第11話 白魔法
リザードキングの動き出しはシンプルだった。
天井近くにいた僕にただこぶしが繰り出されるだけ。それだけだ。
しかし、巨体から繰り出されるその攻撃はまるで大岩のような存在感を放ち、僕はとっさに回避をしていた。
いとも簡単に天井を崩壊させた威力に本能は一撃でもあたってはいけないと警告音を出す。
「ていうか生きる文化遺産が!?」
落ちてくる瓦礫から存在していた文明を守るため、僕は風の防御壁を展開した。
「ドームの上にまたドームみたいな空間ができちゃったじゃん……どんだけ威力でかいんだ……とりあえず外へ出ようか!」
ウィンドジェットの最高出力で来た道を戻る。
後ろからは瓦礫の崩壊音と共に隕石でも落ちるかのような衝撃音が鳴り響く。
「どんだけの地団駄だよ!」
必死に地上へ抜け出すと1分もたたずに追いついてくる。
「邪魔な岩破壊しながら来てもそんな時間かからないなんてどんな走力してるんだ……」
お互い顔を見合わせると動きだしは相手の方が早かった。再び眼前に拳が迫る。だが
「その行動は見た! ウィンドカッター!」
タイミングに合わせ、空気の刃を放つ。
その刃は確かに巨拳を上下に切り裂いた。
しかし、一瞬のうちに腕はくっつき何事もなかったかのように振りぬいて見せた。
とっさに空気の障壁を重ね構えたが、いとも簡単に壊し、投げられたボールのように僕は1km先の木に吹き飛ばされる。
「ぐは……!! あんな再生能力があったなんて……反応できず空気の障壁とウィンドオーラまとってなかったら死んでたぞ。あれ? なにこれ?」
額からぽたぽたと滴り落ちる赤い液体。
相当な衝撃だったのか頭を切ったらしい。
「脳震盪はなさそうだな。不幸中の幸いだ。でも長続きはしない方がいいだろう。ヒール!」
瞬時にかさぶたが形成され出血が止まる。
あの腕の再生が厄介すぎる。というか普通再生能力ってあんな高いのか? 何かあそこまで早い要因が?
「グアー!!!」
「もう来たのか……とりあえず防御に専念しつつ弱点を探る!」
多分奴は単調な動きしかできないだろう。
もし複雑な動きができるなら真正面に2度も突っ込まないはずだ。
攻撃パターンは今のとこ一種。それを頭に入れながら対応しろ!
「グ!!」
再び真正面に走り、勢いよく飛びながら足を向けてくる。
今度は飛び蹴りか!
ウィンドオーラとウィンドジェットを組み合わせながら機動力を高め、攻撃筋を読み、垂直方向に避ける。
「いまだ! ウィンドカッター!!」
横向きからの攻撃なら切り落とせるはず!
読み通り左足の膝から下を失ったリザードキングは一度地面に尻をつく。
そして再び足を再生しなおした。
切断面に奴のマナが集まり修復をしていく。
「さっきはまだつながってる部分があるから繋ぎとめるだけだが今回はちゃんと切り落としたから時間もよりかかっているのね……それにマナが集まってる……」
魔法で修復しているのか? それに今の動作白魔法に似ていたってことは!
数十秒かけて足を直したキングは再び攻撃準備をする。
左足を出し右腕を後ろに下げる。奴の拳の予備動作だ。
「次で終わらす!」
振り下ろされる拳に習慣ついた動作のように右へかわし再び放たれる風の刃物が奴の胴体と頭の接続を切断した。
キングは電池が抜かれたロボットのように崩れ落ちた。
「やっぱりか……」
リザードマンの元来の生物はイモリかトカゲかの二極化で割れていたが今日ではっきりした。
イモリだ。
奴はもともとの再生能力に上乗せして魔法で細胞の成長速度を加速させることによりあの瞬時の再生能力を実現していたということだ。
つまりマナなどを貯蔵する機関である脳との切断を果たせば再生にも時間がかかるし首自体急所だから倒せる。
でも細胞の成長速度を加速させる魔法なんてまるで白魔法じゃないか……
とりあえず今日は家に戻ろう。
治癒したとは言え頭を怪我したんだ。念には念をだ。
♢♢♢
「こんばんは~」
「おお! クラ坊! なあこの新聞見ろよ!」
「魔獣と魔獣の戦い。伝説のリザードキング発見!?」
「なんか昨晩めちゃ外うるさかっただろ? なんかそれは魔獣と魔獣がやりあった結果なんじゃないかって今盛り上がってんだよ。昨日の魔素計測は平均時より少し高かったらしいしな」
「そ、そうですか、あはは……ちょっと用事あるんでさいなら!!」
「おいクラ坊!! 世話の焼けるやつだぜ」
ちょっと昨日は確かに魔法使いすぎたし切り落とすとき威力上げるために平均より魔力込めたしな……まあ外野なんて関係ないか!
なんかそう思うと元気出てきた! よし張り切って気になること検証して魔晶石も回収しよ!




