表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/101

みなとちゃんと不良

 ふう、やっと学校が終わった。これからどうしようかな。過恋学園の()なら、この後部活または買い物に行くんだけど、愛巣高校の()はこの後どうしようか。

 うーん、まだ放課後の活動内容を決めてないし暇だ。ちょっと学校の近くをブラブラしてみようかな。探検、探検っと。



 あれ? なんだかこの先騒がしいような。気になる、ちょっとのぞいてみよう。

 あまり人通りが少ない道だけど、大丈夫だよね。



「へっへっへっ、いい鞄を使ってるねぇ、お坊ちゃん」

「か、鞄を返してください」

「うわっ、こいつ、財布にすーげー金が入っているよ! ヒュー、金持ち~♪」

「あっあの、お願いですから返してください……」

「ああ? 何言ってんだ、これはもうオレたちのモノなんだよっ!」


 クラスメイトの岡本君が、ガラの悪そうな他高校の男子に絡まれていた。

 わーわー、こんなことをする人って本当にいるんだ、初めて見ました。

 って、見ている場合じゃない。岡本君を助けないと! と、とりあえず、前にドラマで使っていた手法で華麗に撃退しましょうか。



「――恐喝は犯罪ですよ」

「はぁ? そんなの知ってるし」

「おいおいおいおい! そもそも、オレたちカツアゲなんてしてねぇーし! そこ、ちゃんと否定しとけよっ」

「だよな、ちょっとぉー、お金を貸してもらっているだけだし、オレたち♪」


 三人組の男子高校生の興味を私に引いて、急いで彼を背中に隠す。

 岡本君は少し震えているようだ。体が弱いから倒れないか心配だな。



「いいえ、どう見ても恐喝きょうかつです。さっき、警察を呼びました。補導をされたくなければ、さっさとここから去るんですね」


 これで諦めて家に帰ってくれるはず。さぁさぁ皆さん、お家に帰るのです!


 

「はっ、警察が怖くてカツアゲができるかよっ!」

「ほんとに呼んだか怪しくね? ぜってぇー、ハッタリっしょ」

「つかさー、こいつからも巻き上げちゃえばよくね? 一石二鳥だし♪」


 き、効いてない!? そんなあのドラマの主人公が使っていたスマートな手法なのに。まさか、もうこの手、古い?

 どうしよう、次の手を考えないと。



「ごめんなさい、僕はあなたまで巻き込んでしまった……」


 岡本君が震えた声で悲しそうに言う。 



「気にしなくていいよ」


 女子高生の私だったら、もしかするとおびえて動けなくなるかもしれないけど、今の私はみなと君なんだから。

 そう、ギャルゲーの主人公なんだから、女の子たちをガッカリさせるわけにはいかない。男(?)ってやつを見せないとね!


 とりあえず、純ちゃんが前にやっていたファイティングポーズをとってみる。威嚇いかくは大事です。それが例えハッタリだとしても……そう、ドラマの主人公も言っていました!


 他校生の三人組は、ゲラゲラと笑いながら私を見る。

 うぅー、やっぱり素人の構えだって、ばれてるんだろう、どうしよう。

 ……でも、狼狽うろたえるのは心の中だけで、きちんと相手の目線は外さないようにしないと。目を離した瞬間、襲ってくるかもしれないし。



 そうして他校生たちをよく見ると、いつの間にか彼らの背後に人が立っていた。彼らは、まったく気付いていないけど誰だろう。助っ人かしら?

 

 

 




「透輝様、遅くなって申し訳ありません」





 後ろにいたのは結城乙葉さんだった。そして、背後に第三者が現れて、彼等は動揺している。よくよく考えたら挟み撃ちになっているからね、そりゃあ驚くか。

 


  


「乙葉か、探しに来てくれたんだね」

「はい、それでは迅速に処理します。お下がりください、透輝様」


 結城さんは、こちらを安心させるような優しい笑顔で言った。

 

 写真で見るよりもかっこいいなぁー、結城さん。写真だとクールな美人さんだけど、実際は柔らかな雰囲気なんだね。

 っと、見惚みほれてる場合じゃない、私も何かしないと。



「乙葉なら大丈夫だから見てて」


 岡本君に手を引かれ、後ろに下がる。

 結城さんってロボットだから、やっぱり喧嘩が強いのかな?

 もしかして、ビーム光線が出たり、〇〇〇パンチを繰り出したりして……って、まさかありえないよね。

 


「あぁ? なんだお前? もしかして、てめぇが代わりに……ぐぅっ」

「黙りなさい」


 他校生の首元を結城さんはグイっと片手で持ち上げる。首が絞まって苦しそうだ。



「おい、調子に乗ってんじゃねーーぞっ!」


 他校生が結城さんのお腹を勢いよく蹴り上げる。うわっ、痛そう。

 カンッと金属の音が響き、蹴り上げた他校生……三人いてまぎらわしいので、他校生Bと仮定しよう。他校生Bさんは蹴り上げた足をさすりながら、結城さんをにらみ付ける。



「こいつ、腹になんか仕込んでるなっ、クソがっ!!」

「これ以上痛い目に合いたくなければ、その鞄と財布を置いて帰りなさい。今日のところは、見逃してあげますから……」


 そう言うと、結城さんは持ち上げていた他校生(この人は順番的にAさん)を壁にたたきつけた。

 

 


「ちっ……てめぇらの顔、覚えたからなっ!」

「オレたちに、こんなことをしてタダで済むと思うなよ」

「………………クソッ」


 乱れた衣服を直しながら、他校生三人は去っていった。




 絡まれた時はどうしようかと思ったけど、結城さんのおかげで見事に解決しました。すごい! 結城さん、テレビに出てくるヒーローみたいでカッコイイです!



「助かったよ、ありがとう。君って、とっても強いんだね」

「いえ、こちらこそ透輝様をお守りしていただき、ありがとうございます」

かばってくれて、本当にありがとう。ん、よく見たら、君ってうちのクラスの火置君だね」

「透輝様のクラスメイトでしたか……私は透耀様の護衛を務めている結城乙葉といいます。どうぞ、お見知りおきを……」

「うん、こちらこそ結城さん、じゃなかった結城君よろしくね」

「はい、火置君これからも透輝様のことをよろしくお願いします」

「僕のことは岡本じゃなくて透輝でいいよ。あと、乙葉、そんなに心配しなくても、僕は大丈夫だからっ」

「はは、二人ともよろしくね」




 こうして私は、透輝君と結城さんと無事お知り合いになれました。

 これを機に結城さんとより親しくなれるといいな。

 よし、来週結城さんを遊びに誘ってみよう。

 もっと仲良く、親しくなりたいし。


 楽しい気分になって、浮かれながら私は家に帰った。

 ――明日、何が起きるか知らずに。

 

 















「これで、あいつらは、あの女に目をつけた。夜美と港君の大切なデートを彼らに邪魔される訳にはいかないし、精々《せいぜい》夜美の役に立ってよね。あぁそれにしても、明日の港君とのデートが楽しみ。うふふ、もうお姫様(ヒロイン)王子様(港君)は渡さない――悪役ヒールだって恋をする権利はあるんだから。今にみてなさい、港君と結ばれるのは夜美なんだからね……!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