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認知症の母に笑顔を与えてくれ、見守るヘルパーさん

 

「きやはったわー、きやはったわー、わ~うれしい~」ヘルパーさん、その(1)


2005年/6/27(月) 午後 0:25

某月某日 ケアプランを立てる作業は大変な仕事である。介護度に応じて、それぞれ異なる家庭の事情を抱えた介護者や、その家族の「意」を汲まなければならないのだから。


「今日は稽古に00まで行ってくるわな!」


「ふ~ん、きょう、いかなあかんのんか!」


「うん、その代わりな~、ヘルパーさんが来てくれはるからな!、お袋ちゃんは、何~んも心配せんでえ~で」


「ヘルパーさんて、だれやのん?」


「何時も、お袋ちゃんのこと、見てくれてる人や、顔見たら分かるわ!」


「しらん、お~たことない、あんた、わたし、ほっとくんかー!」母の機嫌が悪くなる予兆の表情だ。


「ほっとけへんで~、直ぐ、近くやからな~、直ぐに、帰ってくるやん」


「ほんまか~、すぐ、かえってくるのん?」


「うん、直ぐやでぇ」ピンポーン。


「あーっ、来はったよ~」


「00さん、00です、お早うございます」


「ほら~、お袋ちゃんのこと良~知ってる00のヘルパーさんや~」


「お早う、ございます、よろしくお願いします」私は信頼しているヘルパーさんに挨拶する。ヘルパーさんは、直ぐに母の両手を包み込み。


「00さん、00です、今日は~!」


「わーっ、ヘルパーさんや!、にいちゃん、きはったわー、きはったわーうれしぃー!」と、母の機嫌が一変する。


「それじゃー、行ってきます、よろしくお願いします。お袋ちゃん、行ってくるわな!、バイバ~イ」


「00さん、兄ちゃん行きはるよ~、バイバ~イ」


「うん!バイバ~イ」笑顔で手を振る母。さすが、プロである。(お袋ちゃんを、頼んますぅー)。




  「これぇ、わたしかぁ?はっははー、だいぶとしやなー!」ヘルパーさん、その(2)


2005/6/28(火) 午後 1:21

某月某日 先日、デイ施設で今月がお誕生日の方達の、パーティが開かれた。母も90うん歳の誕生日を迎えた。その時の写真が出来上がってきた。00施設のヘルパーさん職員の皆様、このブログを借りて御礼申し上げます。その時に撮った写真を見た母は。


「これぇ、わたしかぁ、はっははーっ、だいぶとしやなー、よ~うつってるやん、な~にいちゃん!」


本当に嬉そうだ。何度も同じ事を繰り返し「写真」を何度も私に見せる。(良かったなー、お袋ちゃん)。





  「そんなこと、せーへんわ!」ヘルパーさん、その(3)


2005/6/29(水) 午後 0:52

某月某日 毎月、ケアマネージャーさんと、母の翌月のケアプランの打ち合わせを行う。ケアマネさんは、兎に角お忙しい。何時も、ハードスケジュールの合間を縫って、私との時間調整をしていただいている。母は、一体何人の人達に支えられているのだろうか、ただただ感謝。


「00さん、来月から、こういうケアプランを提案させて頂きたいのです」と、ケアマネさん。


「はい、そうですか」差し出された、母の1か月分のケアプランの用紙に目を落とす。


「00さんは、金、土曜日ぐらいになると、だいぶ、お疲れモードになるようですから」と、母の様子もしっかりと把握。


「木曜日は、デイ施設ではなく、家にヘルパーさんを派遣して頂いてケアするようになるんですね」と私。(母が施設で結構暴れるのだ)。


「はい、そうです。ず~と、毎日デイだと、週末は少しイライラされて、お疲れのようですから、そういうプランを立ててみました」


「そうですね、土曜日の入浴を、お袋ちゃんは、良く拒否するみたいですから」


「はい、まあ~、こんなこと、あれですけど、足を蹴ったり、とかですね、アザができた介護士さんもいましてね」


「は~、それは、私も、聞いてまして、私も、やられますんで。一日間を空けてやる、このケアプランで、そういうことがなくなれば、ご迷惑かけずにすみますし、来月から、このケアプランで、よろしくお願いします」


その日の夕方。


「お袋ちゃん、来月からな、木曜日は学校休みになるんや~」


「ふ~ん、なんで?」


「毎日行ったら、疲れるやろ~」


「つかれへんわー!」何時もながら、少しの異変も見逃さない、感の鋭い母である。


「うん、、、そやけど、お袋ちゃん、時々、お風呂いやがるやろぅ」


「おフローッ!、はいったことないわー?!」


「そうか~、まあ~な、それはえ~ねんけどな、毎日、行かんでも、一日学校休んでその日は家でゆっくりしたほ~が、え~んちゃうんかな~」


「わたしを、ほったらかしかー!」


「そんなこと、せ~へんよ。その日はな、ヘルパーさんが、ちゃんと来てくれはるから」


「ふ~ん、それやったらえ~やん!」


「ほんだら、そうしてもらおな~、ヘルパーさん、蹴ったりしたら、あかんで~」(しまった、余計なことを)。


「あほちゃうかーっ、あんたわーっ!わたしぃ!、そんなこと、せーへんわ!」決して聞き逃さないのだ。


「そらそう~や、お袋ちゃん、ヘルパーさん、好きやもんな~」と、前言を消そうとする私に。


「あたりまえやわー!」と母が一喝する。来月から、母の新しい、ケアプラン生活が始まるのだ。異変を微塵も見逃さない。凡人の私では、ハナから勝負にならないのだ。





 「だれが!、そんなきたないこと、せーへんわ!」ヘルパーさん、その(4)


