジっ娘』の響きの方が好きだ。
なので、ドジっ娘を名乗ろうか。詐称だと思われようと、積極的にアピールはしとこう。俺、ちと必死過ぎるか?
だって、だってさ、仕方がないのだ。ドジっ娘って、すっげぇーカワイイ概念だもん。
とゆーわけで、俺もキュートにアピっていくぜ~~!! 目指せ、腹立つ可愛さ♡
テヘヘ・サーセン連発の苛つく手裏剣、シュッシュッシュッ!!!
よしよし、空想☆予行練習もバッチリだな。イライラ・ムカムカ・ヒャッハッハッ、で急所を攻めていこうか。
「……へくちっ!」
ちょっと誰ですか~? 俺の噂話で盛り上がっているの。そーゆーのは気になっちゃうから、俺の真ん前で花を咲かせてよね。
良くないよー、誰だか判んないけど、今度から気を付けてください。
はい、透明な誰かさん、反省タイムの始まりです。
「あら、大丈夫。風邪? それとも、花粉症かしらね」
「今日は昨日よりも気温が低くて、肌寒いからくしゃみが出たんだと思う…………ハッ、ハッ、クシュンっ!」
熱はないけど、鼻がムズムズするのが嫌だ。
頻繁に、くしゃみが出るなら、購買で専用のマスクを買っちゃおうかな。
「………………ん? んん? 凄いな、あの人」
思わず、口から素直な感想が漏れ出る。
うわっ、今、男子トイレから出て来た人、すーげー重装備じゃん。目立つ格好だから、目で追っちゃったよ。
帽子に、グラサンゴーグルに、マスク。あと、首に何かぶら下げている。
しかも、ハンカチで手を拭き終わったら、手袋も装着しているし。
なんつーか、花粉症対策が、諸に不審者ルックスになっているな。校内であの姿ってことは、相当きつくて辛いのか? 可哀想に、早く花粉の時期が終わると良いね……通りすがりの男子高校生君。
俺が、じっと見詰めていた為、蛍都さんも気になったのか、俺と同じ方向を見る。
そして、肩に当たっている巻き髪を、指で後ろへ促しながら、
「そうね。湊は、あの格好でいなければいけない程、酷い症状は出ていないものね」
そう言って、蛍都さんも同情の眼差しを彼に向ける。
はぁー……花粉君、四月なのにフィーバーし過ぎでしょ。もうそろそろ、緩めても良い頃合いなのではないか?
どうせ、来年も再来年も再登場するんだから、「へへへ、今年はこのくらいで勘弁してやるか」とか言って去って行くのが、スマートなやり方だと思うぜ。
えーと、纏めるとさぁ、花粉君には、ご退場願いたいわけでしてね……さぁさぁ、可及的速やかに立ち去りたまえ。
あの同級生の人、よく見たら、被っている帽子から、ぴょんぴょんと食み出ている髪色が、筒見君と似ているなぁ。
筒見君を感じる要素を発見。俺の好感度が僅かに上昇中。
ぴこーん!
上げてくねー。今、俺に話し掛けると、駅前で配布しているようなポケットティッシュが貰えるぞ。もっと頑張れば、バニラかチョコミントの甘い香り付きポケットティッシュだ。
今日の俺はティッシュマン。
ティッシュペーパーが失くなったら、ぜひとも話し掛けてくれ。俺のアイテム欄は、ポケットティッシュで埋まっているからねっ!
因みに、明日はロッカーに箱ティッシュを収納する予定。学校限定でティッシュ王国を開きます。鼻水、涙、痰が出る方はパーティーに参加してくれ。悲しき症状のティッシュ愛好者を募集中なので。
そんでもって、鼻紙に集まりし皆の衆、お気に入りの鼻紙入れを見せびらかしていこうぞ。




