親子の絆(2)
「へぇ~、そ~やった?ゆ~てくれへんから、わかれへんかったー!」母の日常、その(86)
2006/1/5(木) 午後 1:44
某月某日 年末年始の休みに入った。母と二人きりの年末年始だ。大晦日から元日にかけて。
「今日はな~、大晦日やから、年越し蕎麦食べよなっ、今年もお終いやで~」
「そうかっ、おソバたべるん?うれしいぃ!」
「ちょっと、そこの、スーパー行って、買~てくるけど、かめへんか?」
「うん、いっといで~、はよ、かえりやっ!」
「分かってる、直ぐやから、行ってきま~す」私は、母がこの事を覚えているのはせいぜい、数分と分かっている。スーパーまでは、徒歩2分とかからない。10分もあれば、目的のものを買って戻れる。母に、10分は微妙な時間ではある。
「お袋ちゃ~ん、買~てきたでぇ、ただいま~」玄関からリビングは見通せる。座っているはずの母の姿が見えない。
「お袋ちゃん!、お袋ちゃ~ん、帰ってきたよ~、ただいまー!」と、リビングへ行くと。母の和室のベランダの、ガラス戸が開け放たれ、ベランダに母が。
「寒いのにい、そんなとこで、何してるん?」
「にいちゃん!、どこいっとったんやー?、わたしなー、あっちか、おもうて、さがしてたんやー」
「スーパーへ買いもんに行ってたんやんか~?」
「なんで、いえへんのー!、だまっていくから、わかれへんやんかー!」
「今日はな~、大晦日で、年越し蕎麦食べなあかんから、買いに行っとったんやんか~?」
「ちゃんと、ゆ~てくれへんから、わて、どこいったか、さがしとってん」母が、ものの、10数分で、部屋中を探し回ったことは明らかだ。各部屋の扉が皆開けられている。玄関も、鍵をかけたハズであったが、私が戻って来たときには鍵は掛かっていなかったのだ。(お袋ちゃん、どうやって鍵ハズしたんやろ)。
「ちょっと、遅なったから、心配してくれたんか~、ご免な~」
「そうやねん、どこいったんか?、さがしとってん」
「もう、心配せんで、え~よ、年越し蕎麦買~てきたからなっ、明日のお正月迎えられるで~」
「へぇ、あした、しょうがつかーっ?」
「そうやで、今年は今日で、終わりやで~」
「へぇ~、そ~やった?、ゆ~てくれへんから、わかれへんかった!」(お袋ちゃん、今年も無事終わりそうやな~、来年も元気で生きような)。
「へー、そうやったん、はっはっは~、なんやわかれへん!?」母の日常、その(87)
2006/1/6(金) 午後 1:09
某月某日 年が明けた。母の寝顔を覗き込むと、何とも言えない柔和な表情をして眠っている。「どんな、夢みてるんかな~」と思いながら、元旦の外をカーテン越しに見た。午前6時半過ぎ。「今日は何もせ~へんねん、」と、呟きながら、シャワーを浴びに。
「おね~さ~ん、おね~さ~ん!」と母の声。(年明け、母の第一声は、おね~さんか?、姉貴には勝てんちゅうことか)と、私は思わず苦笑い。
「こっちやでぇ、シャワー浴びてんねん、いま直ぐ、行くから~」と私は、慌てて、浴室の扉を開けて、大声で叫んだ。
「なんや、にいちゃん、そんなとこ、おったんか~?、どこいったんかな~?、おもうてな~!」
「おはようさん」
「おはようございます」と母は四つん這いのまま、ペコリと頭を下げた。
「風邪引ぃたらあかんから~」と、私は母にカーデガンを着せた。
「おしっこやねん!」
「はい、行こうか~」
「どこや~?」母をおトイレへ。
「ここやったっ?しらんかった~、せまいな~、さぶいねん」予想していたので、母の肩にストール巻き付けた。
「お袋ちゃん、おめでとうさんや!今日はな~、お正月やで~」おトイレでの新年の挨拶となった。
「おしょうがつ?、なんでやっ?」
「なんでやて、、、。今日はな~、1月1日やっ、元旦やで~」
「がんたん?、しらんで~?、どう~なったっ!」
