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第7話:鉄仮面の帰路と、黄金色の休息

東都最強と謳われた暴走族『阿修羅』の三百人を文字通りスクラップにし、地下貯水施設を血の海に変えた後。

 俺(御堂司)は、人気のない路地裏で鉄仮面と軍服風のコートを脱ぎ捨て、再び東都秀英中学校の「完璧な優等生」の制服へと袖を通していた。

(……あーあ。三百人相手でも、結局はただの作業だったな)

 乱れた黒髪を手ぐしで直し、ボストンバッグのジッパーを閉める。カンストした【筋力】と【敏捷】をどれだけ振り回しても、俺の胸の奥底に空いた退屈の穴は、冷たい風が吹き抜けるばかりだ。

 ふと、夜空を見上げて息を吐いた時。

 俺のカンストした【記憶力】が、ある一つの情報を弾き出した。

(そういえば……この辺りって、保健の星野くるみ先生の自宅があったな)

 以前、学年主任の白鳥と共に保健室で「特別授業」をしてやった、あの黄金色の肌を持つベビーフェイスの保健医だ。確か、この近くのマンションで一人暮らしをしていると、あの日の甘い吐息の中で聞いた気がする。

(……帰って寝るのも退屈だしな。ちょっと寄ってみるか)

 俺は何気なく足を向け、記憶にある閑静な住宅街のマンションへと向かった。

 オートロックのない、少し古びたマンションの二階。表札に小さく『星野』と書かれたドアの前に立ち、チャイムを鳴らす。

『はぁーい……って、えっ!?』

 インターホン越しに聞こえた舌足らずな声は、ドアスコープから俺の姿を確認した途端、慌てたような声に変わった。

 ガチャリ、とチェーンをかけたままドアが少しだけ開き、隙間からくるみ先生が顔を覗かせる。

「つ、司くん……!? どうしてこんな時間に……」

 彼女は、学校での白衣姿とは打って変わり、ダボダボのスウェットにショートパンツという、ひどく無防備な部屋着姿だった。そのスウェットの胸元は、彼女の暴力的なまでのFカップの双丘を隠しきれず、はち切れんばかりに前へと突き出している。

 ふと視線を落とすと、玄関のたたきには、彼女の小さなスニーカーに並んで、不自然に大きな『男物の革靴』が無造作に置かれているのが見えた。

「……あっ、人来てるんですね。お邪魔しました」

 俺がわざと踵を返そうとすると、くるみ先生は慌ててドアのチェーンを外し、俺の制服の袖をギュッと掴んだ。

「ち、違うの! これ、防犯対策だよぉ。宅配便の人とかに変に思われないように、お父さんの靴を置いてるだけで……私、彼氏いないもんっ」

 必死に弁解してくるベビーフェイスが、ひどく愛らしい。

「……そっか。よかった」

「もう……。今日、どうしたの? こんな夜中に、先生に何か相談……?」

 俺は、上目遣いで尋ねてくる彼女を見下ろし、小さく微笑んだ。

「……先生に、会いたくって」

 ――トクンッ。

 俺がカンストした【魅了・フェロモン】をほんの少しだけ滲ませて囁いた瞬間、彼女の大きな瞳の奥底で、何かが甘く弾ける音がした。

 あどけない「大人の先生」の顔から、完全に俺という雄を求める「女」の顔への変貌。黄金色の肌に、じんわりと熱を帯びた朱色が広がっていく。

「あ……そ、っか……」

 くるみ先生は、潤んだ瞳で俺を見つめ返し、ゆっくりとドアを大きく開けた。

「でも……部屋、すっごく汚れてるよ……?」

「大丈夫だよ」

 俺は少し強引に玄関を上がり、彼女の部屋へと足を踏み入れた。

 ……そして、俺は【知能MAX】の脳髄でも数秒フリーズするほどの惨状を目の当たりにした。

「……おいおい」

 本当に、言葉を失うほどの「汚部屋」だった。

 足の踏み場もないほど散乱したファッション雑誌、脱ぎ捨てられたままの服の山、ローテーブルの上にはカップ麺の空き箱や飲みかけのペットボトルが乱立している。

 極めつけは、ソファの足元に、黒いレースがあしらわれたひどくセクシーなランジェリー(おそらく使用済み)が、丸まったまま放置されていることだ。

「だ、だから汚れてるって言ったのにぃ……っ!」

 くるみ先生は顔を真っ赤にして、慌てて床のランジェリーを拾い上げ、背中に隠した。その顔は、羞恥と焦りで涙目になっており、学校で見せる保健医としての余裕など微塵もない。

(……ふっ。なんだこれ)

