作戦会議2
前回のあらすじ。
みなとちゃんと俺は、飲み物を飲みながら公園でまったりと仲良く情報交換をしていると……そこに突然現れた攻略キャラたち。俺は、そいつらをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、漸くみなとちゃんにたどり着く。しかし、時すでに遅し。なんと、みなとちゃんが――
「嘘あらすじ禁止。現実逃避してないで古賀先輩以外の人たちも見て欲しいな」
「うぅ、ごめんなさい」
俺としては和ますためのジョークのつもりだったのだが、みなとちゃんには不評だったみたいだ。本当に残念である。
さて、みなとちゃんをこれ以上怒らせたくないので、真面目にファイルを見るとしますか。
次のページを開くと、銀髪の爽やか青少年比井野純一と赤髪の目つきが鋭くて怖そうな青少年貫石千生の赤瞳二人組が現れる。
うむ、二人ともきちんと制服を着ているな。偉い、偉いぞ。
「はぁー、二人とも目の色がルビーのような真っ赤な色して、それが血液みたいでちょっと怖いなぁ」
しかも二人とも目付きがキリっとして俺より身長がでかくて、ダブルパンチ、いやトリプルパンチで怖いんだぜ。
現在、女性である俺は、かっこいい系よりも癒し系男子と仲良くなりたいものだ。
「それって純ちゃんと壬生君のこと? 純ちゃんは俺の幼馴染で、壬生君は純ちゃんの親友で、とっても仲良しさんなんだよ」
うげぇ、廊下や教室で出会っても無視ができないコンビってことか。なるべく当たり障りのないように振舞うようにしますか。
「そうなんだ、中身がバレないように気をつけるね」
「そんなに心配しなくても二人とも変に抜けているから大丈夫だよ」
ほほう、まさかのドジッ子男子ですか、彼らは。
それならば、嘗めてかかっても大丈夫ってことか。彼らの対策はドジ成分多めで、よし覚えてこう。
「そうだ、みなとちゃんは、もう誰と決めたの?」
みなとちゃんを見ると、ファイルを膝へ置いている。もう心に決めた女の子がいるのだろう。
俺がそう聞くと、
「うん、バッチリ」
と、Vサインで彼女は答えてくれた。
まったく俺の中にみなとちゃんがいると、俺が爽やか好青年に大変身するな。
「誰か聞いてもいい?」
「えっと、結城乙葉君と筒見葵さんと俺は仲良くしたいなぁと」
その言葉に俺は背筋が凍りつく。
こ れ は 絶対勘違いをしている と。
「まさか、みなと君のとこに男性キャラの攻略対象キャラがいるなんて……初めて見た時、思わず二度見しちゃったよ」
お、お、お、鳥肌が、鳥肌が、ぶぁーと、まじ勘弁してくれ。
「ふふ、これは所謂流行りの隠しBLルートってやつでしょ」
な、なんの流行りでしょうか、俺にはさっぱり解りません。いえ、今の僕には必要のない知識だということだけは解ります。
「学校内で変な目で見られてもいい。結城君と仲良くなりたいなぁ」
みなとちゃんは目がとろんとして恍惚な状態で、大変コワイかんじデス。
そして、俺はとても否定しづらいです。
どうしよう、とりあえず結城さん逃げてーと言うべきか。アホか、俺は。
ごくりと唾を飲み込み、俺は優しくみなとちゃんに説くことにする。
うちにはBLは無いのだと。あるのは可愛い女の子たちの触れ合いであると、ちゃんと教えよう。
「あのな、みなとちゃん、結城さんは男子生徒として学校に通っているけど女の子。しかも、ロボットなんだよ」
ピシッとみなとちゃんが固まったように見えた。
勘違いは早めになんとかするのに限る。
しかし、勘違いを正すためとはいえ軽くネタバレをしてしまった。怒ってないといいな。
「女の子!! そして、ロボット?! えっ、人間じゃないの? というか女の子なの? ど、どどどういうことなのっ!!」
どうやらネタバレに対しての言及なし。一安心。
でも、後で「それはないよ、みなと君」と怒られないといいな。
……因みに、なんで二回も繰り返したかというと、デート中に女の子を激怒させたことがあるからなんだぜ。ネタバレとは恐ろしいものだよ、ほんと。
「うん、これから友達になる岡本透輝に、仕えているメイドロボットなんだ結城さんは。岡本の体が弱くて心配だから一緒に学校へ通っているらしいんだ」
ネタバレ激怒について、内心ガクブル状態の俺の心境をばれないように伝える。
「……そうなんだ、女の子なんだ。でも、私ちゃんと仲良くなりたい。興味というか惹かれてるというか、なんだか気になるもの」
若干みなとちゃんが、しょぼんとしていて居たたまれない。うーむ、男だと思ったら女の子で、しかもロボットだもんな。そりゃあ、ショックだよな。
しかし、勘違いをそのままにするのもな、何か危ない気がするんだよな。何が危険というのは、まあ伏せとくけど。
さてさて、俺は空元気なみなとちゃんにレクチャーされながら、今判明している六人の攻略キャラに目を通した。
まず最初に古賀篤行先輩。二年生の無愛想な私服先輩で生徒会に入っているらしい。
もしも、いや万が一、俺がこいつに関わってしまったら、ちゃんと制服を着せようと思う。
二人目は比井野純一。幼馴染みで、みなとちゃんは純ちゃんと呼んでいる。
なので、俺もこいつのことを純ちゃんと呼ぶことにする。こいつと仲良くなると、もう一人の幼馴染の女の子とドロドロ三角関係になるらしいので、きちんとフラグをボキボキに折ろうと思います。
絶対に仲良くならないから、この野郎。あんな可愛い子と三角関係なんて羨ましくないんだからね、この野郎。
三人目は貫石千生。純ちゃんの親友で、何故かみなとちゃんは壬生君と呼んでいる。目つきが鋭く、六人の中で一番身長がある。
純ちゃんとのフラグが建ってしまうと困るので、対応は、なるべく冷たくするつもり。
四人目は筒見蒼君。青い髪に同じく青い瞳。嗚呼、それは、まさしく宝石のサファイアのような輝きと艶を持つ。優しそうな顔で癒し系。写真からでも分かる癒しパワー。そう、マイナスイオンを出しているスーパー高校生だ!
彼は料理部に所属する予定らしい。俺も料理部に入る予定なので、是非とも仲良くして欲しいぜ。
そして、葵さん(双子の姉)の情報を俺に下さい。
五人目は臥龍岡友愛先輩。黒髪黒眼で寂しそうな雰囲気の二年生で、唯一のメガネ男子。動物が好きらしい。
最後に水沢秋人。髪も瞳も緑色で、人懐っこい笑顔をしている。春生まれなのになぜか秋人、それはいかに。
「うんうん、筒見君の情報は足らないけど、他はだいたい集まったな」
「みなと君、なんだか筒見君だけ、やけに丁寧で好意的じゃないかな? というか、マイナスイオンって出てないでしょ」
「うん、私は筒見君と一番仲良くしたいからね。多少強引な褒め言葉になったけど、私は彼を少しでも褒め称えたいのだよ」
「はぁ、そうなの。それじゃあ、二人とも決まったことだし、今日のところは解散しようか?」
「そうだね、何かわからないことがあったら電話するよ。とりあえず、家に着いたら連絡ちょうだい」
「ホントの自宅か分からないもんね。了解、俺も電話するよ~」
そして、俺とみなとちゃんは公園を後にする。目指すは自宅(俺は相風家、みなとちゃんは火置家)だ。
携帯のナビゲーションを頼りに家を目指すぜ。迷子にならないといいな。