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第1話:神童の退屈と、河原の処女狩り

幼稚園、そして小学校時代。

 御堂司みどう つかさという存在は、周囲の大人たちから見れば、文字通り絵に描いたような「神童」だった。

 知能、運動神経、そして容姿。

 すべてにおいて他を寄せ付けない圧倒的な才能は、テストで常に満点を叩き出し、徒競走では二位を周回遅れにし、黙っていてもクラスの女子たちが頬を染めて群がってくるという結果をもたらした。

 だが、当の俺(中身は三十代半ばの冴えないおっさん・鈴木誠)にとっては、こんな無双状態すらも、すぐに吐き気がするほど退屈なものに変わっていった。

(……つまんねぇ)

 勉強もスポーツも、息をするように『出来てしまう』。努力も、挫折も、達成感もない。

 俺が求めているのは、もっと魂がヒリヒリするような『支配欲』を満たすバイオレンスと、前世では縁のなかった狂おしいほどのエロティシズムだ。

 だが、いくら俺の【フェロモン】や【精力】がカンストしているとはいえ、相手は鼻水垂らした幼稚園児やランドセルを背負った小学生のガキである。さすがに、中身がアラフォーのおっさんの倫理観が「それ」を許さなかった。

「……司、すごいわ! 今回も全部満点じゃない!」

 美しい母・涼子は、通知表を見るたびに満面の笑みで俺の頭を撫でてくれた。だが、その瞳に宿っているのは純粋な「自慢の息子を見る母の目」であり、決して「男を求める雌の目」ではない。当たり前だが、それがさらに俺のフラストレーションを溜め込ませた。

 小学校高学年になったある日。

 三ツ星重工の課長である父・修一が、酷く興奮した様子で帰宅した。

「おい涼子、司! ついに、我が国の守り神である超弩級戦艦『瑞穂武尊みずほたける』が、私の部署で改修に入り、新兵器を搭載することになったぞ!」

 父は、まるで新しい玩具を与えられた子供のように捲し立てた。

「詳しくは言えないが、これで瑞穂の大いなる力となる、歴史的な仕事ができる……!」

 ふとリビングの巨大モニターを見ると、国民放送局のニュースキャスターが『本日は、領空侵犯を図った大星の無人爆撃機を十二機撃墜しました。我が国の電磁防空網の前には、旧来の核兵器すらもはや過去の遺物に過ぎません』と、無機質な声で報じていた。

「いいか、司」

 父は、俺の両肩をガシッと掴み、熱に浮かされたような目で語りかけてきた。

「国家のために、そして偉大なる大鷹宰相閣下のために、一生懸命勉強して体を鍛えるんだ。この国を救った英雄、あの神崎さんのように……お前なら、必ずなれる!」

(……はぁ。またそのテンプレ洗脳スピーチかよ。親父もすっかり、この軍事国家ディストピアの立派な歯車だな)

 俺は内心でため息を吐きながら、「はい、お父さん」と、完璧な作り笑いで優等生を演じてみせた。

 そんなこんなで、俺のつまらない幼少期は、あくびが出るほどのイージーモードのまま過ぎ去っていった。

 ***

 中学校に入学しても、俺の日常は変わらなかった。

 俺の身長はすでに百八十センチに達し、顔立ちはさらに洗練され、誰もが振り返るほどの美丈夫に成長していた。バレンタインデーには段ボール箱が何個も必要になるほどチョコをもらい、学力テストは当然のごとく全科目満点。

 だが、相変わらず手を出したいと思えるレベルの「熟れた女」は周囲におらず、退屈の極みだった。

 そんな俺に、ささやかな転機(暇つぶし)が訪れたのは、中学二年の春のことだ。

 目立ちすぎる俺を不愉快に思ったのだろう、三年生を中心とした不良グループに、放課後の校舎裏へ呼び出されたのである。

「おい優等生。調子乗ってんじゃねぇぞ」

 見れば、二十人近くのガラの悪い先輩たちが、鉄パイプや木刀を持って俺を取り囲んでいた。

(……二十人がかりで、丸腰の中学生をリンチか。ショボいな)

