第13話:陥落する鉄壁と、暇つぶしの終焉
初日の赤城を陥落させてから、四日間。
俺(御堂司=クロノス)は、放課後になるたびに国家情報省の地下にある専用コンピュータールームへと足を運び、適当にキーボードを叩いては大星のシステムを破壊し、日替わりで用意される「美人秘書たち」を暇つぶしのおもちゃにして手玉に取っていった。
神崎との「俺からは手を出さない」というルール。それを逆手に取るのは、あまりにも簡単すぎた。
二人目の秘書は、冷徹な情報分析官だった。
一切の隙を見せないタイトなスーツに身を包み、氷のような視線を向けてきた彼女だったが、俺が指一本触れることなく、ただ椅子に座ったまま【魅了・フェロモン】の濃度を上げただけで、その構築された論理的思考はドロドロに融解した。
彼女は未知の快楽物質にパニックを起こして息を荒げながらも、抗いがたい雄の匂いに誘われ、自らふらふらと俺の足元へと這い寄ってきた。そして、分厚いレンズの奥の瞳を極彩色に潤ませながら、自らブラウスのボタンを引きちぎらんばかりに外し、露わになった柔らかな胸を俺の膝に狂ったように擦り付けてきたのだ。知的な唇から垂れる涎を拭おうともせず、「お願い、私をぐちゃぐちゃにして……っ」と哀願しながら、彼女は自ら俺の猛りを迎え入れ、高級なスーツを濡らしながら狂ったように腰を振って、何度も絶頂の痙攣を繰り返した。
三人目は、屈強な近接格闘のエキスパートだった。
鍛え上げられたしなやかな筋肉と、いざとなれば俺の首をへし折る気満々の殺気を隠し持っていたが、密室で俺の【支配の威圧】を浴びた瞬間、彼女の闘争本能は「絶対的なアルファ(雄)」への完全な服従へと書き換えられた。
俺がただ冷たく見下ろしているだけで、彼女は自らの殺意が情欲に変換されていく恐怖と快感に涙を流し、自ら進んで衣服を脱ぎ捨てた。鋼のような腹筋を快楽の震えに痙攣させながら俺に跨り、自らの身体が意思に反して雌として開花していく絶望と、それに抗えない究極の悦楽に溺れていく。彼女は野獣のような唸り声を甘い喘ぎへと変え、自ら俺の腰に屈強な脚を絡みつかせて貪るように最奥へと俺を導き、「あぁっ、ご主人様ぁっ!」と牝犬のように啼き叫んだ。
四人目は、誇り高きエリート交渉人。
言葉巧みに俺を誘導しようとした彼女だったが、俺が言葉を発することなく、ただ神にも等しいフェロモンを纏って見つめ返しただけで、その涼やかな声は意味を成さない熱い吐息へと変わった。
彼女は呼吸困難に陥ったかのように胸を激しく上下させ、耐えきれずに自ら俺の胸ぐらを掴んで、貪るように唇を押し付けてきた。圧倒的な雄の毒を直接粘膜から吸い込んだ彼女は、瞬く間に白目を剥いて理性を吹き飛ばされ、自ら下着を剥ぎ取って、俺の指先に最も敏感な蕾を擦り付けてきた。「あぁっ、だめ、もっとぉっ! お願いしますぅっ!」と品性の欠片もない悲鳴を上げながら、高級な絨毯の上で自らの愛液にまみれ、無様に、そして最高に幸福そうに身をよじらせて俺を求めた。
五人目は、若き天才ハッカー。
常に無表情でモニターを見つめていた彼女だったが、俺が背後に立ち、その極上の匂いと体温を浴びせただけで、キーボードを叩く指がピタリと止まった。
彼女は操り人形のように振り返ると、俺の制服に顔を埋め、野生動物のように匂いを嗅ぎ回り始めた。デジタルな情報を処理することしか知らなかった彼女の脳髄は、俺から放たれるアナログで圧倒的な肉の匂いに完全に焼き切れ、自ら俺のベルトを引きちぎるように外し、狂信者のように下半身へと奉仕を始めた。最後は「ご主人様のデータで、私を上書きしてぇっ!」と泣き叫びながら、自ら俺の上へと跨り、激しい水音を立てて完全に自我を喪失していった。
***
モニター越しにその狂宴を見せつけられていた神崎は、苛立ちと怒りで完全に発狂寸前だった。
