みなと君と幼馴染×2
ジリジリジリジリジリジリジリジリ
目覚ましが起床の音を鳴らす。起きなくてはいけないと思うけど、まだ起きたくない。
ジリジリジリジリジリジリジリジリ
俺が起きないので目覚ましは鳴る。まじうるさい。
「だーもう、うるさい! いい加減に起きないか、ミナミナ」
アイスが俺の頬をつんつんと突く。
「うぅ、嫌だ。俺はまだ寝る。なぜなら眠いからだ。俺を起こしたければ、幼馴染の美少女を用意するんだな」
昔は、よく土筆に起こしてもらったなぁ。ああ、懐かしい。今は起こしに来てくれなくてちょっぴり寂しいです。
「アホなこと言ってないで、さっさと起きろよ。また寝坊する気か」
アイスが俺の頬をねじる。
うーー、起きてたまるか。俺は眠いのじゃ~~
「ん? オーダーの幼馴染が起こしにやってきたぜ、ミナミナ。僕は隠れているから、そいつに起こしてもらえ」
なっ、なに――そういえば、ギシギシと何者かが階段を上る音がする。
これは、みなとちゃんの幼馴染の小川蛍都さんかな。それともアイスのフェイクで南お姉さまかな。
わくわくどきどきしながら布団をかぶる。
幼馴染やお姉さまに朝起こされるシチューエーションって良いよね。俺は大好きさ。
ガチャとドアが開き、スタスタと誰かがベットに近付いてくる。
俺はゆさゆさと揺さぶって起こされるのは好きなんだけど、布団をバサーと奪われて起こされるのも同じくらい好きなんだぜ。はたしてどっちで起こしてくれるのかな、ドキドキ楽しみ。
布団が少しづつ捲られ、耳元にふぅと息がかかる。
おおっ、なんて積極的な起こし方なんだ。これは南お姉さまではなく、セクシーと名高いみなとちゃんの幼馴染である蛍都さんの方だな。
うっかりニヤリと笑いそうになった。やばいやばい、起きているのをばれないように、なるべくリラックス・リラックス。スヤー、私、安眠してまっせ、おし、完璧っ!
さあ、俺の準備は万端だ。す、好きに起こしていいんだからね☆彡
再び耳元に息がかかる。耳に攻撃するの好きなのかな? 積極的なお人だ。
「お・は・よ・う、湊」
耳元に、おとこ、のこえが……なぜ?
「――うぎゃぁーーー!!」
ななな、なんで野郎が、この神聖なみなとちゃんの部屋にいるんだ。
緊急事態発生、狸寝入り解除! 俺覚醒! か弱い女子高生の部屋に突然男性が侵入しました。この部屋に入室していい野郎は、みなとちゃんのパピーとアイスと選ばれし俺だけなんだぜ、一体どこから侵入したんだこいつ。南お姉さまと部屋を間違えたのか?
「おっ、起きた、起きた。どう、びっくりした?」
女の子かと思ったら男の娘だったでござるくらい衝撃が走ったわボケ。俺のドキ☆わくタイムを返せ、うわーん。
……つか、よく見たら、純一じゃん。くそー、アイスめ騙したな、あんにゃろめー。男の幼馴染はお呼びじゃねーんだ、女子だ女子を出すんだ。
「ちょっと! わたしがおば様に湊を起こして欲しいって頼まれたんだけど。何故純がここにいるのかしら」
美少女の声がする。なんだと?! 神は俺を見捨ててはいなかったってことか。
声のする方向に目を向けると、朝日に照らされてきらきらと輝くオレンジ色の巻き髪に、エメラルド色の瞳の美少女がドアの前に立っていた。
みなとちゃんよりも短いスカート、そして、穿いているガーターベルトに俺の目が釘付けになった。な、なんてセクシーな幼馴染なんでしょう。俺の幼馴染が起こしに来るのと違う、ドキドキ感パネェ。
「おはよう、湊、昨日は大変だったみたいね。さぁ、下で朝食をとりましょう」
そう言うと、ベットの近くにある学習机の椅子に足を組んで座る。
はーー、俺、生まれてきて、いや、みなとちゃんになって本当に良かった。嬉しさのあまり泣いちゃいそう。神様ありがとう。美脚って素晴らしいです。ガーターベルト最高です。
おっと、いけない俺も朝の挨拶をしないと。こんなさわやか朝に相応しいグッモーニンな挨拶をしないとね。
「お、おはよう、ございます、け、蛍都」
どもりながらだけど、きちんと挨拶ができた。
俺よくやった!! 緊張のあまりちょっと噛みそうになったけど。
「何故敬語? まだ寝ぼけているの湊。熱はないようだけど」
蛍都さんのお手手が俺のおでこに。
はー、しあわせ。今この瞬間、時間が止まればいいのにな。無理なんだろうけど。
「体の調子悪いなら無理しない方がいいんじゃないの、湊」
あ、そういえば純ちゃんも居たっけ、すっかり忘れてた。
しかし、お二人さんが並ぶとまじ美男美女でお似合いですね。ギギギ、リア充・純一爆発しろ。
「ううん、大丈夫。もう起きるから先に下に行ってて」
俺は可愛く首を傾げながら答える。
俺は現在みなとちゃんだから、なるべく可愛らしい仕草をしないといけないからな。
はーっ、ちょっと面倒だな。
「そう、じゃあ、先に下にいるからね」
「早く下りててこないと湊の分食べちゃうよ」
「純、あんた朝食も食べていくつもり? 遠慮ってもんを知らないの」
「湊ん家は、俺の第二のマイホームなんだからいいの」
「湊に迷惑でしょう。あなた学校違うのに中学の時も入り浸りだったじゃない」
二人は口喧嘩しながら出て行った。
何つーか、バカップルがじゃれているようにしか見えないっすね。
