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「認知症」の人から「金」を取る、この国の社会保障制度。



「こんなとこで、ねさしてもろ~て、ありがとうございます」


2005/5/30(月) 午後 0:39

某月某日 デイのない日曜日。親子二人きりだ。洗濯、掃除、炊事。寸暇の買い物、など、私が動くと母は決まって「なに、ばたばた、してんのんっ!」と聞く。私が動くと、少し、機嫌が悪くなる。日が暮れて就寝。


「もう、ねてよろしいか?」と、眠そうな母。


「うん、ゆっくり寝~や」と、母の居室へ連れていく。


「はい、お休みなさい」と、数分も経たないうちに、ゴソゴソ母の寝間から音がしたと思ったら、四つん這いで、隣のリビングで寝てる私の寝間へやって来た。


「にいちゃん、こんなとこで、ねてんの~?」


「そうや、お袋ちゃんの隣やで、心配せんと、寝~や」


「はい、わかりました、すぐ、ねます」と、四つん這いになって自分の寝間へ引き返す。


「ちゃんと、かぶりや、風邪引いたら大変やからなっ!」母が、和室(母の居室)とリビングの段差に躓かないよう確かめながら。


「うん、かぶってます、にいちゃん、ありがとう」


「はい、お休みやで~」その後、2、3度、母はこの、似たような行動を繰り返す。そして、似たような会話を私とやりとりする。


「ねましたか?」と、母が聞く。


「うん、もう寝るよ」と、私が応じる。


「わたしも、ねます」と母。数回はこんなやりとりを、母と私は繰り返すのだ。母は、自分の不安感と戦っているのである。


「お休みなさい」母に声をかける。


「こんなとこで、ねさしてもろて、ありがとうございます」


「良かったな~、ゆっくり、寝れるよ!」


「あいよ~、おやすみなさい」私も、返事を返すと、しばらくして、母の寝息が聞こえてきた。(お袋ちゃん、今日も勝って良かったな~)と、私は思うのだ。今日も恙無くだ。



  「どっちがええかな~!」


2005/5/31(火) 午後 0:32

某月某日 母との生活は、毎日が真剣勝負である。それだけに、生活には、一定のリズムを持たせ、常に母の言動に注意を怠ってはならない、と私は思っている。


「もう、これでえ~かな~」と、母が洗濯物をたたんでくれた。


「ああ~、え~よ、有り難うさん!、よ~け、畳んでくれたな!」取り込んだ洗濯物の山。


「にいちゃんのもあるで~」と、母が。


「うん、分かった、僕のは持っていくわ!」


「これ、だれのんや?」


「それは、お袋ちゃんのやっ!」


「わたしのん?、こんなんあったか?」


「うん、え~服やろっ」


「こんなんしらんで~」


「一昨日、学校へ、着て行ったやつや!」


「しらんわー、きたことな~い」


「そうか、ほんだら、明日着て行こうか?、格好え~やんか!」


「にいちゃん、そないおもう?」と、母の表情が和らぐ。


「え~色やー、お袋ちゃん似合うで」


「そうか、ほんだら、きていこうかなっ」母が笑顔を見せる。


「そうしぃ」私もニッコリする。


「おしっこやけどなぁ」


「うん、はいはい、行きましょうか」便座に座った母が。


「コシがな~、イタいねん」


「そうか、後で痛み止めのお薬飲もな!」


「あるのん?ウレしいぃ!」


「おしっこ、もう、え~か?」少し水音が聞こえたような気がした。


「まだやねん、で~へんかったら、どうしたらえ~のんかな~」


「さっき、したかったから、もう直ぐ出るんと、違うか?、ひょっとして、うんちかな~」


「わかれへん、どっちがえ~かな」と言いながら、母は急に背をそらして。


「う~ん」と、いきみはじめた。一生懸命、生きている証拠だ。


PS 今朝のTVニュースで「社会保障制度」見直し、「介護保険の抑制」が流された。要支援、要介護1、の方々は老健施設にも入れなくなる、可能性が出てきた。それ、以外の介護度の方々は月額の保険料が大幅にアップする。認知症や寝たきり老人からも容赦なく「金」を取る。自分の家族は自分で守るしかない。



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