 俺は、制服のポケットに両手を突っ込んだまま、面倒くさそうに首をポキリと鳴らした。

「あー……ごちゃごちゃ言ってないで、早くかかってこいよ。帰ってゲームしたいんだ」

「舐めやがって、ぶっ殺す!!」

 先頭の一人が、怒声と共に鉄パイプを振り下ろしてきた。

 ――遅い。止まって見える。

 俺のカンストした【敏捷】からすれば、スローモーション以下の速度だ。俺はポケットから手を出さず、上半身をわずかにズラして鉄パイプを躱すと、そのまま軽く右足を振り上げた。

 ドゴォッ!!

「がはっ……!?」

 俺のつま先が不良の顎を掠めた瞬間、その巨体はコマのように空中で三回転し、白目を剥いて地面に叩きつけられた。

「なっ……!?」

「や、やっちまえ!!」

 残りの十九人が一斉に飛びかかってくる。

 俺は大きなあくびを噛み殺しながら、流れるようなステップで敵陣の中へ滑り込んだ。

 バキッ! メキッ! ゴシャァッ!!

 拳を振るう必要すらない。すれ違いざまに肩をぶつけるだけで相手は吹き飛び、軽く手刀を落とすだけで鎖骨が砕け、足を払えば三人がまとめて宙を舞う。

 開始から、わずか十秒。

 土煙が晴れた後には、手足を不自然な方向に曲げて呻く二十人の不良たちが、ゴミのように散乱していた。

「……はぁ。運動にもならねぇな」

 俺が制服のホコリを払っていると、足元で顔面を腫らしたリーダー格の男が、血を吐きながら俺を睨みつけてきた。

「……こ、これで……終わりだと思うなよ……っ!」

(……出た。三流悪役(雑魚キャラ)の、お約束の捨て台詞)

 俺は乾いた笑いを漏らし、そのまま彼を放置して帰宅した。

 ***

 それから数日後。

 ボコボコにした不良たちが、性懲りもなく俺を再び呼び出してきた。

 場所は、夕暮れ時の人気の少ない河原。

 正直、死ぬほど面倒くさかったが、もしかしたら少しは歯応えのある奴を連れてくるかもしれないと、淡い期待を抱いて足を運んだ。

「……遅ぇぞ、優等生」

 河原の土手で腕を組んで立っていたのは、見上げるほどガタイの良い、他校の制服を着た男だった。その後ろには、先日俺が潰した中学生の不良どもと、高校生らしき手下が十人ほど控えている。

 そして――ボスの男の腕に寄り添うように、一人の女が立っていた。

 金髪混じりのショートヘアに、制服のスカートを短く切り詰めた、かなり綺麗系のヤンキー女子高生だった。生意気そうなツリ目と、シャツの上からでも分かる形の良い胸元が、妙に目を引く。

(……ほう。女子高生なら、ギリギリ『守備範囲』だな)

 俺のカンストした【精力】が、久しぶりにピクリと反応するのを感じた。

「俺は、東都北西部を仕切ってる『鬼怒きぬ』だ」

 ガタイのいい男が、威圧的に凄んできた。だが、俺の【知能(眼力)】から見れば、その肉体はただプロテインで無駄に肥大化させただけの、アンバランスで見掛け倒しの筋肉だ。

「へぇ」

 俺は、前世で読んだ漫画の受け売りを思い出し、鼻で笑った。

「あんた、虎がどうして強いか知ってるか? 虎はな、生まれつき『強い』から強いんだよ。……あんたみたいに、元々弱い奴が無理して鍛えるから、そんなアンバランスで醜い肉の塊になるのさ」

「……テメェ!! 殺すぞ!!」

 逆上した鬼怒が、顔を真っ赤にして巨大な拳を振り上げて突進してきた。

 だが、その遅すぎる拳が俺の顔面に届くより早く。

 俺は【筋力MAX】の右ストレートを、手加減なしで鬼怒の鳩尾みぞおちに叩き込んだ。

 ドッッッゴォォォォンッ!!

