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おまけ話6

<気になる話>


 ん? このままだと宇宙人さんたちに見付かっちゃう。急いで隠れないと……この部屋はロッカールームみたいだし、鍵の掛かっていないロッカーに忍び込もう! 何だか、かくれんぼしているみたいで童心どうしんにかえるなぁ。


 あっ来た来た、良かった、見つからなくって。ギリギリセーフだね。よし、このまま居なくなるまでロッカー内で待機しとこう。



「あー……早く任務終わらねぇーかな、故郷に帰りてーよ」

「ハハハ、お前ホームシックじゃん、大丈夫かよ?」

「最近、田舎の家に通信したら弟たちがお袋のメシを美味おいしそうに食っててよ、俺も久々に食いたくなったんだよ」


 どうやら、宇宙人さんはホームシックになってしまったようだ。



「そんな君に朗報! しせやんの店が故郷の味がする食い物を開発したらしいぜ」

「えっ、まじでまじで、ぜってぇーー行く。つーか、今日の仕事が終わったらすぐ行く!」

「おーおー、元気になったな。そういやー、彼処あそこってパープルカードが無いと買えないらしいけど、お前は持っているのか?」

「あー、確かパープルカードって掲示板の近くに置いてあるんだっけ。仕方ねぇー、後で寄るか」



 慌ただしく彼らはロッカールームから出て行く。多分、掲示板があるエリアに向かったのだろう。


 ふー、やっと落ち着ける。

 しかし、気になる話を聞いたなぁ。山田さんの故郷の味がする食べ物か。私もそのお店に行ってみたいし、パープルカードを手に入れようっと。






<秘密がある店>



 パープルカードに書いてある紫星文堂しせいぶんどうとは、文房具を専門的に扱っているお店らしい。

 商店街に位置して、尚且なおかつ、小学校も近いため、割りとこの地区で名を知られている文具店だ。

 なので、場所は簡単に分かったのだけど、こんな昔ながらのお店が、本当に宇宙人さんの話していたお店なのか疑問に感じる。

 うーん、入って確かめてみればいいか。


 ちょうど店内は私以外にお客さんはいないみたいだし、シャーペンのしんを買う時に、このカードを提示して店主の様子をみよう。何も反応がない場合は違うお店だって判るからね。



「すみません、このカードって使えますか?」

「……ふむ、見掛けない顔だが新人かね、奥に入んなさい」


 おー、スパイの取引やVIPなお客さんの対応っぽい。

 そして、良かった。紫星文堂は、このお店で正解だね。


 さて、一体どんな物が奥で売られているのか楽しみ♪ 聞いた話によると、食べ物みたいなんだよね。面白い形のした果実? それとも、彼らの星の料理を再現したものかしら。美味しい食べ物だったらいいなー



「そこの暖簾のれんの先に、今日の商品が置いてある。土日・祝日は作ってないから来ても品物はないぞ。それと、会計は奥の坊主ぼうずに頼んであるし、質問もそいつに聞いてくれ……わしは店に戻る」


 裏と大きく書かれた暖簾をくぐると、宇宙人さんたちが話していた商品が買えるようだ。

 それにしても、念のために多めにお金を持って来たんだけど、足りるかしら。


 まぁ足りなかったら、また来ればいいよね。だいたいの値段は今日で判明するし。

 よし、暖簾をくぐりましょうか。










 奥で売られていたのは、紫色の毒々しい色の食パンでした。

 の、呪いのパンとかじゃないよね? 食べた瞬間にバッドステータスになったりしないよね?



「兄ちゃん、見ない顔だけど今日が始めてか? 残念だったな、もう少し早く来れば菓子パンが残っていたんだけどなー」

「あっ、そうなんですね。食パンを一斤いっきんください」


 私と同い年くらいの店員さんに話し掛けて、おどろおどろしい食パンを買ってみる。値段はスーパーで売っているパンより少し高めなだけで、今日お財布に入っているお金で十分に払えるし。

 どんな味がするのかしら。



「まいどっ! そういやー、兄ちゃん聞いたか? どこのどいつだか知らねーが、あのポンコツロボを起動した馬鹿がいたんだとよ」


 ……それって私が起動スイッチを押したロボットのことかな? ま、まさかね、違うよね? もう少し詳しい話を聞かないと判断できないし、まだ保留でいいよね。




「あー、兄ちゃん新人みたいだし、あのクソロボットのこと知らなさそうだな。妹姫様が兄王子様を探す為に作られたロボットなんだけど、どういう訳か男に敵意を持つ使えないジャンクロボットが出来上がったんだよ。貴重な兄王子様の情報をインプットしているからスクラップ出来なくて倉庫に仕舞っていたんだけど、何故か起動してたらしいぜ……まったく迷惑な話だよなー」


 ――――絶対、あの時のロボットだーっ! カタコトだけど危険な発言をして、つ男性に反応していたロボットなんて、なかなかいないし。

 みなと君もあのロボットのことを知っていたのかだけは、気になるなぁ。

 





 

 …………と、とりあえず、謝罪を込めて、今、私がしなくてはいけないこと――――それはお買い物です!!