 カンストしたステータスのせいで、どんな女も数分で俺の奴隷に成り下がってきた。それなのに、今の彼女のこの「隙だらけの人間臭さ」が、なぜかひどく俺の胸をくすぐった。

 可愛い、と。

 前世の冴えないおっさんだった頃の感性が、ひょっこりと顔を出したのかもしれない。俺は、今日一日、この隙だらけの女と一緒にいたいと強烈に感じていた。

「先生」

 俺は、彼女の背後に回り込み、その豊かな双丘を下から掬い上げるようにして、背中から強く抱きしめた。

「ひゃんっ!?」

「……俺、今日は帰りたくない。泊まっていってもいいですか?」

 俺は、カンストした【フェロモン】の蛇口を全開にし、彼女のうなじに顔を埋めて深く息を吸い込んだ。フローラルな香水と、彼女自身の甘く熟れた体臭が混ざり合った、極上の匂い。

「ああっ……司、くんっ……だめっ、そんな、急に……」

 口では抵抗しながらも、俺の放つ圧倒的な雄の匂いと熱量に、彼女の身体はすでにスライムのようにドロドロに溶け果てていた。俺の腕の中で、自ら熱い吐息を漏らし、全体重を預けてくる。

「……いい、よぉっ。司くんになら……私、全部……っ」

 ***

「……ほら、先生。背中、流してあげる」

「んんっ……くすぐったいよぉ、司くんっ……」

 狭いユニットバスの中は、むせ返るような湯気と、甘いボディソープの香りで満たされていた。

 俺は背後から、彼女の黄金色の滑らかな背中を、たっぷりと泡立てたスポンジでゆっくりとなぞっていく。

 カンストした【器用さ】と【絶倫・テクニック】を宿した俺の指先が、スポンジ越しに彼女の肌の上を滑るたび、くるみ先生の口からはだらしない嬌声が漏れた。

「あっ、ひゃあっ! 司くんの手……おっきくて、熱いぃっ……」

「先生の肌、すごく綺麗だね。ずっと触っていたくなる」

「あはぁっ……だめ、そんなとこ……っ」

 俺はスポンジを捨て、直接手で彼女の身体を洗い始めた。

 豊かなFカップの双丘を下から揉みしだきながら、その先端を親指で弾く。黄金色の肌を伝うお湯が、俺の手のひらと彼女の肌の間で、ひどく淫靡な水音を立てた。

 彼女はもう、立っていることすらできず、俺の胸に背中を預けながら、ただ快楽の波に身を委ねてビクビクと身体を跳ねさせている。

「……司くん、私も……私も、司くんのこと、洗ってあげるぅっ……」

 くるみ先生は、熱に浮かされたようなとろんとした瞳で振り向くと、泡まみれの腕を俺の首に絡ませてきた。

 そして、言葉の代わりに、自らの熱い唇を俺の唇へと重ねてきた。

「んちゅ……ちゅるっ……んんっ……!」

 シャワーの音が響く中、俺たちは互いの舌を深く絡ませ合い、貪るようにキスを繰り返した。彼女の豊満な果実が俺の胸に押し付けられ、滑りやすい泡と熱いお湯の中で、二人の体温がどこまでも溶け合っていく。

 カンストした俺の雄としての圧倒的な力と、彼女の雌としての無防備な欲望。

 湯船から上がった後、俺たちは、あの乱雑に散らかった部屋の狭いベッドへと倒れ込んだ。

 言葉など、もう必要なかった。俺のフェロモンに完全に脳髄まで支配された彼女は、俺が何をしても、どんなに深く彼女を求めても、ただひたすらに俺の名前を呼び、極上の歓喜の声を上げて応えてくれた。

 阿修羅を全滅させた夜の退屈など、彼女の甘い吐息と、どこまでも熱く柔らかな肌の感触が、すべて綺麗に忘れさせてくれた。

 ***

 翌朝。

 東都の空が白み始めた頃、俺は一人、静かにベッドから抜け出した。

 ベッドの中では、くるみ先生が毛布をしっかりとかぶり、幸せそうな寝息を立てている。昨夜の激しい情事の疲れからか、そのベビーフェイスは完全に夢の中だ。

(……さて。親父と母さんが起きる前に、戻らないとな)

 俺は、軍事国家『瑞穂』のエリートである父・修一と、美しき母・涼子の「完璧な息子」という仮面を被り直すため、椅子にかけてあった制服を素早く身につけた。

 玄関のドアを静かに閉め、早朝の冷たく澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。

 昨夜の血の匂いと、くるみ先生の甘い香水、そして彼女の温もりが、まだ俺の手に微かに残っている気がした。

(……なんでも思い通りになる、退屈な世界だけどさ)

 俺は、誰もいない朝焼けの道を歩きながら、ふと口角を上げた。

(こういう、隙だらけの女の部屋で朝を迎える……こういうのも、意外と『幸せ』ってやつなのかもなぁ)

 前世の鈴木誠だった頃には絶対に手に入らなかった、圧倒的な力と、極上の女との甘い日常。

 俺の心の中に、ほんの数ミリだけ、この世界に対する柔らかな愛着のようなものが芽生えた――そんな、静かな朝だった。

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