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認知症の介護の生命線は「お食事」だ。



 「してくれるん、うれしい、やっぱり、かしこいな~」お食事、その(1)


2005/7/4(月) 午後 0:34

某月某日 食事は出来るだけ楽しく。子供の頃は「食べながら、話すなっー!」と、よく親父に怒鳴られました。が今は。


「お袋ちゃん、今日の000は美味しいやろー!」


「うん、あまいし、おいしいわ、だれがつくったん?」


「うん、僕や!」(嘘です、惣菜屋さんで買いました)。


「へぇー、にいちゃんが、つくったんかいな~、なんでや、わたしが、すんのにぃ」


「お袋ちゃんは、学校いっとって、疲れてるやろ~、そやから、ご飯炊いて、おかず、つくとってん」


「あっーはーはっー、あのひと、みとるわ!、だれやあれ?」母がテレビを見て。


「僕らが、食べてるから、見てるんちゃうか、00のひとやで」よく見かけるタレントさんだ。


「こっち、ばっかり、みてるでぇ」


「うわー、えらい、歳いったお婆ちゃんやなー!、思うて見てるんちゃうか、はははっー!」と、茶化す私。


「ふっふ~ん、そやろか?おもしろいひとやなー!」と、母が悠然と頷く(お袋ちゃんは大物やなー)。


「これ、にいちゃん、たべー、わたし、おおいねん」


「これくらい、食べなー、これ、栄養あるねんで!」


「えいよう、いらんねん、たべー!」(この何んでもないような母のひと言だが、飽食時代に慣れきった私は、考えさせられる、言葉だと思った)。


「そう言わんと、食べてみぃな、美味しいで、見てみっ、僕食べたでぇ」


「はやいな~、もう、たべたんか?」


「美味しいからな、先に食べたんや!、お袋ちゃんも、食べてみぃ」


「あー、また、みとるわー、だれやー、このひと、ここどこやのん?」


「うん、00ちゃうかな~、あの人は00の人やろ!」


「どうしたら、え~かな、これー?」母はティシュを広げ、おかずをその上に載せ始めた。少しまずい展開になって来た。


「残したもんは、後で、僕が、ちゃんと、括っといたるから、好きなやつ食べや~」


「してくれるん、うれしい、やっぱり、かしこいなー、にいちゃんわ!」と母が。


「もういらん!」と、母が言うまで、こうした、会話が続くのである。





  「これさきにせなあかんやんか、それも、わからんのんかいな!」お食事、その(2)


2005/7/6(水) 午後 6:37

某月某日 私が、一番有難いのは、母が食事に関して一切文句を言わないことだ。私とて、ご飯くらいは炊けるが、料理は全く出来ないからだ。


「よ~けは、いらんで~」と、最近はいつもこう言う母。


「分かったよ、そやけど、このくらいは、食べてな!」


「それでえ~わ」


「さあ、熱いうちに食べよ~」


「あ~ん、みて、わてなー、ハ(下の入れ歯を最近紛失)ないねん!」


「そうや、お袋ちゃん、何処かえ、置き忘れて、失くしてしもたんや~」


「わてがかー?、しらん、だれかが、とったんやろー!」と、憮然とする母。


「何で、人の入れ歯なんか、だれもとれへんで~」と、消えるような声で言う私。


「あんたが、ほったんちゃうか~」そんな私の言葉を、母は決して聞き逃さないのだ。


「うん、、、。味噌汁さめんうちに、食べよ」入れ歯の話題は、これ以上はまずい。


「これ、なんや?」


「お袋ちゃんの好きな、玉子焼きやで~、熱いから気ぃ~つけて食べや」


「あいよ~、これはなんや?」


「お野菜の煮物やで~、柔らかいから、食べやすいよ~」


「あんた、たべー、ハー、なっー、ないねん、あ~ん、みてぇ」まずい展開だが、しばらく、入れ歯の話題が繰り返される。


「どうしたん、食べ~な、冷めるで~」しまった。母がティシュを既に広げて折りたたみ始めている。


「それ、後からしたら、先に、ご飯食べ~な」


「うん、、、、、、、、、」返事はするものの、母の関心はティシュの方へ。


「な~、お袋ちゃん、ご飯、冷めたら美味しないで、それ、後で、ゆっくりしたらどう~や」


「あんた、さき、たべー!」


「もう、ほら、僕は食べたで~、お袋ちゃんも、早よ、食べや~」


「これさきにせなあかんやんか!、あんた、それも、わからんのんかいな!」と、母は怪訝そうな顔をして、私を睨む。この気迫を母はどこから発するのか。





 「なにゆ~てんのん、わたしのや、なまえかいてへん!」お食事、その(3)


2005/7/12(火) 午後 1:03

某月某日 食事中。


「これなんや?」


「お袋ちゃんの好きな、玉子焼きやんか?」


「おいしいか?」


「美味しいで~」


「ううん、、、、、」と私。母が私のお皿に、お箸を伸ばしてきたのだ。


「お袋ちゃん、何してるん?それ、僕のやで~」


「なにゆ~てんのん、わたしのんやっ!、なまえかいてへん!」

確かに、おかずに、名前は書いてないのだ。(人間このくらい度量がなかったらあかん)。





  「なにが、きたないのん、おそなえのんやでー!」お食事、その(4)


2005/7/12(火) 午後 1:15

某月某日 食後の母。


「お袋ちゃん、ちょっと待って、何、食べてるんや!」母の様子がおかしい。


「うん、ごはんやんか~」食事は終わったはずだが。


「もうご飯、食べたやんか~、それ何やのん、何処にあったん?」


「おそなえのんやんかー」


「お供えって、それ、ゴミちゃうか~」異変に気付いた私。認知症の方が異物を食べてしまう話は良く聞いていた。


「なにゆう~てんのん、ゴミちゃうでー、あほかいなー」


「そやけど、それ、ティシュに包んであったやつやろ~、あかん、あかん、そんなん、食べたら、お腹壊す、やめとき~な」と、少々慌て気味の私。


「これわなー、ちゃ~んと、おそなえしたやつやー!」ティシュを離そうとしない母。


「あかんて、出し~な、食べたらあかん、そんな、汚いもん、あかんやんか~」と、私は母の傍らへ急いだ。


「なにが、きたないのん、おそなえのんやでー!」

その後のやり取りは、ご想像頂きたい。結果は、私の右手が少々痛むことに。(母に噛みつかれました。しかも歯茎でガッチリと)。



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