「普通に暮らす」が一番なのだが、これが難しい
「うれしいー!?、ばたばた、なにしてんのん、アホちゃうかー」母の日常、その(31)
2005/10/5(水) 午後 1:10
某月某日 00000「この一戦にあり」。私は、自称「大阪タイガース、三代目団長」である。初代は親父の上司、二代目が親父、昭和48年親父が急死したため、三代目を私が勝手に継ぐことにした。一昨年リーグ優勝を果たした時は阪神タイガース、オリジナル、ブレザーを購入した。21年目の日本一へ。
「今日は野球見さしてな~」と母に。
「うん、にいちゃんのすきなもんみぃ」
「タイガースなー優勝するんやで~」と、私は少し興奮気味だ。
「へぇ~、しらんかった、なんでや?」母も笑顔で聞いてくれる。
「今年は強いねん、お袋ちゃんも一緒に応援してな~」
「わてもか~、うん、え~よ」親子で、その瞬間をテレビ観戦だ。
「うったんか~?」と、母。
「打ちよったっ」
「かってるん?」
「勝ってるで~、」などなど、テレビの前で、母子で盛り上がる。
「やったー、金本やー、取ったー、優勝やー、お袋ちゃん、優勝したでぇー」と、私は、テレビの前で飛び跳ねながら、叫んだ。
「お袋ちゃん、今度はスーツ買うで~」親子で六甲颪の大合唱。母はこの歌を一番だけは、歌詞を間違わずに完璧に唄える。興奮冷めやらぬ私は。
「嬉しい!!」と、声を挙げて、狭いリビングを飛び跳ねた。
「うれしいーっ!?、ばたばた、なにしてんのん、アホちゃうか、はっははー」と、言いながら、母も笑顔で手を叩いている。阿吽の呼吸で伝わるのだ。(お袋ちゃんの、どこが認知症やねん、と、私はこういう時、何時も思うのだ)。
「なにすんねん、どついたろかー!」母の日常、その(32)
2005/10/6(木) 午後 0:58
某月某日 寛いでいる時の母のスナップである。
デイ施設で、頭をカットしました。(うつらうつらしている時に撮影)。
私が、何かをしている時は、母はなにやら、お勉強。
「にいちゃんでたわ~」。何をしてたかは、ご想像にお任せします。
私が、デジカメを向けると。
「なにすんねん、どついたろかー!」と母が言う、その顔は笑っている。
「にいちゃん、でてしもてん、どないしょう~?」母の日常、その(33)
2005/10/7(金) 午後 0:50
某月某日 人間、失礼、私は同じ失敗を何度も繰り返す。季節の変わり目には、特に注意しているつもりだが。明け方、母の声が。
「にいちゃん、でてしもてん、どないしょう~?」(寝小便ではないのだ。母の名誉にかけて申し上げる)。(私が小さいころどれだけ、このことで、母にお世話になったことか)。
「うん、あーっ、お袋ちゃん、そのまま、ちょっと、じっとしててや~、心配せんでえ~から」急に朝晩冷え込む季節になった。用心していたつもりだが。
「にいちゃん、でてしもてん、どないしょう?」と母が繰り返し言いながら四つん這いで私の寝床へやってきた。私も同じ言葉を繰り返し、母にじっとするように言うのだが。それから、奮闘すること、約1時間余り。
「な~、お袋ちゃん、出るゆ~ことは、元気な証拠やん、何あ~んにも気にすることないで~」と、母に言う。
何が起こったのかは、ご想像にお任せする。
「はよ、こんかいなー、わたしを、どぅーするつもりやっ!」母の日常、その(34)
2005/10/10(月) 午後 0:33
某月某日 またまた、失敗した。
「にいちゃん、でたー、どうしょう?」と母が。
「早よ、行こー、!ちょっと辛抱しぃや、直ぐやから~」
「あー、でたわー、どうしょう?」前回同様、季節の変わり目、朝食後だった。
「動かんといてな~、直ぐ、綺麗にするから~」母を便座に座らせ、オムツ(母にはパンツと言う)を取替え、スパッツも新しいものと、急いで履き替えさせた。その後、事態はさらに急変、デイの送迎車が来ても、母の下痢が止まらないのだ。
「でたー、どうしょう?」母が途方に暮れたような表情を。
「あ~ん、あ~ん、わてアホになったんかなー」母が泣き出した。
「さむいやんかー、はよしぃーなーっ!!」泣きながら怒っている。
「おしりいたい、いたいやんかー、もう、えー、わたしがする、いたいゆーてんねん!」
デイの送迎車を待たせることに。送迎車には何人ものご老人が。私の悪い頭がフル回転。このままでは、皆さんにご迷惑がかかる。
「にいちゃん、べんじょー、はよしてー、でるーぅ!」母が怒りだした。
「どこいくのん、おらんかいなー!」咄嗟に私は決断した。