2005/6/30(木) 午後 1:27

某月某日 2ヶ月に一度、デイ施設で「家族の集い」とする、催しが開かれる。ここで、介護者のご家族が、様々な悩みや施設からの諸事業等の意見を交換する。この仕組みは非常に有難い。集いが終わり、母の様子を見に行った。


「お袋ちゃん、お昼ご飯食べたんか?」広々した施設内で母を見つけ声を掛けた。


「あぁー、あんたかいな、たべたかな~」悠然としている母。と、通りがかったヘルパーさんが。


「00さん、良かったね!、兄ちゃんきてくれて~」声をかけながら母に笑顔を向けてくれる。


「ああ、いつも、お世話になります。お昼どうでしたか?」と、尋ねてみた。


「はい、今日は完食でしたよ!、ねー00さん!」


「ははーっ、ほんま~、たべたぁ~」と、笑顔を返す母。


「うん、美味しい、美味しい、言う~て、ね~00さん!」


「なんや、お袋ちゃん、美味しかったんやんかー!」


「わからんねん?どうしょう、にいちゃん!」


「うん、食べた、言う~たはんねんから、何~も心配せんでえ~やんか~」


「そうですよ、00さん、今日は、大好きな歌も上手に唄えたしね!」


「そうやったかな!、わて、ウタ、うとう~たんか?」


「フレーフレーフレーフレー、ゆ~てね(阪神タイガースの応援歌六甲颪だ)」


「はは~ん、それ、僕がいつも唄ってますねん」


「よ~覚えてはりますよ~」


「あたりまえや、わすれへんわー!」と、母はニコニコしながら、負けずに言い返す。


「00さん、ちょっと」と、ヘルパーさんが私を。


「お家では、ツバを吐いたり、しやはりますか?」小声で、ヘルパーさんが。


「えっ!、ここで、お袋、吐きましたか?」


「はい、最近、ちょっと、多いんで、お家では、どうかな~思いまして」


「は~、家でもやりますねん。気管支に疾患がありまして」


「そうですか、お薬は、いただいてはるんですか?」


「はい、朝晩、治療薬を飲んでるんですが?」


「まあ~、気にしないで下さい、私らが見て対処しますから」


「すいません、よろしくお願いします」


「お袋ちゃん、ツバ出そうになったら、ティシュに出しや~、床に吐いたらあかんで~、汚いやろ~」と、やんわり。


「だれが!、そんなきたないこと、せーへんわ!、なにゆーてんの!」はい、そうです。

(お袋ちゃんやないわなー、病気のせいや!)と、呟く私。





               《2005年7月》


 「このひとなー、え~ひとやねん、ねぇー!」ヘルパーさん、その(5)


2005/7/1(金) 午後 0:37

某月某日 母は、要介護度5である。四六時中見守りが必要だ。寝ている時も、何時、徘徊するか解らない。ケアマネージャーさんの配慮で、月に2回、日曜日にヘルパーさんを派遣して頂き、私は、武道の稽古に当てることになった。


「ただ今!、お袋ちゃん、帰りましたよー!」玄関から大声をかける。


「あー、おかえり、にいちゃんや!、どこいっとったんなー!」


「うん、剣術の稽古に00までいっとったんや!」


「いつーぅ」


「うん、朝からや!」


「そうかいな!、しらんかったー、なんで、ゆえへんのん?」


「うん、ちゃ~んと、言うたよ、ね~ヘルパーさん」と傍らで出迎えて頂いたヘルパーさんに。


「00さん、お兄ちゃん、行ってきま~す、言うて、行きはったよ!」と、ヘルパーさんが。


「しらん、きいてへん!」


「まあー、嬉しそうに、00さん、早よ、帰ってきて良かったね~」と、母の表情を見ながらヘルパーさん。


「ふふ~ん、にいちゃんなー、このひと、え~ひとやねん、ねぇ!」と、母が笑顔でヘルパーさんの顔を見る。


「わあー、00さん、有り難うございます。褒めてもらいました!」ヘルパーさんも笑顔をこぼす。


「何時も、お袋ちゃん、見てくれはるヘルパーさんやんか~」


「なに、ゆ~てんのん、いま、きはったんやでぇ!」


「今日は、終始、笑顔で落ち着いたはりましたよ~」と、ヘルパーさんが、それとなく母の様子を聞かせてくれる。これが有り難い。


「そうですか、お袋ちゃん、ヘルパーさん、好きやもんな!」


「00さん、じゃ帰りますね!、またね~」


「いくの~、にいちゃん、いきはるんやて~」ちょっと、不安げそうな顔をする母。


「うん、また、明日きはるからな!」


「ほんま!、また、きはる?」


「00さん、また、来ますよ~!」と、それとなく、母の表情を察し、母の両手をなでながら、笑顔で。


「バイバ~イ」と、玄関先で振り向き、ヘルパーさんが。大きく手を振るヘルパーさんに、母は名残り惜しそうに同じように大きく手を振る。(お袋ちゃん良かったなー)。



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