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みなと君とお手伝い

 放課後、入部届けを職員室に提出する途中、三人の女子生徒に囲まれた。名前が出ないので多分モブの女の子であろう。

 モブの三人娘は、みんな可愛いです。はー……出会いが男ばっかなこの世界の癒しですな。



「相風さん暇? 少し手伝って欲しいんだけど、いいかな」

「うん、いいよ」


 可愛い女の子のお願いならモチOKです。俺、モリモリ頑張ります。



「そう……なら着いてきてもらえる?」


 三人の中でリーダー格っぽい気の強そうな女の子が、ムっとした顔で答える。

 うーむ、何だか機嫌が悪そうだ。俺、何かしたかな? まったく身に覚えがないのだが。


 スタスタと無言状態の女子たちに着いて行く。


 女の子たちのピリピリした雰囲気が伝わってくる。なんだか嫌なかんじだ。可愛い子たちと行動しているのだから、なるべく明るい思考に持っていきたいなぁ。


 そうだ! 女子三人組に囲まれているなんて、俺ってばハーレム主人公みたいじゃないか? ハーレム・ハーレム。ヒューー、これは素晴らしい考え、俺、まじで天才!






 それにしても、段々と人気ひとけがなくなっているのだが、一体どこまで着いてけばいいんだろう?



「あの、お手伝いってどんな内容……」

「んー? ここまで来ればいいか。じゃあ、そこの部屋に入ってくれる?」



 非常食や防災用品が積まれた倉庫に案内された。ここで何を手伝うんだ? こんな薄暗くてカビ臭い倉庫で。


 ま、まさか、ここから百合百合な展開が入るのか? 入っちゃうのか? いや、でも、俺、現在女の子だし気持ちは嬉しいけど、どうせなら男に戻ってからやってもらいたいなぁ、えへへ。











「あなた、比井野君とどういう関係なの?」

「へっ?」


 倉庫に入って聞かれたのは、純ちゃんのことだった。何故だ? ここに俺という主人公がいるのに、なんで純一の話題が出るんだ。まじ意味ワカンネーです。あれ、百合百合な展開は……あれぇー?



「純ちゃんが、どうかしたの?」


 もしかして、お手伝いって純ちゃん関係なのかな。一気にやる気がなくなるわー



「何ですか、その呼び方? 比井野様に対して馴れ馴れしいですよ!」


 様付けだと? ご、ごくり、あいつ、この学園で何したんだ! あれか? 実は、お不良様とかか? こわっ、次から登下校を別にしてもらいたいな。



「ちょっと聞いているの? 庶民の分際で私たちを無視できると思っているのかしらっ!」

「無視だなんてそんな……」


 俺が女の子を無視するわけないじゃないか! 俺の心には、いつでも女子をあたたかく見守る紳士という名の妖精が住み着いているんですよ。


 ……いや妖精だと女の子のパンツを見ているというあらぬ疑いが掛かるかもしれん。


 ならば、心に棲むのは妖精じゃなくて精霊にしよう。俺の心には可愛い精霊ちゃんが住み着いている設定の方がクリーンなイメージな気がするし。


 と、プチ脳内会議をしていると、モブ女子の機嫌が急降下した。



「どうだか」

「ねー」


 彼女たちは冷たい目で俺を見始めた。

 うわーん、純ちゃんのせいでモブの女子に嫌われた。純一、許すまじ。



「ふんっ、相風さんは、どうして私たちに呼ばれたかわかる?」

「えーー……っと、純ちゃん関係のお手伝いかな?」


 女の子に頼まれたからには、しっかりと純一のパシリをやらないとな。

 純一って運動部に入部するんだっけ。飲み物とかタオルとかの準備をすればいいのかな。



「全然違うしー」

「まったくどういう思考回路なのかしら。貴女って本当にお馬鹿さんなのね」


 あれっ不正解っすか、そうですか。くーっ、中間や期末テストよりも難しい問いだぜ。

 つか、純一関係かと思ったけど違うっぽいし、何の手伝いに俺は呼ばれたんだろう。謎だ。



「私たちが言いたいのは……」

「――比井野純一に、これ以上近付くなって言いたいんでしょ?」



「!?」 


 おっと、ここで第三の人物登場! 誰だ? 誰ですか? 

  

 声の主は、後ろに積まれた防災用品のダンボールの上に座っていた。さらさらした白髪に黄金のように輝く瞳で、にやにやと彼女は笑っている。可憐かれんな見た目に反して意外と小悪魔系なんですかね。



「だ、誰?」


 今、俺に判ることは、この美少女は只者ただものではないってことだろう。絶対にモブではなく主要人物であるはずだ。


 ああ、理由? すーげー可愛いからに決まっているだろう。


 よっしゃーー、帰ったらみなとちゃんに聞いてみよう。この超可愛いJKと知り合いだといいなー



「に、虹野夜美! いつからここに……」



 おっとモブ三人娘のお知り合いみたいだ。お友達? それとも有名人かな。

 三人とも顔を青ざめているから、仲は良くないのかもしれないな。



「えー? 最初からだよ。そんなことより、夜美はこの子に用があるの、さっさと消えてくれないかなー?」

「くっ、覚えてなさいよ、あんた!」


 モブ女子たちは、バタバタと一目散に去っていた。

 この様子だと確実にお友達ではないな。悪友? それとも天敵かな? 女の子だからケンカ仲間ではないだろうけど。



 そういえば、モブ三人娘の捨て台詞ぜりふは何を覚えておくのだろう……?


 はっ! そうか! きっと彼女たちは「私たちのことを忘れないで下さいね♡♡♡」って伝えたかったのか。


 よっしゃー、俺は絶対忘れないぜ。あっ、俺女の子なんでデーごほんごほん、今度友情とやらを深めるために一緒に遊びに行きませんか。レッツ友情デエト。友情って素晴らしいよね。


 脳内のさそい練習で本番にそなえておこう。女性たち、俺はいつでもOKですよ!!



「呼び出しを受けたのに余裕なのねぇ。変な子・変な子・変な子っ」


 そんな三回も言わなくても……つか、呼び出し? なんですか、それ? そんなの受けた覚えないな。俺が今日受けたのって助っ人だし。結局何もしないで終ったけどね。



「まぁいいか、夜美は相風ちゃんに、やってもらいたいことがあるから、手助けをしたんだよねぇ」

「やってもらいたいこと?」


 ほほう、これから本当のお手伝いイベントが始まるんですね。任務上等! このみなとに何でも任せてくれたまえ。



「そうなの、あなたにはまぼろし☆スーパーに行ってこれを三つ買ってもらいたいの」


 それってお手伝いじゃなくておつかいじゃないのか。まあ、俺は女子の頼み事なら、なんでも受けちゃうナイスガイだから引き受けますけどね。


 ちょうどいい、明日の朝昼のご飯当番は俺だから、必要な食材と調味料もついでに買っとこうっと。何を買うかアイスと相談しないとな。


 

 

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