この日はゴミ出しの日、もうすぐ回収車が来る時間だ。デイの送迎車も、そう待たす分けにも行かない。と、言って母の傍を少しでも離れる分けにもいかない。トイレと手洗い、着替えと、何度か繰り返す。マンションの何時もの場所で待っているデイのヘルパーさんに緊急のケータイをかけた。が、生憎、つながらない。こーうなったら、母が出るものがなくなるまで、待つしかない。送迎車には既に、何人かのお年寄りが乗車している。母と同じ認知症の方もいる。あまり、長くは待たせられない。
「お袋ちゃん、ちょっだけ待っといてなー、直ぐくるからなー」と、言って、私は、モーダツシュで、玄関を跳び出し、ゴミ袋を掴んだまま、送迎車へ向かった。
「はよっ!、こんかいなー!、わたしを、どーするつもりやっー!!」の、母の怒声を背に浴びて。この日、私はどのように動き回ったのか、未だに思い出せない。
「うんだか~?、うんだおぼえないけどな~!」母の日常、その(35)
2005/10/11(火) 午後 0:25
某月某日 母との会話時間を出来るだけ増やすようにしている。母の世界に入り込むことが出来ると、上手くいくことが多いからだ。その為には、何でも良いから話をすることだ。
「かえろ~かー?な~っ」と母が何気なく呟く。
「うん、、、、どうしたん?」私は少しオーバーに母に聞く。
「もう、かえらなっ、な~?」と、当然の事のように母が私に言う。
「お袋ちゃんの家ここやんかー、どこへ、帰るん?」さりげなく、静かに答える。
「わたしのイナカや~」
「お袋ちゃんの田舎遠いからな~、明日、学校(デイ施設のこと)やし、今日はここに泊まろ~や」
「あんた、とまりぃー、わてかえるからー!」
「僕、一人置いて行くん?」と、母の目を覗き込む。
「あんたは、ここのひとやから、おったらえ~ねん、わたしかえるから!」母は、本当に立ち上がろうとした。
「ちょっと待って、お袋ちゃん、もう遅いし、自分の息子置いて行くんかー?」
「むすこーっ!、だれがーっ!」
「僕やんか?、お袋ちゃんが産んだ、子供やで~」
「うんだか~っ、うんだおぼえないけどな~!」この押し問答も、母との大事な会話である。ゆっくりと時間を気にせずにだ。
「へ~っ、ほんまかー、わぁー、うれしい!」母の日常、その(36)
2005/10/12(水) 午後 1:12
某月某日 毎年、春休みに姉の家へ母を泊りがけで、連れて行くのが恒例になった。今年の春も三泊四日で厄介になった。今年は、姉の家が増築され、姉の長女夫婦が一緒に住むこととなった。二世帯住宅になったのである。そこで。
「なにしてんのん、はよ、こっちこんかいなー」私が電話をしていると、最近は必ず母が言う。
「いまな、ちょっと電話やねん」
「ながいことー、だれやー!」電話を取ると何故か母は機嫌が悪くなる。
「姉~ちゃんやんか~」
「ね~ちゃん?、てだれのやー?」
「あんたの、娘や~」
「むすめ!!、わてしらん!」
「00子や、忘れたんか~?」
「00コてっー、だれや?はよしぃー」
「直ぐ終わるから~、もう、ちょっと、待って~な」
「わてを、アホやおもてんのんやろー、ばかにしてーっ!」
「姉貴、お袋ちゃん、怒ってるから~、もう切るわな~」と、電話している姉に。
「アホかーっ!、はなし、してんのに、ききもせんでっ!ー」母がついに切れました。
母に、姉の家が増築され、長女夫婦が住むことになった、経緯を説明する。
「そやからな~、お袋ちゃんと僕と、綺麗になった姉~ちゃんの家、今度、見に行こ~な~そうしよう~?」
「へ~っ、ほんまかー、わーっ、うれしいぃ!、」ゆっくり時間をかけて話すことの大切さを感じるのだ。今年二度目の泊りがけである。
「どこえつれていくんやっ!、いやや、いかへん!!」母の日常、その(37)
2005/10/14(金) 午後 2:18
某月某日 午後5時、姉の家へ向けて、最近流行の介護タクシーで自宅を出発。
「どこえつれていくんや!、いやや、いかへん、!」と、言い出す母を介護タクシーで。
介護タクシーには車椅子が固定出来る装置が付いている。車椅子に縛り付けられたような格好になる。敏感な母が、大声を上げて怒り出した。姉宅まで、約1時間ほどのドライブだ。道中、母のご機嫌は、次回に掲載する。
「わたしを、どーするつもりや!!」母の日常、その(38)
2005/10/17(月) 午後 1:23
某月某日 さあー、姉宅へ向けて出発。介護タクシーの車中で車椅子に乗り不安を口に出す母。
