「何」が起きても「母」は「母」
「しらんからな~、にいちゃ~ん、ゆ~て、さがしとってん、!」母の日常、その(99)
2006/1/27(金) 午後 0:37
某月某日 母の介護は、見守り介護である。誰かが、側にいないと、母は、不安になり、自分探しを始めるのだ。この日はデイがお休みで、私が仕事から帰るまで、派遣ヘルパーさんが介護してくれていた。通勤に利用している電車が遅れ、夕飯の買い物を済ませる時間がなく大慌てで帰宅した。
「ただいまー!」と、玄関を開けながら声をかけた。
「00さん、お兄ちゃん、帰ってきはったよ~」とヘルパーさんの声がした。
「あー!、にいちゃんやー、はやかったな~」と母は、何の屈託もなく出迎えてくれた。
「うん、急いで帰って来たんやーっ!」
「そうか、ふふ~ん!」(さすがにプロは違う、お袋ちゃんこんなに嬉そうな顔してる)。
「では00さん、また来ますね~、私帰りますからね~」
「へぇ、あんた、かえるのん、なんでや~?」
「お兄ちゃん帰ってきはったから、交代ねっ」と、笑顔でヘルパーさんが。
「そうかぁ~」
「今日は、ご機嫌でしたよ~、洗濯物も畳むのお手伝いしてくれましてね~」と、母の様子をそれとなく話してくれる。(お~気にヘルパーさん、感謝してます)。
「あたりまえでしょう!」と母。
「00さん、またね~、バイバ~イ」とヘルパーさん。
「バイバ~イ」と母も手を振る。私の頭には、夕飯をどうするかで一杯なのだが。前に一度使ったあれでいこう、と思った。
「お袋ちゃん、バナナ食べるか~?」
「へぇ、そんなんあんのん?たべるぅ」母がおやつのバナナを食べている間に、素早く買い物へ。時間稼ぎだ。以前はこれで約10分くらいは、大丈夫だった。
「お袋ちゃん、ご飯は炊いた~るけど、おかずないから、ちょっと、買うて来るはな~」
「あいよ~、はよかえりや~」バナナを、小割にするのに夢中の母。
「行ってきま~す」と、母に手を振り、急いで買い物へ。
「お袋ちゃん、ただいまー!、買う~てきたよ~」と、玄関を開けながら、リビングに向かって大声をかけた。リビングに母の姿が見えない。
「えーっ、まさか!、この寒いのに、ベランダへ出たんちゃうやろな~!」と思いつつ、急いで部屋の中に入った。
「あーっ、どこいっとったん?、さがしててな~、おれへんから~、どうしょう、おもてたんや~!」と、母は自室の布団の上で、座っていた。
「ご免、ごめん、買い物いっとったんや~」
「しらんからな~、にいちゃ~ん、ゆ~て、さがしとってん!」ベランダでなく良かった。今日は朝から粉雪が舞うほど、寒い。風邪でも引いたら大変なことだった。
「なんかもってきて、たたいたろかー、あほー!」母の日常、その(100)
2006/1/30(月) 午後 0:33
某月某日 母の世界から、私を見て「お袋ちゃんは僕を本当に、信頼してくれてるんやろな~」とつくづく感じるのだ。夕食後。
「さあ、薬飲もうか~」
「うん!」
「は~い、あ~んしてな、これだけやから、飲んどこな~」
「むぅ~ん」と、母が口を噤んだ。
「飲まなあかんがな~、これな、咳止めやで~、お袋ちゃん、咳したら、苦しいやろ~?」
「くるしないー!、せきなんか、せーへんわー!」
「ほんだら、これ飲もう、これは、風邪の薬やから、小さいやろ~、こんなんやで~」
「あ~ん」母が、口を開けた。
「飲めるやんか~、はい、もう一つなっ」
「どうやって、のむのん?あ~ん」
「このお湯で飲みや~、ゴックンしてなっ」
「べェ~や」と、母が舌を出した。白い錠剤の薬が二つ溶けかかって、母の舌の上に乗っているのが見えた。
「何してるん?飲まな~、あかんやん、ゴックンせな~」
「にがい!、ぷぅふーっ」と、母が薬を吐き出した。
「わーっ、何すんねんな~、もう、飲まなあかんやんか~、こないしたろ~かー!」と、私は母の両足の裏をくすぐってやった。