 





「おっ、なんだ兄ちゃん、もっと買ってくれるのか? いやーーっ、ありがたいねー」


 

 脱出する為とはいえ、ご迷惑をかけてごめんなさい。食パンを多めに買うので許してください。今回だけは見逃して下さい。


 とはいえ、あの時いた宇宙人さんたちと別人だから、この人に謝っても意味はない。

 次は、もっと穏便おんびんでトラブルのない方法で船から逃げ出さないといけないね。宇宙人さんたちにとても迷惑をかけたみたいだし、問題を起こしちゃって、ちょっとへこむなぁ。


 菓子折り持参で誘拐されたりしないかな。

 お菓子を抱きながらベットに入ったら一緒に持ってきてくれるような……そんな都合よくうまく訳ないと思うけど、試す価値はありそう。






<不思議なパン>



 今日は久し振りにみなと君に会ったんだけど、やけにじろじろと不審な目で見ている気がする……何故かしら。



「どうしたの、みなと君? 俺、おかしな格好でもしているのかな」

「みなとちゃん……私の時よりがたいが良いし、身長も伸びてる。なんでっ!? 女子に受け継がれる特殊なダイエット法で鍛えていたりしているの!?」


 がたいって……特に気にしてなかったけど、言われてみたら少し筋肉がついてきた気がする。身長は、今一いまいち実感が沸かないなぁ。



「うーんうーん、何かしてたっけなー」


 スポーツも運動部に入っている時よりしてないし、食事もいたって普通の男子高校生の量だ。何が原因……はっ、もしかして、あれかも。



「この食パンを食べてたからかも」


 記念にスマホで撮ったあの食パンを、みなと君に見せる。



「えっ、何、このパン、こわっっ! みなとちゃん、こんなヤバそうな物を食べているの? お腹壊しそうな色しているんだけど!!」


 宇宙人さんたちのお気に入りのパンの写真に、みなと君が怯えている。

 うふふ、反応がみなと君のお父さんと同じでちょっと面白い。



「見た目は毒々しいけど、味も匂いも市販の食パンと変わらないよ。今度、試食してみる?」

「い、いや、俺はこういうのは……というか、本当に食用なの? 所々水色の斑点はんてんがあるんだけど、これ青カビ? ブルーチーズのような食べられる物ってことなの?!」

「俺も詳しくは知らないけど、カビではないと思うよ」


 正直な話、私もこれが何なのか分からないんだよね。宇宙人さんたちの星ゆかりの物ってことしか知らないし。



「今、我が家ではこれが食卓に出ているのか、親父もよく食べれるなー」

「ん? みなと君のお父さんは、この食パンじゃなくてスーパーやパン屋さんで買った方を食べてるよ」



 ちなみに、みなと君のお父さんは、朝トーストにジャムを塗って渡すと「このジャムの下は悪魔のパンではないか?」と怯え、フレンチトーストを出すと「どんな手腕で加工しようがあいつを使っているのだろうっ!」と疑う状況になっている。


 そう、みなと君のお父さんは今食パンに対して疑心暗鬼になっている状態だ。


 みなと君のお母さんは、逆に健康パンだと喜んで食べている。実際に体調が良くなって、朝食によく食しているお気に入りのパンだ。



「親父は健康ってより見た目や味を重視しているから、これは絶対口にしないな」

「お父さんとパンを別にしているんだけど、一人だけ違うのは嫌みたいだから、最近はご飯の方がいいみたい」

「……親父、確実にねているな」


 拗ねているのかは分からないけど、食パンを敵視しているかな。家族をたぶらかす悪魔のパンが、我が家に持ち込まれたと職場の同僚さんに電話していたのを聞いてしまったし。



「まー、困ったら適当に機嫌とればいいよ。それに、みなとちゃんが気にしなくても、母さんがうまくかじをとるから、大丈夫、大丈夫♪」


 みなと君がそう言うなら、この食パンを愛用しても良さそう。このパンを食べると力が湧くというかパワーアップ? とにかく、ステータス値が上昇する気がするんだよね。

 でも、能力値はどんどん上げたいけど、積極的に食べようかは悩むなぁ。何事も、程々が良いと聞くし。まあ、今のペースでいいかな。食べすぎは、よくないもんね。







「ミーナは、どこからあんな代物を手に入れたんだ? あれ、妖精の店にもないぞ」

「どっかの裏メニューらしいわよ、あのグロい色をした食パン……普通は嬉々として食べるのではなく引くと思うけど、そうじゃないのよね」

「よく食べれるな……あんたも食べたのか?」

「た、食べる訳ないでしょっ、あんな怪しいパン!」

「だ、だよな、人間って趣味が悪いな」

「あれって趣味の範囲なのかしら? 少し分からないわ」


 



 


~ある男の嘆き~

「悪魔のパンが減ってご飯が出るようになったが、代わりにご飯が雑穀米ざっこくまいになった。くぅぅーー、息子よ、何故静観している! ご飯はやっぱり普通のほかほか白飯がいいだろうっ! 毎日じゃないが週に何回も出されるのだぞ、きついのに何故黙っているのだ。解せぬ。どうせなら、炊き込みご飯や炒飯の方がいいだろうに。俺たちは古代人じゃないから古代米はいいんだ、現代米にしてくれよ……嗚呼、我が家の妻の健康食ブームはいつ終わるのだ……」


~ある男の嘆き2~

「……昨日、喉が渇いたので台所に行ったらあの悪魔のパンが発光していた。なんでだよ! それを部下に愚痴ったら、『パンは元から発酵しているっすよ、ハハハ』って返された。知ってるわ!! 発酵じゃなくて発光だっつーの、ピカピカーンって暗闇で青く光ってたんだよ。嗚呼、何故、誰も信じてくれないんだ……父さんは悲しい」

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