第6話 初仕事
螺旋階段は思ったより深い。
もう4階分ほど下っている気がする。
階段や床は基本石レンガで、できていて、とてもシンプルな構造だ。
「この階段の先ってどうなってるんですか?」
「この先っすか? 降りたらちょっと真っすぐ歩いてまた階段上るっす」
この高低差をまた上るのか……
「そういえば討伐しに行く前にお互い何ができるのか確認しておきたいっす!」
「たしかにそうだね。連携とかもしやすいだろうし」
「じゃあまずはおらから! おらは盗賊っす! 俊敏な動きとこの双剣の扱いには相当自信あるっす」
黒マントの内側に隠してある剣を見せびらかしながら語る。
それと同時にマントの内部に煙幕や小道具もたくさんあるように見える。
「ちなみにその煙幕らしきものとかも使うの?」
「お! お目が高いっすね! ほんとは実戦でお披露目してびっくりさせたかったんですけどそうっす! ちなみにこれ自作なんすよぉ~すごくないっすか?」
「普通に凄い……」
でも実戦で初お披露目って確認するために聞いたのに目的に反してるからだめじゃない? まあ聞けたからよかったけど。
「それでクラ兄貴は何ができるんすか?」
「僕は魔法だよ」
「でも魔法使いって基本杖持ってないっすか?」
「杖なんて慣れれば使わなくてもできるようになるし、ない方が僕は良いまで思ってるから持ち歩いてないんだよね」
「そうなんすか?」
「そうそう。杖って魔法打つとき一か所からしか発動しないように勝手に思い込んで魔法の解釈狭めるから嫌いなんだよね~」
「へぇ~。とにかくすごいってことはわかりましたっす! じゃあ、おらが前衛で引きつけながら、クラ兄貴が後衛で魔法打つって感じっすね!」
「そうなるね」
「楽しみっす! どんな魔法が見れるのか!」
「でもこのギルド魔法使い居ないの?」
「いないっすね。魔法学べる人生だったら基本ならず者集団やってないっすね……」
その瞳はどこか自分たちを卑下してるような、蔑むような冷たい目だった。
「でも同時に良かったっす! ならず者じゃなかったら兄貴たちに会えてませんから!!」
「あとクラ兄貴を悪く言いたいんじゃありませんっす! 兄貴だってきっといろんな大変な経験して今ここにいると思うし」
「とにかく魔法どうこうというより、みんなつらい経験をしてきた。だからみんなで支えあえる絆が強いんじゃないかなと、おらは思うっす!」
それはつたない言葉だった。でも伝えたいことはしっかり胸の奥に刺さった気がした。
「ありがとうゾラ―トさん。僕ここで頑張ってみようと思います!」
「違うっすよ! 頑張るじゃなくて楽しむっす!」
「はい!」
その一言で僕の緊張は何もなかったかのように消えていった。
♢♢♢
地上に出るとやはり空は綺麗で空気も澄んでおり、この静けさが好きなのだと再確認させられる。
「こっちっす!」
言われたとおりについて行くと、予想よりはるかに大きいレッドボアの姿と、その周りにうろつく普通のボアが群れていた。
レッドボア。
ボアの一種の進化系であり、体の一部を燃やし、体温を急上昇することによって、代謝をよくし、運動能力を飛躍させる。
その影響で、目を燃やし失明している。なので魔力を本能的に感じ取り天敵や獲物を判断している。
その能力を出すときにたくさんの燃焼元がいるためよく食べ、図体がでかい。
「最悪っすね。単体じゃないみたいっすね」
近くの茂みに隠れながら作戦を確認する。
「まず普通のボアじゃないやつらをどうにかしたいっす。それで──」
「あの、いい考えがあるですけど」
♢♢♢
茂みをが一気にゾラ―トが抜け出すと、それに引き寄せられるようにボアがたくさん吸い寄せられる。
だがレッドボアは見向きもしない。なぜなら
「そりゃ魔力で感知してたら魔力を見せびらかすのを見過ごすわけにはいかないよね。レッドボア君」
そう、ゾラ―トが茂みを抜け出す瞬間僕は魔力探知にひっからないようにしていた魔力を解き放ったのだ。
「さて、実験の時間だ!」
レッドボアは、強大な敵だということを本能的に悟っているせいか、足を震えさせる。
だが逃げようとはしない。
「なんで逃げないんだ?」
「もしや、あのボアたちは君の子供で逃がすために残ったっていうことか? もしくは──」
図鑑に書いてあったように、全身を燃やし、勢いよく地面をけり、ものすごいスピードで突進してくる。
考え事をしていた僕は反応できずそのまま突き飛ばされてしまう。
「いてて。考えてる時に攻撃はやめてよ」
吹っ飛ばされた方向にある木に当たる瞬間、高出力の空気を勢いの向きと反対に発射し、衝撃をいなす。
「ウィンドジェットって、いやぁ、飛び越えた魔法に名前を付けたけどネーミングセンスの天才か?」
「さてと、こんな強大な魔力見せびらかしたら、もっと強い魔物とか誰かに気づかれちゃうかもしれないし、一瞬で蹴りつけさせてもらうよ。ウォーターレーザー!」
手の人差し指を勢いよく相手に向けると、水の粒子が集まっていき、圧縮されていく。限界まで圧力をため解き放った水の槍は一瞬でボアの脳天を貫く。
空にかかり、月の光で照らされる水は、まるで夜空にきらめく流れ星のようだった。
体の制御をなくしたレッドボアは膝から崩れ落ちていった。
「さぁ~て、なんか得られる実験要素はあるかなぁ~。あ! よく考えれば体のどこを燃やしたかの比率とか書かれてないよな! なんかヒントになるかも! さてお持ちかえ――」
「お持ち帰りは駄目っすよ! これは商品なんすから」
「そうだった……」
「また一人でとりに来てくださいっす。ていうか何なんですか今の! あんな凄い魔法見たことないっすよ!」
「まあ教科書には載ってないからね」
「すごいっす! 後で詳しく話聞かせてっす!」
それから初仕事を終えた達成感と新たな疑問を手に入れた好奇心を持ちながらゆっくり歩いて帰った。