「にいちゃん、おろしてやー!」
「心配せんでも、え~んやで~、お姉ちゃんとこ行くんやから~」
「おね~ちゃんて、だれやー?」
「お袋ちゃんの子供やんか~?」
「しらん、いけへん、おろしんかいなー!、アホやおもてんねんやろっー!」
「すぐ、着きますからね~」と、運転手も気遣ってくれる。
「あんた、だれやっ!」その運転手に向かって、母が一喝。
「この車、運転してくれてはる人やで~」
「こわいぃ~、にいちゃん、ガタンガタンゆ~てるぅ、きぶん、わるいー!」
「ご免なさいね~、もうすぐ、着きますからね~」とヘルパー免許を持った運転手さんが気遣う。
「そうやで~、お袋ちゃん、直ぐに、着くからな~、ちょっとだけ、辛抱してな~」姉の家まで、小一時間はかかる。母の不安は治まらない。運転手さんと、私と二人で、母をなだめながらのドライブとなった。
午後5時に自宅を出て、6時過ぎにようやく、姉の家に到着した。二世帯住宅になった姉の家は一回り大きく見えた。とっぷり日が暮れていたので、玄関前に並んでいる人影が誰だかよく分からない。
「00婆~ちゃ~ん」と、母のひ孫の声が聞こえた。小学校3年の00(女の子)と2年の00(男の子)だ。その横に、姉と孫の00も迎えに出てきてくれていた。
「遅かったなー!、ず~と、みんなで、待ってたんやでぇ!」と姉。
「うん、ちょっと道、間違えて行き過ぎてん」と私。介護タクシーのハッチバックが上げられ、車椅子に乗っていた母がゆっくり降りて来た。
「なんやのん、わたしを、どーするつもりや!!、」到着した、母の第一声だ。
「ぷっ~と、吐き出すねんで~、もう、よ~飲まさん!」母の日常、その(39)
2005/10/18(火) 午後 0:23
某月某日 姉宅で一夜が明けた。この日私は、大事な所用で、早朝から出かけた。母を姉に託して。夕方に戻り、母の様子を聞いてみると。
「朝の薬、飲んでへんねん、今日一日中、機嫌悪いねん」と姉。
「うん、時々、へそまげるからな~」と私。
「00(母の孫)がな~、飲まそ~おもうて、粉に潰してんやんかー、お水に混ぜたんやんかー」と、姉がその時の母の様子を。
「そんなんしたら、よけ~に、飲めへんやろー?」と、私が答える。
「そうやんかー、何が気にいらんのんかしてなーっ」と姉。
「毎日、そんなもんやで~」
「ぷっーと、吐き出すねんでー、もう、よー飲まさん!」と姉。
「はっは~は~ん」と、私は、思わず笑ってしまった。
「そんなもん、何時ものことや~」
「まあ、ほんまに、血圧上がるわー!」と、姉。
「まあ、そう言うなや、そう言う、病気やから」
「あんた、よ~やるわー、ほんまにぃ」と、その時の事を思い出したのか、姉は腹の虫が収まらない様子。
「怒らない、大声を出さない、逆らわない、やで~、姉貴」
「わあー、おとろしぃー」と、姉がおどける。
「ずっーと、喋ってくるねんでー、寝られへんわ!」母の日常、その(40)
2005/10/19(水) 午後 0:33
某月某日 姉宅に泊りがけの二日目は雨。母は、この日、一日中機嫌が悪かったらしい。その、一部始終を姉が私に報告してくれた。次の日の早朝、私は、また、大事な所用で、出かけることに。
「起き~や、もう、行かなあかんねん?」と私は、姉と母が仲良く寝ている(何だかんだゆーても親子は親子やな~)布団を叩く。やっぱり親子だ仲良く二人で寝ている。
「えー!、もう?」と、私にたたき起こされた姉が。
「もう行かなあかんねんわ」と、私が声をかけると。
「もう、ぜんぜん寝かしてくれへんねん、何か、話してくるねんでー、どないなってんのんなー!」と眠そうな姉が言う。
「そ~かいなー、今、よ~寝てるやん」
「そら、寝るわー、自分(私のこと)もう~行くんかー?」
「うん、1時間半くらい、かかるからな~、兄さん(義兄)、もう、起きたはるで~」眠そうな、目をこすりながら、姉がようやく起きてきた。
「自分(姉のこと)、布団からはみ出てて、寒う~なかったんかいな~?」と私が聞く。
「そうかあ~?、何んか、知らんけど、喋ってきて(母が)、な~」母の夕べの様子を。
「学校(デイ施設)行ってへんから、あんまり、疲れてへんしぃ~、寝られへんかったんかなー?」と私。
「ず~っと、喋ってくるねんで~、寝られへんわー!。夜中になー、そこのキッチンの隅っこに行っててんで~、おトイレ探しててんやんかー」と、姉が昨夜の母の様子を話し出した。母の夜な夜なの徘徊、変幻自在である。私も、そのパターンの全容は把握していない。