みなとちゃんの初デート2
「ふんっ、クラスメイトとして一つだけ忠告しておくが、その女と付き合う――いや、関わるのはやめた方がいい」
隣りの席に座っている青年は、そう言うと優雅にカップを置く。
「――っち、田所日狩ね、どうしてここにいるの?」
え、えーと、この人がみなと君の嫌っている田所君なんだ。写真で一応顔は知っていたけど、なんだか大人っぽくて気難しい印象だなぁ。
……それにしても、この二人は学校が違うのに顔見知りなんだね。どういう知り合いなんだろう?
「俺がコーヒーを飲んでいる時にお前らが来たんだろう? おかげで、美味いコーヒーが不味くなったな」
「はっ、何それ? 何それ? 何それ? 夜美のせいにしてるの?」
なんだか、この二人は凄く仲が悪いなぁ。ケンカ友達? そんな訳はないか、友人にしては険悪だし。
うーん、二人の口論が始まってから、店内の雰囲気がだんだん悪くなってきたような。気のせいか、少しずつ他のお客さんが帰っていって、空席が増えている気がするし。
これって営業妨害じゃないよね!? あー……どうしよう、気になってきた。じろじろと見られているよね、私たち!
恐る恐る、カウンター内で待機をしている店員の方に顔を向けると、ちょうど私たちを見ていたのか目線が合ってしまった。
うっ、すごく気まずいです。やっぱり、二人の諍いは、私がやめさせるべきだよね。でも、どうやって止めればいいのだろう。
高校生くらいの若い男子店員は、私が見ているのに気付いたのか急にそわそわしている。そして、店内に飾ってあったボードを手に取り、キュッキュッとマジックで何かを書き始めた。
もしかして、私たちに宛ててメッセージを書いているのかな。
内容は、「早く帰れ」や「二度と来るな」とかかな。
それとも「外でお願いします」または「これ以上は他のお客様のご迷惑となります!」だったりして、どちらにしろ良いイメージではなさそう。
店員は書き終わったボードを裏返して、にやにやと意地悪な顔をして私にボードを見せ付ける。
目をこらしてボードを見ると、そこには、
『いいぞ、もっとやれ~♪♫♬』
と書いてあった。
………………えっ!? 好意的?
さらに、下の方には小さく「カップル破局しろ」とも書いてあった。
カップルって、私と虹野さんのことかな?
私たち恋人同士ではないんだけど、傍から見ると、付き合っている雰囲気なのかしら。
それにしても、これがこの店の考えなのかな。実は、カップルクラッシャー店だったりして……よし、今度からは一人で来よう!!
と、決意を新たに秘める前に、女性店員にぺしっとお盆で男性店員が叩かれている。女性店員は申し訳なさそうにぺこりとお辞儀して、ボードを書き直している。
今度こそ、この喫茶店の総意が書かれるのか、どきどきする。
再びボードが掲げられる。
そこには、
『うちのコーヒーはケンカをしている時に飲んでもおいしいです!!』
うん、コーヒーも紅茶も美味しいよね。うんうん、常連ってわけじゃないし、通でもないけど美味しいと思う。うんうん、よし、お家に、帰ろう!!
はぁ、何か色々と面倒になったからね。
「……悪いけど、俺は帰るね」
「えっ、ちょっと、待て港君、夜美も一緒に……」
「テーブルに俺と虹野さんの支払いを置いとくから。それじゃあ、ご馳走さまでした……」
お金を置いとくので、支払いはお願いしますね、虹野さん。
「待って、夜美が誘ったんだから、夜美がしはら……おうっと思ったのにぃ~」
「お前、帰りも着いて行こうとするなんて、本当にアブナイヤツなんだな」
「――っ港君とのラブラブデートを邪魔するなんて、表に出ろっ! 田所日狩っ!!」
どうやら、虹野さんも喫茶店から出るみたいだし、減ったお客さんたちが戻って来るといいなぁ。