クロノスは約束通り、自分からは指一本触れていない。秘書たちが自ら理性を投げ捨て、顔も知らない少年の前で牝犬に堕ちていくのだ。その姿を見るたび、彼の脳裏には、愛してやまない元妻・佳奈が同じように蹂躙され、歓喜の声を上げていたあの動画の光景が鮮明にフラッシュバックする。
その怒りをさらに増幅させているのが、クロノスが「遊びの片手間」で行っている大星システムの破壊工作だった。
スパイからの報告によれば、大星のハッキングシステムの八割はすでに機能不全に陥っているという。各国のスパイが軽々と大星国内で暗躍し始め、市民による自由民主化運動の火種すら燻り始めている。大星の監視国家としての力は、完全に削がれてしまった。
国家レベルの陰謀を、中学生が女に奉仕させる合間の「数分の暇つぶし」で次々と崩壊させていく。その圧倒的すぎる非現実感が、神崎の神経をゴリゴリと削り取っていた。
「……今日こそは、絶対に奴に女を落とさせない」
アルバイト最終日となる、六日目の放課後。モニター室で目を血走らせる神崎は、すでに国家の安全保障などそっちのけで、ただの「意地」に取り憑かれていた。
傍らに立つ村上は、現役時代の威厳を失い、私怨で大人気ない執着を見せるかつての盟友に、呆れと深い同情の入り混じった視線を向けていた。
「局長……いくらなんでも、今日の彼女を配置するのは……」
今日、クロノスの秘書として配置された六人目の女性――妙子。
彼女は女性スパイの中でも「最強鉄壁」と呼ばれる特異体質の持ち主だった。
身長一四八センチ、体重七十キロ。顔つきは四十代に見える童顔だが、一切の化粧の気配はなく、年相応のシミが浮いている。Eカップの豊かなバストを持っているが、それ以上に腹部の脂肪が前に突き出していた。
年齢は五十歳。だが、彼女はこれまでの半世紀、一度も男性経験がなく、男性を好きだと思ったことも、女性に対する恋愛感情を抱いたこともない。そういった性的な概念そのものに全く興味がなく、生理的な反応すら示さない。訓練で得た耐性ではなく、生まれ持った「完全な無関心」なのだ。
「フフッ……あいつのあの異常なフェロモンとやらも、性欲そのものが存在しない彼女の心と身体を溶かすことはできまい。今日こそ、俺の勝ちだ」
神崎の歪んだ笑みに、村上は静かに溜息をついた。
***
俺がコンピュータールームに入ると、そこに立っていたのは、これまでの洗練された美女たちとは明らかに毛色の違う、ずんぐりとした体型の初老の女性だった。
「……本日の業務の補佐を務めます、妙子と申します」
一切の感情も色気もない、事務的なお辞儀。
俺は一緒に部屋に入ってきた神崎の耳元に顔を寄せた。
「……ちょっと、話違いません? 極上の美人を用意するって言ったでしょ」
神崎は、皮肉たっぷりに口角を上げた。
「美人の基準など、人それぞれだ。私は、彼女はとても素敵だと思うよ。……では、今日の仕事で最後だ。頼むよ」
神崎は勝ち誇ったような足取りで、部屋を後にした。
(なるほど。どんな色仕掛けも通じない「鉄壁」を用意して、俺に嫌がらせをしたつもりか。くだらねぇ)
俺はため息をつき、パソコンの前に座った。
今日は大星のシステムを完全に息の根を止める最終工程だ。さすがの俺も、いつもより十分ほど長くキーボードを叩く必要があった。
作業を終え、エンターキーを叩き込む。これで大星の監視システムは完全に崩壊した。
俺は椅子を回転させ、直立不動で立っている妙子に向き直った。
「……妙子さん、とっても可愛いね」
俺は【魅了・フェロモン】を全開にして、甘く囁きかけた。これまでの女なら、この一言と匂いだけで腰から崩れ落ちていたはずだ。
だが。
「ありがとうございます」
妙子は、何の感情の揺れも見せず、そっけなく一言だけ返した。その瞳には、羞恥も情欲も、微塵も存在しない。
(……ほう?)
