みなと君とおつかい
みなとちゃんになってから、初めてのおつかいイベント始めるよ、いえーい。
さて、今日俺が行うミッションは、幻☆スーパーとやらで、ある商品を三つ手に入れることだ。
その商品とはジャジャーン、ビックフット族のふわふわバニラアイス~♪
バニラアイス? アイスってことは溶けねぇか、おい。買った後、どうすればいいんだ……
まっいっか、そういうのはゲットしてから考えればいいか。よしゃー、早速スーパーへレッツラゴー!!
学校から歩いて十五分、幻☆スーパーに着きました。
任務開始! あの可愛いJK虹野さんの所望する品物だ。相当な人気食品だろう。おばちゃん・おっさん・児童……エトセトラどもに負けず、必ずゲットしてみせるぜ、えいえいおー
「ビックフット族のバニラアイスをゲット! いや、まだ買ってないから確保っ!!」
すんげー人気商品かと思ったけど、そうでもなかったな。おつかいランクEってことか。まあ、このみなとにかかればランクAでもお茶の子さいさいですけどね。
「お前、何一人でブツブツ言ってんの」
「んなっ、貴様なんでここにいるっ!」
で、で、で、で、で出たーー、田所日狩! 厄日だ。ああ、厄日だ。orzだ。ああ、orzだ。
「何でって、俺の家の近くだし。お前も家が近いのか?」
「はぁ? んな訳ないじゃん。俺は頼まれた物を買いに来ただけだし」
「……態々そのアイスをこの店で買いに来たのか? 駅前で同じようなのが売っているだろうに」
「指定された店だったんだよ。つか、じろじろと勝手に見るなよ、スケベ」
くそーー、此処がこいつの縄張りのスーパーだなんて知らなかった。危険人物徘徊店として俺の脳にインプットせねば。
「で、お前はそのアイスを買ってどうするんだ? 頼まれたってことは、誰かに渡すのだろう」
「お、おう、当たり前だぜ、べらぼーめ」
俺の予想だと、虹野さんと虹野さんのお友達のキャワイイ女の子と俺で、楽しくアイスを食べる予定なんだぜ。
あっ、忘れないようにスプーンをちゃんと三つ貰っとこ。
「………」
頼むから不審がるな。
「さーて、このままだと溶けちゃうし、早く買わないといけないなぁ。だから、お前に構ってる暇はないなぁ」
「…………………」
だから、疑わしい目で見るな、この野郎。
もう面倒だな、放置しよう。無視無視むーし、早く買ってしまおうっと。
田所の野郎を放置して商品をゲット。
現在、俺はドライアイスをインしてます。これで少しは時間が稼げるはず。一応軽く念じとくか、溶けないで~、とけないで~、とにかく今はトケナイデ~♪
アイスに念を込めていると、ブレザーのポケットに入れている携帯のバイブが振動する。
はてさて誰だろう。
メールボックスを開くと登録してないアドレスだった。
一体誰なんだ君は!?
とりあえず、可愛い女の子希望です。あ、でも、俺ピュアハートボーイだから出会い系はNGなんで。いやーー、俺自身はちょっこと興味あるんだけど、そういうの事務所が許さないみたいでさー、ほんと残念だわ。
とゆーわけで、そっち系のメールは遠慮なく削除&拒否させてもらいますよっと、恨まないでね☆
「メールオープンっと」
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相風ちゃんはもうアイスを買ったかな? そこのスーパー今日アイス二割引きでね、いつもより安いんだよ。とっても、とっても、とーっても美味しいから仲良くお友達と食べてねヽ(=´▽`=)ノ
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そ、そりゃないぜ、虹野さーん。えっ、このアイスどうすればいいの? おともだち? ほぼ初めて来た場所なんですけどココー?!
どうしよう、一人で三個食べるか、食べてしまうか、俺!!
いや、繊細なみなとちゃんの身体を考えればありえない選択だな。俺のグレイトな肉体だったら大丈夫なんだけど、みなとちゃんならお腹壊しそうだし。
「なんだ、まだ帰ってなかったのか」
あーあー、また来たよ。買い物が終わったんなら、さっさと帰れよな。
「ん? なんだドタキャンでもされたか?」
ちっ、相変わらず嫌味なヤツ。つか、ドタキャンじゃありません。別に虹野さんと会う約束してないしー、可愛い子とアイスをつつく予定も、俺の理想的な展開なわけでして……まぁ、理想は儚く崩れたんですけどね。悲しーい。
「無言は肯定とみるぞ」
あぁ、もう、うっとしーなこいつ、俺は今アイスをどう消費するか考えるのに忙しいんだよ。くっ、俺の心に宿るMOTTAINAI精神が憎いぜ。
……つか、こいつにアイスを押し付ければいいんじゃね。俺、頭良い。
「やる、返品は受付ないからなっ」
「はぁ?」
田所が持っているレジ袋にアイスを突っ込むと、急ぎ足で出口に向かう。絶対着いてくるなよ。
「おい、ちょっと待て」
ふん、返品は受け付けないって言っただろ。
「スプーンを入れ忘れているぞ」
だーもう、そこかよっ! こまけー野郎だな。
「ちっ」
「スプーンを投げるな、お行儀が悪い」
はーい、ナイスキャッチ田所君、それじゃあバイバーイ。
もうこっちの用は済んだし、この場所にいつまでもいる必要はないんだな、これが。いざ、おさらばだぜっ!!
背後で話しかけてくる田所を華麗に放置して、俺はスーパーを出た。
だいたい高校も違うのに、何でこんなに奴とエンカウントするんだ? もー、誰かこいつの出現率を下げるアイテムを開発してくれないか、良い値段で買うぜ。
……アイスに頼んでみようかな。