みなとちゃんの尾行3
「えっと、もしかして、跡を付けてたの気付いていた?」
「はい、まさか火置君だとは思いませんでしたが……」
結城さんは私の背後に移動して、辺りを見回す。
あら、バレバレでしたか。ま、まぁ初めての尾行だったので、見付かってしまうのは仕方がないですね。うーん、残念ながら今回は私の完全な経験値不足が原因でした。次回は頑張りましょう。
「どうして私を追って来たのでしょうか。もしかして、透輝様に何か頼まれましたか?」
「透輝は関係ないよ。俺が結城君のことが心配で、跡を付けて来たんだ」
「私のことが心配……?」
結城さんは目を丸くして驚く。
私、そんな顔をされるほどの変なことを言ったかしら。わりと普通なことだよね。
もしかして、結城さんとはまだ知り合って間もないから驚いたのかな。そんなに親しくないのに、気にしていて変だと思われていたりして……
でも、まだ打ち明けてもらってないけど、たった一人の女の子がならず者たちと対抗するという行為は、見過ごすわけにはいかない。いくら結城さんがロボットで強くても……絶対に駄目。
本当は昨日も付いて行きたかった。けれど、結城さんの居場所がわからなかったり、能力不足という致命的なミスを犯したから諦めたんだよね。
だから、今日は昨日の分まで頑張るつもりです。
「なるほど、私一人では危険だと判断されたようですね。しかし、私は貴方に気にされるほど弱くありません。それに、たかが不良男子高校生程度の力に私が遅れをとるはずがないのです。申し訳ないですが、無用の心配です」
「結城君がとても強いのは分かるけど、何事も想定外ということはあるよ。それに一人だと解決が出来ないことも二人なら上手くいくことだってあるし……とにかく、今回は俺と一緒に行動しよう」
押し押しでいきます。
結城さんを置いて自宅に帰りたくないのです。
「ふぅ、まったく、トラブルが起きる確率なんて0%です。私は貴方の為に言っているのですが――怪我をしたくないでしょう? 彼らは武器を使用するかもしれないんですよ」
「それならっ、尚更、一人にしておけないよっ!」
危険すぎる! スマホですぐに通報できるようにしないと。
あと、スクールバックから孫の手を出してっと。それと、鞄は邪魔にならないように、リュックのように背負いましょう。
よし、準備完了です。
「何故鞄から孫の手を取り出したのですか……というか何に使用するつもりなんですか?」
「何って、そんなの……」
正面に立っている結城さんからずれると、高校生がこちらに向かって歩いているのが見えた。
いけない! こんな道の真ん中で騒いでいたら、通行人の迷惑になってしまうね。
「結城君、端に行かないと」
「えっ? 急に何を言って……」
「後ろから人が来ているみたいだから、端に寄らないといけないよ」
私はさっきより少し声を抑えて指摘する。
私たちがいるのは、一台の車がやっと通れる程の細道だ。いくら人通りがない場所でも、狭い道のど真ん中で話すのは人の邪魔になってしまう。早く移動しないと。
「人? この先は行き止まりって、しまっ……」
音もなく男子高校生は忍び寄り――結城さんの頭を掴んで、勢いよくアスファルトに叩きつけた。




