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「何があっても」逆らわない、が介護の基本



  「もうかえろう~かっ、なーっ、にいちゃん?」かえりたいねん、その(1)


2005/7/13(水) 午後 2:43

某月某日 母は自分が、いま、何処にいるのか、何故ここにいるのかの、認識が全くない。(母にとっては、それが普通で、どこにいようが関係ないのだ)。


「どうしたん?」母がゴソゴソしている。


「うん、かえるよ~い、せなあかんやんか?」と、当然のように仰るのだ。


「何処へ、帰るん?」一応確かめる私。


「わたしの、イエにかえるねんやんか、あほちゃうか!」と、嘆かわしそうに言う母。


「お袋ちゃんの家、此処やで」2,3日に一度は母とこのような会話になるのだ。


「なにゆ~てんのん、イエ、はここちゃうわー!」


「あのな~、お袋ちゃん、よ~聞きや」

私は、母がここに来た経緯を「阪神大震災」から、話さなければならない。何時ものようにゆっくりと一言一言、噛んで含めるように説明するのだが。


「ほんだら、あんたおり~や、わたしは、かえるからっ!」が母の何時もの台詞だ。


「そやからな~、、、、、、、」と、私。前述の繰り返しを、、、、、、。


「あんたーっ、わたしが、あほやおもて、ばかにしてんのんやろー!」と、母も決まって怒りだす。


「そんなことせ~へんよ」これも、何時も私が言う台詞だ。


「してるわー!」


「見てみぃ、もう、お袋ちゃんが、寝るように、お布団も敷いたあるやろ~」と、私は母の居室を指さす。


「あんたねたらえ~ねん、わたし、かえるから!」


「う~ん、、、、、、、、、、」何時もこうなる。


「うそついてるねん、あんたわー!」母の表情が一変する。


「何で、息子の僕が、自分のお母さんに、嘘つかなあかんのん、そんなことせ~へんよ」


「いやっ、あんたわなー、わたしが、あほやおもて、うそゆーてんねん!」


「ほんだら、用意するか~?」これ以上、母を刺激してはならない。私は母の身支度を手伝うことに。


「うん!」と、母が笑顔になる。


「はい、おトイレいってからな!」母をトイレへ、便座に座った母が、私を見据えて。


「で~へん、もうかえろうか?にいちゃん、はよ、かえりたいねん!」不安げな表情だ。

こうなったら、兎に角、一度、家を出るしかない。(マンションを一回りするか、エントランスで、、、と私はあれこれ考えるのだ)。この日はエントランスを一回りして事なきを得た。





  「おか~さんやら、みんないてるねん!」かえりたいねん、その(2)


2005/7/14(木) 午前 10:57

某月某日 今日はデイ施設で、入浴のあった日だ。それと、散髪。母はスッキリして帰ってきた。その夜、もう寝る時間に、眠たそうに欠伸をしながら、母が。


「にいちゃん、かえろうか~?」と、ぽつりと言う。


「うん」私は軽く返事する。


「もう、かえろうか!、ゆーてんねん!」


「帰る、って、何処へ~」


「わたしの、いなかやんか!、」(今日は田舎だ)。


「田舎に、誰か居てるん?」


「なにゆ~てんのん、このコはー、いなかに、み~んな、おるやんかー!」(阿呆か!)と言わんばかりの母だ。


「お袋ちゃん、明日な~、学校(デイ施設のこと)やから、今日はここで泊まらなあかんねんで~」と、言ってみた。


「がっこう?いきたない!、かえるっ!」と、キッパリ。


「そやけど、もう、遅いで、お袋ちゃんの田舎は、飛行機やないと行かれへんで」


「ひこうきのったらえ~やんか~」母の言う通りだが、、、。


「お袋ちゃんは、いま、飛行機乗られへんねんで、腰の骨折れてるからな~。腰が治ったら行けるから~」と、詭弁を弄する私。


「おれてへんわー、あんたー!、なんで、そんな、うそいうのっ!」と、見抜かれる。


「嘘、ちゃうで~、ほんまやんか~」諦めの悪い私。


「かえりたいねん、にいちゃん、いときー、わてかえるからっ!」と、母の方が毅然としているのだ。


「誰も、居てへんのに、帰るんか~」私の最後の抵抗(勝った試しはないのだが)。


「いてるわっー、おか~さんやら!みぃ~んないてるねん!」


「分かった、わかった、そんな、怒らんでも、え~やんか~、ほな、服着替えようか」

この後の、結末はご想像あれ。(結果、この日は、また階下のエントランスを一周して来ました)。





  「あんた、おっときー、わてかえるからー!」かえりたいねん、その(3)


2005/7/15(金) 午後 0:18

某月某日 姉から久しぶりに電話があった。母は一生懸命お仕事中(ティシュペーパーを箱から一枚一枚丁寧に取り出して、折り畳み積み上げていく作業)だ。


「お袋ちゃん、姉~ちゃんから、電話やけど、出るか~?」と、母に声をかけた。


「いまいそがしいねん、え~わ」と、素っ気ない。


「ちょっと声聞いたらど~や?」久しぶりなので私は母を促してみた。


「あかんねん、これ、せなあかんから、あんたきいときぃ」


「今度な、土曜日に泊まりで来てくれるんやて~」


「ふ~ん、くるのんかー?」全く興味なし。


「お袋ちゃんの、服な~、買うてきてくれるんやて、良かったな~」


「どんなんやー?」作業の手を止めて、母が顔を上げた。


「うん、見てみな分からんけどな、姉~ちゃん、センスえ~から、え~服や思うでぇ」


「そうかな!」


「いま、お袋ちゃんが着てる服も、前に姉~ちゃんが買~て来てくれたやつやで」


「そやったか~」


「あんまり、根詰たらあかんで~、明日、学校(デイ施設)やから、もう止めたらわ~」


「あした、がっこう!、これして、かえらなあかんねんでー!」


「ん、、、、、、、、、」しまった。母の誘導尋問に私は引っかかった。


「今日はな~、仕事して疲れてるやろ、ここで泊まって、明日、帰ろ~や、なっ!」姉の電話どころではなくなってきた。


「なにゆ~てんのん、かえるから、これしてるんやんかー」母のほうが、辻褄が合ってきたのだ。


「そやけど、もう遅いしな、そうしたほうが、え~んちゃうん?」


「あんた、おっときっー、わてかえるからー!」


「う~ん、、、、、、」後は流れのままに、と思う私。母が作業を終えてからの対処になりそうだ。(結果、この日はマンションを出て植え込みで一休みして帰ってきました)。



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