みなと君と委員長2
虹野さんに見付からないようにしゃがみながら観察をしていると、俺を探していたクラスメイトの竜頭さんに、俺は発見されてしまった。そう、竜頭さんに。決して、竜頭さんではない。
クールビューティーな雰囲気の彼女は、俺に一体どんな用事があるのだろうか!? デデーン、次回、二人の先輩の平凡な一日。次も元気に行ってみよーう!!
さらさらっと軽くまとめてみたけど、なかなかのシリアス風味じゃないか? ウム、コメディもいいけど、シリアスもいいよね。俺はどっちも大好きさ。
「相風さんは、小川さんと比井野君と仲が良いですよね、幼馴染ですか?」
「うん、二人が住んでいるマンションの近くに私の家があるの」
目と鼻の先って程ではないが近い距離に住んでいるんだなぁ、これが。
そう考えると、俺と土筆は隣だから――喩えるなら、目と泣き黒子の距離ですかな。おーー! 良いかんじ、自画自賛デス!
「そうですか、親しいならば、何故彼女の事を話さないのでしょうか……」
「ん? 彼女?」
竜頭さんは首を傾げる。
俺も一緒に首を傾げる。
ダブル首傾げ、お揃いですね。
「いえ、ごめんなさい、こちらの事情です。気にしないでください」
「そう、ならいいけど。ところで、なんで私のことを探していたの?」
早速本題に入る。
外にいる虹野さんから離れた第一校舎の廊下にいるのだから、そろそろ話してくれてもいいだろう。
何故俺を探していたか、その理由を。
愛の大・告・白だったら飛び上がるくらい嬉しいんだけど、この雰囲気だと絶対違うんだよな……大変残念である。
「それは、あなたも察しているでしょうけど、古賀篤行さんについてです」
「…………」
えっと、すみません、誰っすか、そいつ? 全然知らない人物の名前が出てきて、まじで混乱する。聞いたことも見たこともない第三の人物の名前がここで出てきちゃったよ、新キャラすぎる。
「もしかして、誰だか知らないのですか? 我が学園一有名な人物なのですけど。あの、相風さんがお昼休みに会った人物について、わたくしは話したいのですが……」
昼休み? 確か昼は、蛍都さんとおかずトレード幸せウキウキタイム純一を添えて……だったな。特別な事といえば、純ちゃんに分けて貰った購買の弁当がうまかったことだ。あとは学食も気になるので、お財布と相談しつつ、手を出したいと思ったことかな。学生なら一度は食べてみたいよね、学食ごはん。
話が大分逸れたけど、二人は関係ないっぽいよな。
えっと、じゃあ、他は、私服先輩に絡まれたことか。確か弁当を自慢されて、下着の色をばらされたんだよな。うむ、羅列するとろくでもない先輩だ。早く成敗したいぜ。
他に心当たりがある人物は浮かばないから、三人の内の誰かだな。
蛍都さんと純ちゃんと私服先輩――ぴこーん、正解は先輩だ!!
理由は簡単、一番みなとちゃんと親しくない仲間外れだからだ。
決まったぜ、先輩説で話を進めて行こう。
「お昼に出会った先輩のことかな?」
「ええ、そうです、彼について忠告をしておこうと思いまして」
おおぉーー流石、みなと君、大正解でーす。俺のひらめき力、スゴいなぁ。
それにしても、お昼の一回しか先輩に会ってないのに、誰と喋ったか分かるとか。女子の情報ネットワーク凄まじいなぁ。恐怖を感じる。
「先輩になるべく近付かないでもらいたいのです。あの人ってよくトラブルを持ってくるから、それをわたくしのクラスまで持ち込まれると本当に困りますので」
竜頭さんは、まるで母親が困った息子について、近所の人に相談するように話す。
おいおい先輩! 竜頭ママンを困らせたら駄目でしょっ!
と、俺は脳内で先輩にゆるーいツッコミを入れる。リアルでもツッコミを入れたいなぁ。
おっと、テンション上げすぎたな。ストップ・ストップ、竜頭さんのようにクールに装うっと。
「そうなんだ、大変だね、竜頭さんも」
「そうですね、あなたのように分かってくれる方ならいいんですけど、はぁ……」
竜頭さんの目は遠くを見つめる。苦労人の目だ。
私服先輩はどんなトラブルを起こしているんだ。ちょっと気になるぜ。
「そういえば、相風さんは虹野さんを気にしていましたね。彼女については、わたくしが注意をしますので、もう帰ってもいいですよ」
「えっ、そう?」
竜頭委員長、行動力の塊!
どうやって彼女を注意しようか凄く迷っていたんだけど、まさか竜頭さんが引き受けてくれるとは――眼鏡っ娘ではないけど、さすが委員長だな。
「どうしようか迷ってて、引き受けてありがとう!」
俺がそう言うと、苦笑いしながら、
「彼女が相手だと普通の子じゃ無理ですから、気にしないでください」
と、竜頭さんは答えた。
そして、真っ直ぐ渡り廊下に向かって行った。
竜頭さん、まじカッコいい。
人のやりづらいことをさらっと引き受けてくれる人っていいよな。
俺も今回は竜頭さんに頼んだけど、次は手伝う……いや、任せてもらおうか。
「遅かった、やはり彼女は帰ってしまいましたね。仕方ないです、約束は明日果たしましょう。ところで、この汚れは雑巾で落とすのでしょうか……」




