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第12話:要塞の狂宴と、堕ちるエリート

「……待てっ……!!」

 局長室のドアノブに手をかけた俺(御堂司=クロノス)の背中を、凄絶な声が引き留めた。

 振り返ると、デスクに突っ伏していた神崎が、ゆっくりと顔を上げていた。その声は微かに震え、両目は血走り、今すぐにでも目の前の男(俺)を八つ裂きにしてやりたいという、どす黒い怒りと殺意で満ちていた。

 だが、大鷹内閣の暗部を束ねるトップとしての強固な理性が、私情で暴走しようとする彼自身をギリギリのところで縛り付けているようだった。

「……お前に、一つ提案がある」

 神崎は、血の滲むような声で絞り出した。

「ここで、『アルバイト』をしないか? 案件が上手くいけば、報酬として一千万払ってやる」

(一千万ねぇ……)

 俺は鉄仮面の奥で鼻で笑った。カンストした俺の能力を使えば、株でもハッキングでも、いつでも億万長者になれる。金そのものに魅力はない。だが、この国の情報機関のトップが、憎悪する相手に頭を下げてまで依頼してくる「内容」には、ほんの少しだけ興味が湧いた。

「どんなバイト? 公園のゴミ拾いとか?」

 俺がわざと小馬鹿にした軽口を叩くと、神崎の額に青筋が浮かんだ。

「……そんなふざけたバイトに、一千万も払うわけがないだろう。ある国のシステムをハッキングし、二度と再生不能になるまで完全に破壊してほしい」

「ふーん」

 俺は肩をすくめた。

「でもさ、俺は中学生だから、バイト禁止なんだよねぇ。校則違反になっちゃう。残念」

 そのふざけきった態度に、横で控えていた村上がギリッと奥歯を鳴らし、明らかな苛立ちを見せた。だが、神崎はあえて顔を歪ませながら、わざとらしく口角を上げた。

「……へぇ。クロノスは『中学生』なのか。……これで、貴様の正体に一歩近づいたな」

(なるほど。そうやって『中学生のガキ扱い』することで、マウントを取り返したつもりか)

 俺は心の中で呆れながらも、「わかったよ。どうせ暇だし、そのバイト、やってやるよ」と頷いた。

「その代わり、条件がある。俺専用の最高スペックのコンピュータールームと、日替わりの秘書を用意しろ。……もちろん、極上の『女性』な」

 神崎は苦々しい顔で数秒沈黙したが、やがて短く「……了承した」と吐き捨てた。

「だが、秘書の『同意なし』で、おかしな真似をしてみろ。その時は、国家の総力を挙げて貴様を殺すからな」

「もちろんですよ。僕は紳士ですから」

 俺はひらひらと手を振り、局長室を後にした。

 ***

 クロノスが去った後の局長室。

「……どうするおつもりですか、局長」

 村上が、重苦しい沈黙を破って尋ねた。

「どうもこうも出来ないですよ、村上さん」

 神崎は、疲労困憊した様子で革張りの椅子に深く沈み込んだ。

「現役の頃の、無敵だったあなたですら、彼には全く歯が立たない。……なぜ、あんな怪物がこの世に生まれたのか、私には理解できない」

 神崎は立ち上がり、ブラインドの隙間から東都の街を見下ろした。

「……佳奈をあんな目に遭わせたこと、絶対に許しはしない。だが、今は奴のあの異常な力を、国のために利用するしか道はないんです」

 ***

 数日後。俺のスマートフォンに、見知らぬ番号から着信があった。

『……君専用のコンピュータールームが完成した。今日から来てくれ』

 神崎からの電話だった。

 放課後。俺は再びクロノスの姿になり、国家情報省の本部へと向かった。

 案内されたのは、地下深くにある厳重なセキュリティで守られた一室。そしてそこには、約束通り一人の「美人秘書」が待機していた。タイトスカートのスーツを着こなす、切れ長の目が知的なクールビューティーだ。

「業務内容を説明する」

 神崎が忌々しそうにモニターを指差した。

「ターゲットは、現在内乱が続いている『大星たいせい』のシステムだ。最近、大星の諜報部のりゅうという男が、強力なハッキングシステムを用いて敵対勢力を次々と駆逐している。大星が今、統一されてしまっては、我が瑞穂としては非常に困るのだ」

(なるほどねぇ。他国の内乱を長引かせて、甘い汁を吸おうってわけか)

 俺は神崎の説明を右から左へ聞き流しながら、視線はずっと、部屋の隅で直立不動の姿勢をとっている美人秘書へと向けられていた。

「クロノス。貴様、言ったとおり、無理やり秘書に何かすれば、貴様をこの世界から必ず消してやるからな」

 俺の視線に気づいた神崎が、憎悪を込めて釘を刺し、コンピュータールームから出て行った。

 密室に残された俺と、秘書。

 俺はゆっくりとパソコンの前に座ると、部屋の四隅に設置されている超小型の監視カメラに向かって、順番にひらひらと手を振ってみせた。

 別室でモニターを見ている神崎は、俺が隠しカメラの位置を全部分かっていることに気づき、今頃青ざめていることだろう。

「……いい名前だね。君は?」

「……赤城あかぎ、と申します」

 冷たく事務的な声。彼女の立ち姿からして、ただの秘書ではない。国家情報省が選び抜いた、特殊訓練を受けたエリートスパイだろう。ハニートラップへの耐性も完璧に仕込まれているはずだ。

