第7話 逸材
「おお! こりゃすげぇ! こんなに跡を残らずに仕留めるなんてどうやったらできるんだ!?」
「これほんとに凄いっすよね! 兄貴!」
「まあとりあえず報酬渡さないとな! ほら! これがクラ坊の最初の給料だなぁ~! よくやった!!」
「あ、ありがとうございます!」
「おめでとうっす!!」
「でも金貨三枚なんて多くないですか?」
「い~や、それが普通だぜぇ。前も言ったが、このギルドは初心者からすでに強すぎる魔物を当てられる」
「上もそんなに俺らに期待してねぇから、ほかのギルドと同じ額で依頼を振ってくるんだが予想以上に俺らが強くてな!」
「でも、もう最初の額で提示しちまって引き返すこともできねぇからずっと額は変わらないまま」
「それどころか難易度高い魔物依頼が増えやがった。きっとすぐ死んでほしいんだろうなぁ~がはは! まあ俺らはそんなやわじゃねぇぜってな!」
「おうよ兄貴! その通りでっせ!!」
「まあその影響でうちのギルドに入会する奴は4分の3は死んじまうんだがな。それでちょっと心配してたんだが、まあでもクラ坊も強かったしな!!」
まあそりゃそうか。
高収入ではたしかにある。
でもそれと同時に死と隣り合わせってことだな。
「そういえば今在籍数って何人ですか?」
「5人だぜ」
「5人……」
前は少なくとも7人はいたはずなのに……考えないでおこう。
「さて、くれぇ話もなんだし宴しようぜ!!」
「おうっす!!」
「あの、お酒まだ飲めないんですが……」
「分かってるってぇい! クラ坊はいるだけでいいんだぜ!」
「そうっす!」
「じゃあ失礼して」
トーマスとゾラ―トはそれぞれ酒を突き出し乾杯した。
もしかするとこうやって毎日酒を交わすのは、いつ死んでもいいように、死を紛らわすために。
そういう思いもあるのかもしれないと、ふと思った。
♢♢♢
「おうおう! お前さんたちやってんねぇ~!」
「お! ネリッサお帰り! お前もやるか?」
「やるやる!」
「ていうか聞いてくださいっす姉さん! 今日クラ兄貴と魔物討伐に行ったら脳天を水で貫いたんすよ! すごくないっすか?」
「そりゃ凄いね! というかもう初仕事終えたのかい? お金は何に使うんだい?」
「それは研究道具を買いに行きたくて。でも昼間は外出たくないし夜もなかなかそういう店なさそうだなって困ってるんですよ」
「なるほどねぇ~。じゃあブラックストリート行ってみるかい?」
「ブラックストリート?」
「ブラックストリートっていうのは簡単に言うと、おら達みたいな普通に働けないような人たちが自分の特技を自由に売ってる市場の事っす」
「そうそう! ならず者達が必ずしもここで働くってわけじゃないんだよ。戦闘もできない奴らだっているし」
「でもそういう奴らはこの南セルゾアの近くで場所を転々としながら24時間自分のできそうなことをお金にしてるってわけさ。まあそれも大したお金じゃないけどね」
「南セルゾアなのはこのギルドのおかげで国も少し近寄りがたいからってことですか?」
「そうっす!」
「そこなら思いもよらない凄いもんたくさん売ってるし、もしかしたらお望みのものがあるかもしれないからね! どうだい? 行ってみない?」
「もうそこしかないのでぜひお願いします!!」
「というかそろそろ時間的にも帰らないと。ではもう行きますね。今日もありがとうございました!」
「おう! またなぁ~」
クラークが帰ったのを確認すると、ゾラ―トが真剣なまなざしで話し始める。
「さっき水の魔法の話したじゃないっすか。おら、それよりももっと重大なクラ兄貴の話をしなきゃいけないっす」
酒を飲み酔っ払いながら話しているはずなのに、真剣さに誰もが黙って聞き始めた。
「レッドボアを討伐する時周りに普通のボアもいたのでおらがその小さいやつらの囮になったんすよ。兄貴がおらにレッドボアと1対1で戦わせてくれと頼まれたので」
「それでどうやってレッドボアを引き付けるかは聞かなかったんすけど、とりあえず茂みから出たんす」
「その瞬間でしたっす。後ろから多大な魔力を感じましたっす。それはもう魔族並みでしたっす。近くにいるだけで死を悟りましたっす。全身一つ一つの細胞が沸騰するような感覚が襲いましたっす」
「そしていつの間にか、おらは囮というよりその魔力から逃げるのに勝手に目的が置き換わっていたっす。最初はもちろんそのレッドボアのほうがレア種でそうなのかなと思いおましたっす。でもあの魔法を見たらだれでも気づくっす」
「クラ兄貴は千年に一度生まれるかどうかの逸材っす」
「そ、そうか。まあでもあれとりあえずあれじゃないか? そうやってクラ坊をバケモノ扱いしちまうと、あっちも嫌だと思うしとりあえず、今まで接せるよう努力しようぜぇ!」
「確かに力を持ってても同じ一人の人間さ! それこそ、そんな扱いしたら上のやつらと同じになっちまうしな!」
「それもそうっすね!」
だが、まじかで見ていたゾラ―トは思った。そういう風に自己洗脳しても結局もう知ってしまったのだからそう思い込むことはできないのではないか? と。




