第5話 勇者
sideキルラ・アルケリー
セルゾア王国ザクラトス宮殿。
歴史ある建造物で、今は国王カリサ・ザクラトスの住まいでもある。
大理石の壁にはたくさんの有名な絵画が飾られており、あたりを見渡すだけで我が家系、アルケリー家との差を見せつけられているような嫌な気分になった。
「もうそんな険しい顔しないでよキルラ! ここで失礼したらアルケリー家でさえ首ちょんぱだよ!」
「そうだなミサリザ」
目の前で首に手を当てて警告してくる長い緑髪と薄ピンクの目を持つチビはミザリザ・ゴルドー。
賢者と聖者の二つを総撮りした天才だ。
だが勇者である俺には到底及ばないがな!
「そろそろ国王もおいでになられると思うし静かにしてようぜ」
「カマガラの言うとおりだな静かにしろミサリザ」
「なんで私!?」
多分注意しながらなんか変態的なことを考えてる青髪に黄色い目の長身すぎるこいつはカマガラ・サリー。
聖騎士で俺の次にできるやつだ。
そして俺、キルラ・アルケリー。
アルケリー家一番の出世頭で千年に一度の逸材!
すべてを網羅し何でもできる天才勇者!
これで良いんだ! 三大貴族みんなで勇者パーティなんだ! あんな出来損ないなんて中退で……
「おお、良く集まっとってくれた。46代勇者パーティ達よ」
カリサ国王が王座に君臨する瞬間、皆が一斉に膝をつく。
すごい存在感だ。これが王の器! いつか俺も。
「それで今日はどのようなご用件で?」
「そうじゃな。手早く済ませよう」
「最近以前に比べより魔物が活発化してきてるのは知っておるな?」
「はい。魔王が本格的に動き出した影響と噂を耳にしております」
「まあまだ推測段階ではあるがその通りじゃ」
「話を戻すぞ。その影響でこの国の近くにたくさん住んで居るゴブリンの数が何やら膨れ上がったらしいのじゃ。たしか100匹くらいから今段階で──」
「500匹ですよね?」
「そうじゃ。良く調べておるな。それでこのままだと1月後にはもしかしたらスタンピードが発生すると言われててな。その原因究明と討伐をお願いしたいのじゃ。日程はまた後日連絡する」
「仰せのままに」
これは出世チャンスだぞ! なりたてでこんな雑魚を狩るだけの仕事なんて最高すぎる!
「念のため通信デバイスを──」
「いえ、その心配はいりません。僕らは強いし、何よりたかがゴブリンなんて余裕ですよ」
「キルラ何言ってるの!? さすがにもらった方がいいって!」
「黙れ!! 賢者や聖者ごときが勇者に盾をつくな! 場をわきまえろ」
「まあわかった。キルラを信じてみようではないか! まあ最低でも何人か騎士はつけさせてもらうがな」
「それでお願いします」
これで成し遂げたら大勇者コース間違いなしだな! 今から楽しみだぜぇ
sideスイリア・クラーク
「昨日はトーマスさんがいたから入れたけどやっぱりこのギルド入りにくいよ」
よし、5秒ルールで行こう! 5・4・3・2・1! ゴー!!
心の宣言通りに扉をゆっくり開けると勢いよく声が耳に届いてくる。
「クラ坊!! よく来たな!!」
その言葉は僕の居場所を作ってくれたみたいで、とても心が温まった気がした。
「まぁ~たドアで独り言つぶやいて入ってこなかったらと考えてひやひやしてたぜ!」
「あはは……」
事実なんですけどね…
「そういえば今日皆さんは?」
「今日みんな忙しいんだよ! 俺はギルド長だからなかなか出られないしなぁ~」
「そうですか……」
「それで今日は初仕事だったな!」
「はい!」
初仕事というワードに胸が高鳴るのと同時に緊張が波のように押し寄せてくる。
「まず初めだからなぁ~。そうだこれにしよ! レッドボア!」
「普通の冒険者ギルドじゃこれが中級レベルの難易度なんですけどね~」
「まあうちはしゃーない! とりあえず初めてだから誰かつけたいんだが残ってる奴は……」
「おら行きます!」
「おお! ありがとなゾラ―ト!」
「いやいや、尊敬するお二方のためですって!」
気絶って尊敬されるようなことじゃないけどね。
「ありがとないつも! じゃああとはゾラ―ト、あとは任せた」
「了解っす!!」
「よろしくお願いしますゾラ―トさん!」
「よろしくっす! じゃあまずは外に出るっす! ついてきてくださいっす!」
そうしてついて行くとギルド兼酒場の休憩室に入る。
「ここって休憩室なんじゃ?」
「チッチッチ! 最初はおらも戸惑ったんですけど」
床にある普通は気づかないような隙間に指を引っ掛け勢いよく上にあげると、石でできた地下への階段が出てくる。
「おお! 力技ではありますがすごいですね!」
「すごいっすよね! おらも同じ反応しました! 少しここで待っててくださいっす!」
ゾラ―トは休憩室にある自分のロッカーから木の棒と着火する道具、それに自身の先頭道具のようなものを持ってきた。
どうやらたいまつにするようだ。
「さておりますっす!」
「はい!」
そうして暗い螺旋階段を一段一段緊張を押し殺すように進んでいった。