「あほー、なにすんねん」すかさず、母が私の頭を叩き始めた。(このパンチが素早いのである。何時も交わし損ねる)。
「痛いっ、痛いー!、薬な~、吐くからや~、ちゃやんと、飲まなあかん、ゆ~てるだけやんか~」
「いらん!、なんかもってきて、たたいたろかー、あほー!」と、母が口を尖らせた。少しやりすぎた。いま薬を飲ませるのは、まずい。「ま~寝る前に飲ませよか~」と思い。
「分かった、わかった、お茶でも、飲むか~?」(お袋ちゃん、白旗挙げるわ)。どうも、薬を飲ませるタイミングが、だんだん難しくなってきた気がする。(前はこれでうまいこといったんやけどな~)と私は、心の中で呟いた。
「そうですか、ありがとう~ね~、」母の日常、その(101)
2006/1/31(火) 午後 0:50
某月某日 最近の冷え込みは何十年振りか。この寒さの影響なのか、母の夜中の徘徊が、めっきり減った。その代わり、こんな現象が。
「おか~さん、おか~さん!」と、母の声が。時計を見たら、午前5時半ごろ。
「どうしたん?」私は、布団をハネ除け母の枕元へ急いだ。(気管支炎の発作が怖い)。
「あぁ~、なんや!にいちゃんか~」と、ノンビリとした母の声。(ほっ、と一安心だ)。
「うん、どうしたんや?おしっこか~」母に聞く。
「そうやねん、どうしたらえ~かな、おもうてな~」
「はいっ!、行こう」母をすくい上げるように抱き起こす。
「しってんのん?どこや?」
「こっちやで~」と、母の両手を持ち、廊下の手摺りに掴まらせながらおトイレへ。
「こんなとこか~?しらんかった~?」トイレを済ませ、母を寝かせて、布団に潜り込む。と、、、。
「にいちゃ~ん、おきてるか~?」と母。
「起きてるよ~、どうしたん?」
「さぶいねん、びょうきかな~?」
「心配せんでもえ~よ、僕がおるからな~、なんかあったら、すぐ行くからな~」
「ほんま~、うれしい~、にいちゃん、かしこいな~」
「ゆっくり、寝~や」
「あいよ」と返事して、直ぐに。
「にいちゃ~ん、にいちゃ~ん、もうおきてよろしいか~?」
「まだ、早いから、寝とってえ~よ、時間が来たら、ちゃ~んと、僕が起こしたるからな~!」
「そうですか、ありがとうね~」と母が返事をする。私の目覚ましが鳴る(午前6時半)まで、似たような会話の繰り返しをする。徘徊から、このパターンが最近増えた。(お袋ちゃん、徘徊ちょっと、治ってきたんかな~、治ってんねんやったらえ~のにな~)と私は思い、勝手に良い方に解釈している。
「わかりました、なんでもさせて、ごめんな~、」母の日常、その(102)
2006/2/1(水) 午後 0:28
某月某日 この二、三日暖かい日が続いたせいか、母が少し、以前の生活リズムを、取り戻したようだ。寒暖に落差がありすぎると、高齢者には堪える。今朝の母は。
「にいちゃん、もうおきたんかいな~?」
「うん、起きたよう、いま、お茶の用意してるからな~」
「そうですか~、ありがとね~」
「まだ、早いから、もうちょっと寝ててえ~からな~」
「あいよ~」と、母のご機嫌な時のご返事である。時計を見ると、午前7時過ぎだ。これなら8時には、ゆっくり起きてくれる。と、、、。
「にい~ちゃん、もう、おきてよろしぃ~か~?」
「おしっこか~?」
「う~うん、ちゃう、おきよかな~、おもうてな~」
「それやったら、まだ、早いから、ゆっくりしとき~」
「そうですか~、ねててよろしいのん?」
「え~よ、ご飯の用意が出来たら、顔、洗を~なっ」
「はい、わかりましたっ!」私が、リビングやキッチン、洗面所でバタバタするものだから。
「にぃ~ちゃん、なにしてるのん?」
「うん、今な、ゴミ出しに、行かなあかんから、用意してんねん、心配せんでもえ~よ」
「わかりました、なんでもさせて、ごめんな~」(母は何もかも分かっているのだ)。今朝、母は元気にデイ施設へ行った。昨日、ある方から送って頂いた、牡蠣を食し、母も私も「海の牛乳」のお陰で元気そのもの。ブログをかりて御礼申し上げたい。