第8話 職人
「さて! じゃあクラちゃん行くよ! ブラックストリートに!」
「はい! そういえば前に場所を転々としてるって言ってましたけどわかるんですか?」
「それなら問題ないっす! 市場の場所はその市場長的な人が決めてるんすけど、その人がみんなにその情報が行き届くようにこのギルドに来て場所をボードに書いてくれるっす!」
「じゃあこのギルドはみんなの情報源でもあるってことですね」
「そういうことっす!」
「ていうかなんであんたがここにいるんだい! ゾラ―ト」
「いちゃ駄目っすか!?」
「そういうわけじゃないけど……」
「もしかしてクラ兄貴と二人がよかったんすかぁ~? いやらしい女っすねぇ~」
「そんなんじゃないよ!」
僕が今回探してるのは立体顕微鏡だ。
でもその道具は正直学校とかに行かないと知らないレベルだし本当にここに売っているのだろうか?
「クラ兄貴もそう思いますっすよね?」
「え? あ、うん?」
「ひどいよあんたら……」
そんなこんな話し込みながら歩いていると、少しにぎやかな路地裏を見つける。
「もしかしてここが?」
「そうっす! ここがブラックストリートっす!」
もう年単位で洗っていなさそうに見える古い服を着た幼い子から、年寄りの人まで様々な人が視界に入る。
その瞬間、こんなにもたくさんの人が社会から踏み出しているという新たな実感を得た。
「みんな匂いには気を付けてね」
「はい!」
感動しているのもつかの間。
多大な異臭が鼻を襲う。
まるで鼻の中を針で刺されているようだ。
「まあいつか慣れるっす!」
正直いつかじゃ困るんだ!
「ノーズスタン!」
耐えられなかった僕は、自らの魔法で嗅覚をシャットダウンさせる。
「どうしていきなりそんなスンとした顔になれるんすか? さっきまですっぱいものを口に入れた赤ちゃんみたいな顔してたのに」
「う~ん……慣れかな?」
「そうっすか」
もう慣れてるなら魔法かける魔力を温存した方がためだ。
ごめんなさいゾラ―トさん!
「おお! 今日も来たんかいなネリッサ」
「まあねぇ~サラクおじさん」
「あの人は?」
「サラクおじさんって言ってさっき紹介した長みたいな人っす」
「おお、そこの若いの! 名前は?」
「クラークです。クラーク・スイリア」
「いい名前じゃな! 気に入った! おぬしは何を買いに来のじゃ?」
「研究道具です。今スライム関係で研究してて、それで何か良いのないかなと」
「なるほど。じゃあカイトに会いに行きなさい。絶対にとはいえんが何かいいのが見つかるかもしれぬ」
「分かりました。行ってみます。ありがとうございました!」
「頑張るんじゃぞ~」
いいおじさんだったな。
「実はあの人前代のギルド長だったらしいっすよ」
「え!? そうなんだ」
老体の影響だったと思うけど、あの筋肉の締まり方から戦闘してたとは思えないけど……
「じゃあ、あたしゃちょっと見たいものあるから外れるねぇ~!」
「お、おらもっす! その一番奥にいるんで!!」
二人はどこか冷や汗をかきながら逃げるように去っていったように見えた。
「どうしたんだろあの二人……まあとりあえず言われた通り行ってみよう」
二人の様子の理由を考えながら、僕は指示された場所に向かった。
「あの、あなたがカイトさんであってます?」
「誰あんた? まあそうだよ。俺がカイト・キャサリー。で何なの? 客?」
二人の逃げた意味がなんとなく分かった気がする。この人、人を物のように見てる……
「そうですけど……」
「だったらさっさと見て買って帰ってくんない?」
「そうですね」
この人やりずらい……さっさと見て帰ろう。
床のじゅうたんに並べられているのを見ると、たくさんの工具が溢れていた。
木を加工したりするものから、時計、測量機器など。
そして感動し直感する。「欲しいものはなかったけど、この器用さを持ち合わせる人なら作れるのかもしれない」と。
「何この金貨?」
「オーダーメイドがしたいです」
「オーダーメイド? 物によるけど俺に作らせるってことはこの金額じゃ足りないよ」
「じゃあこれで足りますか?」
「金貨三枚!? 確かに足りないとは言ったけど、こんな出すとは……」
「僕あなたの腕に惚れました! なのでその価値があると思ったから出したんです!」
「まあそういってくれるのは……とりあえずどんな内容かに寄るから何を作ってほしいか提示してくれ」
オーダーメイドも予測していたため、あらかじめ用意していた教科書の絵を見せる。
「仕組みと絵はこんな感じです。できますか?」
「おお! これはすごい!! ちょっと良く見せてくれ!!」
何かインスピレーションを受けてのか、さっきとは打って変わって職人顔になり夢中で没頭し、何か紙にメモをし始めた。
「とりあえずわかった。金貨1枚でやっぱりいい。想像力を出させてくれたお礼だ。でもその代わり素材を集めてきてくれ」
そういいながらメモを僕に渡す。
その内容はとても細かいものだった。
どこに素材があるか、その近くの危険物など様々。
「あ、ありがとうございます!」
「いやこっちのセリフだ。また集まったら来てくれ!」
メモの中身を深く読み進めながら歩いていく。
でも最初の印象と打って変わってたな。多分皆最初のカイトさん見て苦手だと思ったんだろうな。




