第2話 スライム捕獲計画
23時30分、僕が起きる時間だ。
起きてからは、寝る時間の朝にはやりにくいことを基本する。
例えばお風呂、食事などなど。
なのでまずはお風呂場に向かおうとしていたのだが……
「あれ? 父さんと母さんがいない?」
僕はいつも両親が寝ているか確認しながら向かうのだが、うるさい父さんのいびきが聞こえない。いつもドタドタしてる母さんの寝相が悪い音が聞こえない。
この二つだけで僕にとっては異変なのだ。
それで勇気を出し寝室の扉を開けてみたものの、案の定もぬけの殻だった。
「夜11時に帰ってこないなんてほぼあり得ないぞ? 夜は凶暴な魔物の活動時間。その影響で壁の内側だからといってもなかなか外に出たがらないはずなのに……」
そう考えにふけっていると、玄関近くの方から足音が聞こえてくる。
まずい、いったん部屋に戻らないと……
「サイレントステップ」
足音を殺し、部屋の前の階段に戻っていく。
戻ったのと同時に玄関が勢いよく開く。
「いやぁ~今晩も大盛り上がりだったなぁ~!!」
「ちょっとあなた飲みすぎじゃない?」
「いいんだよ! 年に一回の祭りなんだからさ!!」
年に一回の祭り? まさか……
「いやぁ~でも予想通りでしたねぇ~。三大貴族、アルケリー家のキルラ君が勇者なら安心ですねぇ~」
キルラ……
「でもおらぁ見たかったよ! スイリアが勇者で表彰されるとこ……」
「やめてください……もう過ぎたこと考えても仕方ありませんし。とりあえず寝ましょ! ね!」
「それもそうだなぁ~。風呂は明日の朝入ればいいやぁ~」
「眠りにつくの早いんですから……あなたどんだけ重いか自覚してくださいよぉ~」
そのまま両親は一階の寝室へと入っていく。
「父さん……ごめん……」
後悔なのか、罪悪感なのか、はたまた別のなにかを握りしめ、部屋のドアを開けベッドに座り込む。
「勇者にはなりたくなかったけど、勇者としてみんなの前には立ちたかったよ父さん。誇りに思ってもらえるようになりたかったよ。この気持ちは嘘じゃなかったはずなんだよ……」
何の感情なのかわからない、溢れだす涙を必死に拭きながら僕は再び少しの寝りについていた。
♢♢♢
深夜1時、再び目を覚ますと、いつも通り下の寝室は騒がしい。
「とりあえずさっき入れなかったシャワーを浴びよう」
寝起きのさえない頭を掻きむしりながら浴室へ向かいシャワーを浴びる。
「それにしてもキルラが勇者か。じゃあ賢者や聖者とか誰になったんだろ?」
年に一度、セルゾア卒業生の卒業式が行われる。その中でのビックイベントに叙勲式も含まれている。
セルゾア学園の、学園生活で総合して成績のもっともよかった者を勇者。
魔法科目で最も成績のよかった者を賢者。
白魔法科で最も成績のよかった者を聖者。
剣術武術科で最も成績のよかった者を聖騎士。
それぞれ選ばれ叙勲する。
叙勲した後もいろいろパーティなどあって夜まで毎年祝うのが好例である。
「そういえばちゃんと叙勲式に行ったことないな。入学する前に誘われても断ってたし入学しても……これについては考えるのやめよ」
いろんなことを考えながら部屋に戻る。
その考え事の中で常に残り続けることが一つある。
「やっぱりスライム気になりすぎるな……」
昨日書いたメモを見ながらいろんな仮説を立てる。
「やっぱだめだ。仮説立てても調べなきゃこのもやはきっと残り続ける」
「いったん頭の中を整理してノートにまとめよう」
1,スライムの研究をするためにも外に行きたい。
2,外には誰か知り合いがいるかもしれないから行きづらい。
ちょい待てよ。知り合いがいるかもしれないから外に行きづらいなら簡単じゃないか?
ほとんど誰も出歩かない時間、夜に行けばいいんだ!
でも、ほとんどとはいえ誰かしらいるかもしれない。
いや、少人数なら魔法でカモフラージュすればきっと大丈夫だな。
それに夜だから気づかれにくいはずだし。
そうと決まればカモフラージュに使えそうな魔法を書き出していこう。
1つ目、ステルスステップ。足音を消す魔法。歩いた時に出る音の振動と反対の振動の魔法の粒子の波で干渉させ打ち消す魔法。
これは必須ではあるか。まあ人の耳で聴きとれる振動なんて限度があるから完璧までは消せないけど。
2つ目、ヘアチェンジ。髪色の偽装が可能。魔法の粒子で髪の色素を抜き、新たな色素を定着させる魔法。効果は次の髪が生えてくるまで。
3つ目、スキンチェンジ。顔の偽装が可能。新たな顔の仮面をとても薄くつくる魔法のためイメージ力が命。なので僕の場合は細かい偽装は不可。せいぜい老けた僕の顔か、ほかの顔を一瞬でみて作るくらい。
この三つを駆使して壁を越えスライムを探して確保するのがミッションだな。
決行日は明後日、0時から午前4時までだな。
計画を立て、少しの興奮を抑えながら使う魔法の練習をし、明後日までを過ごした。