おー、あつい、あつい。
いいなぁ、俺も恋人が欲しいなぁ。
「やっといなくなったか、二人揃うと喧しいやつらめ」
アイスが物陰から、ひょっこりと出てくる。
因みに、今日のアイス君の格好はキリン柄のパーカーに黒っぽい半ズボンです。いつの間に着替えたんでしょう……
「あの二人まじでラブラブだよな、羨ましい」
「は? 比井野純一は攻略対象なんだから恋人ではないだろ。相変わらずアホだな、ミナミナ」
「だってさ、朝から痴話喧嘩しちゃってるし。あいつ、朝は蛍都さんに起こしてもらっているのかな。かーっ、まじうらやまっ!」
「そんな訳ないだろ。まったく、馬鹿言ってないでさっさと着替えろよ。僕、暇じゃないんだからな」
へいへい、わかってますよ。
「服は可愛いのに、行動はかっわいくないなぁ、アイス君」
「さっさと出ていけ、このアホ!」
制服に着替えたらアイスに追い出されました。
すんごくプリプリ怒っていたけど全然怖くなかった、だってアイスだもの。
今日の朝食は南お姉さまの作った朝食です。ハムエッグにトーストに牛乳とサラダ。とても美味しゅうございました。
そんでもってお昼のお弁当も南お姉さまに作ってもらいました。愛姉弁当と喜んでいたら、明日の朝と昼は俺が用意しなくてはいけないらしい。何でも忙しいご両親のために当番制にしているんだってみなとちゃん家。
どうしよう、俺料理したことないんだけど。朝昼シリアルじゃダメかな、ダメですよね。帰ったらアイスに何とかしてもらおう。
それにしても、今日はみなとちゃんの幼馴染たちと登校できてラッキーだったな。俺、学校が違うから全然道わかんなかったし、こんな風に無事に着けなかっただろうし。
「登校する時はわたしと一緒に行きましょうね」
蛍都ちゃんは、にこにこと嬉しそうに言う。
ああ、もう、これ蛍都ちゃんとのENDでいいんじゃない? 幼馴染エンドっつーことで。ダメかな、だめですよね。世知辛い世の中だぜ、まったく。
「俺もいるんだけど」
じろっと純ちゃんが睨む。
いや、俺は存在を忘れてないから。ホント、本当、だから睨まないでください。あんたの眼力すごい怖いんです。
「純は部活入るんでしょ。朝練あるから無理じゃない」
負け時と睨む蛍都ちゃん。
そーだそーだ、幼馴染二人を並べてハーレム主人公気取りか、貴様。俺は蛍都ちゃんの味方なんだぜ。
「別に強制じゃないし」
「そうなの? 壬生は毎朝行くつもりだったけど」
「壬生はスポーツ馬鹿じゃん、俺はいいの。それより、湊は部活に入るの?」
ん? 部活?
そうだ、俺は料理部に入らないといけないんだった。部活動は来週から始まるらしいけど、今日入部届け出してしまおう。早く筒見君に会いたいな。
「湊、聞いてる?」
「ごめん、えーと料理部に入ろうと思ってるよ」
「へぇ料理部か、湊は料理が得意だからイイんじゃない。わ、わたしも入部しようかな」
えっ、本当に本当ですか。俺って、そういうスキル皆無なんですけど。基本お昼は、必ず学食か購買で買ってムシャムシャ食べてました。でもって、お弁当作ってくれる女子を常に募集中でした。やべぇー、どうするべ。
「何か作ったら頂戴」
「えっ、あげないけど」
なんであげると思ったの? なんで貰えて当然だと思ったの? まったく、これだからイケメン幼馴染君は嫌なんだ。俺が作った物は全て俺の物。みなとちゃんであれば頷いていたかもしれないが……残念! 中身はこの俺なのだよ、ちみぃ。
しかし、そのさり気なく女子に強請る交渉術はバッチリ参考にさせてもらうぜ。マイボディに戻れたら試してみようっと。
「んー、じゃあ勝手に貰うからいいや」
は? まじ意味わかんないんですけど? ごごご、強奪だと?
……いいだろう、その挑戦受けとった。くっくっくっ、楽に食い物を手に入れられると思うなよ。俺の食糧は俺が守ってみせるぜ!
「断られたからって拗ねないの。湊だって機嫌が良ければ貰えるかもしれないし」
蛍都ちゃんがチラチラと俺を見る。
すまない、蛍都ちゃん。機嫌が良かろうが悪かろうが、俺は絶対にやらないと思う。
なぜなら、料理部には筒見君がいるから。勘違いされると困るんだよね、筒見君に。つーわけで俺からのフォーユーはないから欲しければ奪ってみるんだな、純一。
「うーん、考えとくね」
まあ、本心は隠して適当に誤魔化しとこう。純ちゃんって、たまに目が笑ってない時があるから怖いし。
うーむ、しかし、イエスは嫌なんだけど、ノーとは言えない状況ってストレスが溜まるな。
やっぱり後で断ろう。俺はきちんとノーと言える人間だしね。
「じゃあ貰えるまで蛍ので我慢する」
「はぁ? ちょっと、わたしだってね、本気を出せばすごいんだからね! ふん、今に見てなさい」
「はいはい、精々頑張りなよ」
「きーっ、むかつく」
本当に仲が良いなぁ、この二人。まだ恋人同士じゃないって嘘みたいだな。どーみても、バカップルがイチャイチャしているようにしか見えないし。
う、羨ましくないんだからね、俺もがっちり恋人作るし。くそー、早く蒼君に会いたいな。カップルに対抗して、こっちもイチャイチャ返しをやりたい。
と、アホなことを考えたら学校に着いたようです。案内サンクス、お二人さん。