エリサの父と母
東方の聖地、銀の森からさらに北へ行くと大陸を南北に横断している大山脈がある。
人の足では、越えられぬといわれており、この山脈のせいで南の地方の者は、北の人間の存在を知ることはなかった。
デュール谷は、この山の麓にあり精霊の多く生まれる場所としても有名であった。
エリサ、エリサーシャ・フレイドルは、13年前に学び舎の同級生だった父と母の間に生まれた一人娘だった。
ーーといっても、父は初めからロイル姓(SSSランクの魔法使いに与えられる姓)が確実と言われていた優等生で、母のアリシアはなんとか魔法使いコースに入れてもらった落ちこぼれであった。レフ(エリサの父)がふざけて言ったプロポーズを本気にして、卒業時にはロイル姓がもらえるほどの魔法使いになっていた。学び舎の伝説の人である。
そんな二人の間に生まれたエリサは、精霊に好かれる子であった。
まず、母アリシアの契約精霊の風の騎士がわざわざアリシアとの契約を切ってまで、エリサの祝福にまわった。そして、館裏の泉の主も守護にやってきた。
アリシアは、風の騎士を失ったことで、Aランクまで下げられたが文句はいわなかった。
逆に、娘の魔力好ましく思っていた。それで、自分の契約精霊だった風の騎士の頼みを聞いて、送り出したくらいだった。
だが、レフの家族は違う。できるだけ、エリサを何かから隠すように育てていた。