俺は少しだけ驚いた。これまで俺のカンストしたフェロモンを浴びて、呼吸一つ乱さなかった女はいなかったからだ。
ルール上、俺から直接手を出せば、別室でニヤついている神崎の勝ちになってしまう。【器用さ】の能力で無理やり開発することも封じられている。
俺の胸の奥底で、退屈を切り裂くような冷たい嗜虐心が頭をもたげた。
(……なら、限界を超えて引きずり落とすまでだ)
俺は、これまで自制していたステータスのリミッターを完全に破壊した。
【魅了・フェロモン】と【支配】の能力を、全開以上の、文字通り「規格外」の領域まで一気に引き上げる。部屋の空気が陽炎のように歪み、致死量を超えた雄の熱と絶対的な支配の圧力が、逃げ場のない密室を満たした。
「……俺の側に、来いよ」
俺が低く命じると、妙子の身体がビクン、と硬直した。
彼女は必死に足を踏ん張った。モニター越しの神崎は「勝った」と確信して拳を握りしめただろう。
だが、俺の眼は逃さなかった。半世紀もの間、ただの一度も他者に揺るがされることのなかった彼女の枯れた瞳の奥底に、じわりと、抗いがたい熱を帯びた涙が滲み始めているのを。
「あ……く、うぅっ……」
彼女の分厚い唇から、これまでの人生で一度も出したことのない、苦痛と快楽の入り混じったような声が漏れた。
俺から放たれる圧倒的すぎる「神の力」は、彼女の生まれ持った体質すらも根底から書き換えていた。未知の熱に脳髄を焼かれ、妙子はついに膝を折り、ふらふらと、まるで見えない糸に引かれるように俺の足元へと崩れ落ち、その太い腕で俺の脚にしがみついた。
モニター室の神崎が、「なにっ……!?」と息を呑む気配がスピーカー越しに伝わってきた。
「……俺に、奉仕しろ」
俺が冷酷に命じると、妙子は震える手で、俺の衣服に手をかけた。
その手つきは、恐ろしいほどぎこちなかった。男性の身体に触れること自体が初めてなのだ。彼女は涙をポロポロとこぼしながら、不器用な分厚い唇で俺の肌に触れ、ひたすらに奉仕の真似事を続けた。
彼女から完全に同意と行動を引き出したのを確認し、俺はようやく彼女の顎を強引に持ち上げた。
「んぐっ……!? ぁ……んんっ……」
半世紀もの間、誰にも開かれることのなかった唇。そこに俺は容赦なく舌をねじ込み、彼女の口内を徹底的に蹂躙した。初めてのディープキスに、彼女は呼吸の仕方も忘れ、ただ俺の舌に絡め取られて溺れていく。
俺は彼女のダサいブラウスとスカートを無造作に引き裂き、その露わになった身体を押し倒した。
たるんだ腹部、そして重力に従って垂れ下がったEカップの熟れた胸。俺はその見た目など一切気にかけることなく、ただ純粋な「支配」の証として、彼女の身体を優しく、そして時に激しく愛撫し始めた。
「あぁっ! ひぃっ……いや、あ、そこ……っ!」
俺の指先が敏感な乳首を弾き、熱い舌でそれを舐め回すたび、妙子の身体は未曾有の快感に狂ったように跳ねた。これまで眠り続けていた女性としての神経が、俺の手によって一気に叩き起こされ、暴走していく。
俺の手が彼女の下半身へと滑り込むと、そこはすでに、初めての情欲によって信じられないほどの量の蜜でベチャベチャに濡れそぼっていた。
俺は、完全に思考を溶かされ、ただ快楽だけを求めて喘ぐ彼女の最奥へと、己の猛りをゆっくりと沈み込ませた。
「痛っ……! あ、あぁっ……裂け……ひぎぃっ!」
五十歳にして初めて知る、異物の侵入。強烈な痛みに彼女は顔を歪めたが、俺はカンストした【絶倫・テクニック】を駆使し、その痛みを数秒で圧倒的な快楽へと反転させた。
「あぁぁぁぁっ!! なにこれっ、ああっ、ご主人様ぁっ!!」
決して開かれることのなかった鉄壁の奥底。その最も深くて熱い場所を、俺は力任せに、容赦なく突き上げた。
彼女の豊かな肉体が俺の腰の動きに合わせて激しく揺れ、コンピュータールームに肉と肉がぶつかり合う重い音が響き渡る。妙子はよだれと涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺の背中にしがみつき、言葉にならない獣のような喘ぎ声を上げ続けた。
激しい結合の末。
俺は彼女の最も深い未開の地へ、熱く煮えたぎる本能の奔流を、余すところなく発射した。
「あ……あああぁぁぁぁっ……!!」
妙子は白目を剥き、全身を弓なりに反らせて、半世紀分の空白を埋めるかのような、果てしなく長い絶頂の痙攣に身を委ねた。
***
数十分後。
完全に雌の顔になり、だらしなく俺の足元で眠りに落ちた妙子を置いて、俺はモニター室へと足を運んだ。
そこには、完全に魂が抜け落ち、真っ白に燃え尽きた神崎の姿があった。
最強の鉄壁すらも、この化け物の前ではただの肉塊に過ぎない。彼はついに、俺に対する完全な敗北を認めたのだ。
「……大星のシステムは、完全に破壊されたことを確認した」
神崎は虚ろな目でそう告げると、足元のジュラルミンケースを開け、約束の現金一千万円を俺の前に押し出した。
「……また、君に仕事を頼んでもいいかな」
屈辱と絶望の果てに、悪魔の力にすがるしかない哀れな英雄の懇願。
俺は一千万円の入ったケースを無造作に持ち上げると、心底どうでもよさそうに肩をすくめた。
「まぁ、暇でしたらやりますよ」
俺は、深い絶望の淵に沈む大人たちを一瞥することもなく、悠然と要塞を後にした。
大星が崩壊しようが、英雄が狂おうが、俺にとってはただの「六日間のバイト」に過ぎない。俺の抱える果てしない退屈が、これで満たされることは永遠にないのだから。