「……あ、ぎっ……」

 一撃。まるでダンプカーに跳ね飛ばされたように、鬼怒の巨体はくの字に折れ曲がり、数メートル後方へ吹き飛んで泡を吹いて気絶した。

「え……?」

 その神の領域とも言える圧倒的なスピードと暴力の前に、手下たちとヤンキー女子高生は、声を上げることもできず完全に凍りついた。

「……さーて。次は誰だ?」

 俺が冷たい視線を向けると、残っていた十数人の手下たちは、一斉に悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。いや、数人は恐怖のあまり腰を抜かし、その場で気絶すらしていた。

 夕焼けの河原に残されたのは、俺と、呆然と立ち尽くすヤンキー女子高生だけになった。

「あ、あんた……バケモノ……」

 彼女は、ガタガタと震えながら後ずさりする。

 俺はポケットから手を出し、ゆっくりと彼女に歩み寄った。そして、カンストした【魅了・フェロモン】の蛇口を全開にする。

「……そんな弱い負け犬の隣にいるより、俺のモノになったほうが、何百倍もいい気分にさせてやるぜ?」

 俺は、逃げようとする彼女の細い腰を強引に引き寄せ、耳元で低く、甘く囁いた。

「っ……!?」

 その瞬間、俺から放たれた『雄としての圧倒的な支配の匂い』が、彼女の脳髄を直接焼き切った。

 ビクンッと体を震わせた彼女の瞳から、恐怖の色がスッと消え去り、代わりにトロンとした、理性を失った雌の熱情が浮かび上がる。

「……あ、あぁ……」

 彼女は抗うどころか、俺の首に自ら腕を回し、熱に浮かされたように唇を重ねてきた。

 激しく、貪るようなキス。俺は彼女の舌を容赦なく絡め取り、そのまま土手の柔らかな草むらへと押し倒した。

(……まあ、野外だし、服はこのままでいいか)

 俺は彼女の制服のボタンを乱暴に外し、柔らかな膨らみを直接揉みしだきながら、もう一方の手で短いスカートの中へと指を滑り込ませた。

「ああっ……んんっ……、だめ、そんなとこ……っ」

 彼女の口から、甘く、だらしない嬌声が漏れる。俺の指先が触れるたび、彼女の体はビクビクと跳ね、すでにその秘所は熱い蜜でぐっしょりと濡れそぼっていた。

 俺はジッパーを下ろし、準備もそこそこに、彼女の柔らかな奥底へと熱い楔を深く突き入れた。

「痛っ……!! ひぃっ……!!」

 かすかな抵抗の膜を破る感触。こいつ、これだけ遊んでそうなツラをしておいて、まさかの処女だったらしい。

「……力、抜けよ。すぐに極楽に連れてってやる」

 俺はカンストした【絶倫・テクニック】を駆使し、彼女が痛みを感じる暇も与えないほど、的確に、そして執拗に、最も感じる奥の急所だけを容赦なく突き上げた。

「あ、あぁっ! 嘘っ、おかしくなっ……ひぐっ、んあぁぁぁぁっ!!」

 処女の痛みに泣いていた彼女は、わずか数分のうちに、狂ったように腰を振り、俺の背中に爪を立てて白目を剥いて絶頂の波に飲み込まれていった。

 秋の冷たい風が吹く河原で、獣のように貪り合う二人の熱い吐息だけが響き渡る。

 俺は彼女の中にすべてを吐き出すと、乱れた制服を適当に直してやり、ゆっくりと立ち上がった。

「……はぁっ、はぁっ……」

 草むらに横たわる彼女は、放心状態で涙目を浮かべていたが、その顔はすでに俺のフェロモンに完全に調教され、ただ俺だけを求める「雌奴隷」のそれに変わり果てていた。

(……まあ、初めての女にしては、そこそこ綺麗な女だったな)

 俺は、足元で転がっている鬼怒の顔を軽く蹴り飛ばし、何事もなかったかのように夕暮れの河原を後にした。

 初めての女を抱き、初めて「暴力」の味を確かめた。

 だが――俺の心の奥底に広がる「退屈」という名の虚無感は、何一つ埋まることはなかったのである。

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