「そうか。赤城」

 俺は椅子を回転させ、彼女を正面から見据えた。

 そして――カンストした【魅了・フェロモン】と【支配の威圧】を、逃げ場のない密室で、彼女一人に向けて限界まで叩きつけた。

「っ……!?」

 赤城のクールな仮面が、一瞬にしてひび割れた。

 国家への忠誠も、スパイとしての鉄の規律も、神にも等しい「雄の毒」の前では文字通り秒で溶け落ちる。彼女の白かった頬が一気に朱に染まり、タイトスカートの下の膝がガクガクと震え始めた。

「俺のことを愛してよ。……俺に、奉仕しろ」

「あ、あぁ……っ。はい……喜んで、ご主人様……っ」

 洗練されたエリートスパイは、俺の言葉一つで、完全に理性を手放した。

 彼女は自ら進んで俺の足元にひざまずき、震える手で俺の衣服を解き始めた。その瞳は完全に熱に浮かされ、絶対的な支配者への崇拝と情欲だけで塗りつぶされていた。

『なっ……!? 貴様、何をしている!! 赤城、離れろ!!』

 部屋のスピーカーから、別室で監視している神崎の怒声が響き渡った。

 だが、赤城は俺の最奥を恭しく取り出すと、神崎の焦燥など聞こえないかのように、うっとりとした表情で俺を見上げた。

「クロノス様は……私の、ご主人様です……っ」

 スピーカー越しの神崎にも聞こえるほどの、甘く、酷く官能的な声。彼女はそのまま、自らの赤い唇で、俺の猛りを深く、熱心に咥え込んだ。

「んっ、ちゅ……れろっ、じゅる……」

 静かなコンピュータールームに、秘書が熱心に奉仕する卑猥な水音だけが響き渡る。

「……おい、局長殿。見ての通り、俺から無理やり手を出したわけじゃないぜ?」

 俺はカメラに向かって冷笑しながら、彼女の奉仕を悠然と受け入れた。

 十分な前戯の後、俺は彼女をデスクの上に仰向けに押し倒した。

 彼女は自ら下着を引きずり下ろし、完全に濡れそぼった秘部を無防備に晒して、俺を迎え入れた。

「ひぎぃっ……!? あ、あぁぁぁっ!!」

 俺が最奥まで一気に突き入れると、赤城の身体が激しく跳ねた。エリートとしての誇りを完全に粉砕する、圧倒的な快楽と支配の結合。俺が腰を打ち付けるたびに、彼女はよだれを垂らし、スピーカーの向こうにいる上司の存在など忘れ去ったように、あられもない嬌声を上げ続けた。

「あぁっ! ご主人様っ、ご主人様の……もっと、もっと奥までぇっ!!」

 激しいピストンの末、俺は彼女の最奥に熱い白濁を叩き込んだ。

 彼女は白目を剥いて絶頂に達し、ビクビクと痙攣しながらデスクの上に崩れ落ちた。

 だが、俺の「業務」はまだ終わらない。

「……綺麗にしろ」

 俺が命じると、彼女は朦朧とした意識のまま這いつくばり、俺の猛りにこびりついた自らの愛液と汚れを、恭しく、そして熱狂的に舌で舐めとって清め始めた。

「んちゅ、れろ……ご主人様、おいしいですぅ……っ」

 そして、俺は完全に骨抜きにされた彼女をうつ伏せにさせ、その豊かな双丘を乱暴に割り開いた。

 狙うのは、本来ならば決して他者を受け入れることのない、禁断の未開の蕾――背徳の裏の孔だ。

「あ、だめ……そっちは……っ、ひぎぃっ!!?」

 俺の容赦ない侵入に、赤城はこれまでにない甲高い悲鳴を上げた。

 強烈な締め付けと、それを力任せに蹂躙していく圧倒的な背徳感。限界を超えた刺激に、彼女の脳髄は完全に焼き切れ、よだれと涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、狂ったように腰を振り、絶え間ない絶頂の波に飲まれていった。

 ***

 別室のモニターの前で、神崎はただただ呆然としていた。

 特殊訓練を受けた我が国の最高レベルの工作員が、何の物理的な強制力も用いず、たった数言の言葉だけで完全に陥落させられ、あそこまで淫らな牝犬に成り下がるなど……信じられるはずがなかった。

 狂乱の宴が終わり、俺が衣服を整え終わると、スピーカーから神崎の掠れた声が響いた。

『……クロノス君。仕事は、したのかね?』

「……監視カメラから、見えてるでしょ」

 俺は、彼女を蹂躙していたデスクの横にある、PCモニターを指差した。

 そこには、大星のハッキングシステムの最深部――すでにすべてのプロテクトが解除され、完全にアクセスが完了した画面が表示されていた。

『なっ……!?』

 神崎は絶句した。

 俺が赤城を蹂躙し始める前、ほんの数十秒だけキーボードに触れていた、あの短時間で。国家の総力を挙げても突破できなかった他国の最高機密システムを、完全に手中に収めていたのだ。

「ま、期限はあと六日あるんで。今日はここまでにしますわ」

 俺は、床で幸せそうに気を失っている赤城を一瞥もせず、扉に向かって歩き出した。

「お疲れさまっす」

 俺は、完全に思考停止した国家の重鎮たちを置いて、悠然とコンピュータールームを後にした。

 退屈な中学生の、時給計算すら不可能な狂ったアルバイトは、まだ始まったばかりだった。

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