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第76話 大迷宮11 第3チームの捜索1

 ベースキャンプに戻ると、私たちを地下7階層へ送り出してくれた第1チームに加え、第2チームも戻っていた。


 どうやら第2チームにも重傷者が出たらしく、救護スペースが設けられていた。ウォルさんと、一見、元気そうに見えるが実は重傷を負っているカシューさんは、そこで安静にすることになった。


 光魔法を使えるのは私たち3人だけ。そのため、負担が偏らないように交代で治療を行うことになった。


 そのせいで、ウォルさんとカシューさんの回復状況を二人に把握されてしまい「治りが早すぎる」と突っ込まれてしまった。


 だが、あの場面で普通の治療をしていたら取り返しのつかないことになっていた。


 仕方なかったんだよなぁ……と心の中で言い訳しつつ、適当に誤魔化しておいた。


 少し落ち着いたところで、今回の戦利品の分配について話し合った。

 

 結果として、ローストサマーは「まともな働きをしていないうえに治療までしてもらっている」として受け取りを辞退。そのため、クラーレットの奇跡がすべてを引き取ることになった。


 さらに、ウォルさんとカシューさんが負傷し、メイン武具である大盾と大剣も壊れてしまったため、ローストサマーは今回の攻略期間中、地下7階層にはもう行かないと決めた。


 それどころか、ベースキャンプに戻っている他の2チームも、地下7階層の魔物の強さに加え、敵対してしまった神槍のフリゲートとの遭遇を恐れ、攻略をためらっている。


 ひとまず、第3チームが戻ってから今後の方針を決めることになった。



 それから二日後、ウォルさんたち重傷者もかなり回復し、万全とはいかないまでも、自力で地上に戻れるほどにはなっていた。


 一方で、第3チームがいまだに戻らず、不安が広がり始めていた。そのため、捜索隊を派遣しようという話が持ち上がった。


 やみくもにダンジョンを探しても見つけられる可能性は低い。しかし、チームリーダーが魔方位針を持っているため、それを頼りに探索できるだろうとのことだった。


 魔方位針は、以前私も道具屋で購入したことがある。ピンポン玉ほどの透明な球の中に方位を示す針が入っており、二つで一組。片方、あるいは両方に魔力を流すことで、互いの方向を指し示す仕組みだ。


 ベースキャンプに保管されていた第3チームの魔方位針の片割れを持ち出し、全体のリーダーであるアイザックさんが魔力を流してみる。


 ……反応がない。


 対になる魔方位針が壊れている可能性もあるが、ダンジョンは遮蔽物が多く、信号が届きにくい。加えて、周囲には雑多な魔力が満ちているため、妨害されやすいらしい。そのため、かなりの近距離でない限り、よほど強い魔力を込めないと反応しないとのことだった。


 その後、何人かが魔力を込めてみたが、やはり反応なし。


「ティアがやれば動くんじゃないか?」


 ムートが余計なことを言ってくれる。


「じゃあ、そっちへ渡してくれ」


 特別な力をできるだけ見せないようにしているのに、軽々しく振らないでほしい……

 でも、仕方がないか。


 だが、私の手に渡る前に、キュレネが魔力を込ると、魔方位針が動いた。


「おー!」


 歓声が上がる。


 ナイス、キュレネ!


 私が変な目で見られずに済んだ……助かった。


 その様子を見てムートもやりたくなったのか、キュレネから魔方位針を奪い、魔力を込めてみる。


「あっ、動いた」


 そう言いながら、私に渡してきた。


 いや、動いたならもういいでしょ。私がやる必要ないでしょ。

 ……そう言いたかったが、雰囲気的に文句を言いづらい。


 しょうがなく魔力を込める。


 当然、動く。


「嘘だろ……嬢ちゃんたち3人とも、俺たちより魔力が高いのか?」


 場が少しざわついた。



「私たちのパーティで第3チームの捜索をしてもいいでしょうか?」


 キュレネが提案する。


「今は第4チームとして活動できる状態でもないので」


 少し退屈そうな口ぶりだった。


 リーダーのアイザックさんが慎重な意見を返す。


「さすがに危険じゃないか? 地下7階層の魔物は強い。魔力が高いのは認めるが、それだけじゃ厳しいぞ」


 その言葉にカシューさんが反応する。


「こいつら、魔力が高いだけじゃない。おそらく、この攻略メンバーの中で最強だ」


「なんだと!?」


 驚きの声が上がり、場がざわつく。カシューさんはその反応を受けて、さらに話を続けた。


「キュレネ嬢とムート嬢は、あの神槍のフリゲートと互角に戦っていた。フリゲートと対峙して戻ってこれたのは、嬢ちゃんたちのおかげだ。この中で、フリゲートとまともにやり合えるやつが他にいるか?」


「まさか、神槍のフリゲートと互角? そんなことが……?」


「サブダンテストの最速記録も、まぐれじゃなかったってことか……」


 驚きの声が飛び交う中、誰かがぽつりと尋ねた。


「もう一人の黒髪の嬢ちゃんも強いのか?」


「ティアは俺たちの中で最強だ」


 ムートがさらっと余計なことを言う。


「嘘だろ……」

「マジかよ……」


 ざわめきとともに、驚いた顔が一斉にこちらを向いた。何か言い返そうとしたが、キュレネが間髪を入れずに口を開く。


「私たちの実力を理解していただけたと思うので、第3チームの捜索を許可してください」


「うーん……強いのはわかったが、経験が足りないんじゃないか?」


 アイザックさんが小さく呟く。新人だけで行かせるのが不安なのだろう。


「じゃあ、私のパーティが同行するわ。それなら問題ないでしょ?」


 そう提案してきたのは、第2チームのリーダーであり、このクランの幹部でもあるラウラさん。以前、サブダンテストの際にベースキャンプで世話になった人物だ。


「ああ、それならいいだろう。というか、ぜひそうしてくれ」



 こうして、第3チームの捜索に向かうメンバーを改めて確認した。

 ラウラさんのパーティ「ストロングツリー」は4人編成だ。


  • ラウラ(リーダー):槍使い。フリゲートをライバル視している。

  • エルヴィン:エルフの弓使い兼魔法使い。索敵が得意。

  • トーマス:魔剣士。

  • ジェームズ:魔法使い。


 一方、私たち「クラーレットの奇跡」のメンバーについて説明すると——


「全員、魔剣士&ヒーラーのオールラウンダーです」


 と紹介した途端、ラウラさんが呆れたように言った。


「オールラウンダーが3人って、どんなパーティよ。ちゃんと役割分担しないと、強い魔物と戦えないわよ?」


 どこかで聞いたようなセリフだ。だが、今回は軽く流すことにした。


 こうして、一行は地下7階層へと降り、第3チームの捜索を開始した。

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