「そやから、今日からお正月やねん、そやから、おめでとうさんや、分かったか~」
「へぇ~、そうやったん、はっはっは~、なんやわかれへん?」義妹がお昼にお雑煮を持ってきてくれる事になっているから、お餅の一つも食べれば、母も正月が分かってくれるだろう。
「つめたい!ゆーてるやろー、あほかーっ!!」母の日常、その(88)
2006/1/9(月) 午前 11:26
某月某日 母の世界には、私には分からない事が沢山ある。体調管理も大切だが、心の管理は神のみぞ知る、と言うことなのか?。この日母は、機嫌よくデイ施設へ行ったのだが。
「ほら、00さん、お兄ちゃんが迎えに来ましたよ!」と介護施設の送迎バスから、何時もの、ヘルパーさんの明るい声。
「お袋ちゃん、お帰りぃ」と私。
「なんやのん、ここどこや?!」と母。
「お袋ちゃん、家についたんやで、さあ~おいで」と両手をいつものように、私は差し出した。
「どこつれていくん?ここかーっ?」と、母は声を荒げる。
「うん、ちょっと、おかしいな~」と、私は、思いつつ母がバスから降りるのを、待つのだ が、母は降りる気配を見せない。
「午前中はね!、ご機嫌でしたけど、バスにのられてから、ちょっと、ね~!」とヘルパーさんが。
「そうですか~、いや、朝も今日は機嫌よかったんですけどねぇ」と私。
「お袋ちゃん、おいで~や、もう、家についたんやで、帰ろう~」
「なにするつもりやーっ!」と母が一喝。(わーっ、凄い迫力や)。
「何もせ~へんよ、家帰るんやで~」
「いえ!?,ここかー?、ほんまかー?!」
「ほんまや~!、僕やんか~、どう~したん、何かあったんか~?」
「なにもないわーっ!,ここどこやー、ゆーてんねん!!」
「分かった、わかったから~、ほ~ら、降りよう、な~っ」と私が、母の両手に触れたその時。
「つめたいっ!、ゆーてるやろー、あほかー!」この後、この日はどういう訳か、終始機嫌を損ね、何を言っても、母は否定する発言ばかりを繰り返した。「ご飯食べよか、」、「いらん」。「お薬飲もか」、「いらん、」。「おしっこは」、「ないわー、そんなもん」。「服着替えとこか」、「しらん、これでえー」。(お袋ちゃん、何をむかついてるんかな~。ま~あ、こんな日もあるわな~)。
「どこいくねん!さわりな!あほ、!」母の日常、その(89)
2006/1/10(火) 午後 5:07
某月某日 前日に続き、母は朝から、機嫌が宜しくない。何がどうなっているのか。(考えたてみたところで、機嫌が治る分けでもない)。今日も柳の木になる私。
「学校(デイ施設)のバスが来たよう、行こうか~?」
「しらん!、いったことないわっ!」と、にべもない。
「いつも、行ってるとこやでぇ」と、呟くように言ったのだが。
「しらん!、ゆーてるやろー!」(あかん、ほんまに、怒ってはるわ!)ちゃんと聞こえているのだ。
「もう、来てるから(送迎バス)、行こうな~」
「あんた、いきっ、わていかへん!!」
「そうか~」
「なんやねん、あほかーっ!」
「なに怒ってるん?」
「おこってへんわー、あんたが、かってに、なにしてるんやろー!!」
「うん、、、、」と、私は、母の顔を覗き込んだ。
「なにみてんのん、あほかっー!」
「いや、どうしたんかな~?、今日のお袋ちゃん、ちょっとおかしいからなっ」
「みんといてー!!」
「うん、、、、」デイの送迎バスで、待っているヘルパーさんに、どうしたものか、しばし、思案の私。
「お袋ちゃん、買いもんに行くか~!」と私は、座椅子から母を立たそうとした。
「どこいくねん!、さわりな!、あほ!」と、実に見事な三連発。母は私が差し出した両手を振り払った。こうなったら、タクシーで後からデイ施設へ送り届けるしかない。デイ施設へ、その旨電話をした。(こんな日もあるわなあ)。