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第73話 大迷宮8 地下7階層攻略1

 それから、3カ月間メインダンジョンに潜り続け、現在は地下6階層の探索をメインにしている。


 この間、他のクランメンバーとも良好な関係を築くとともに、私たちの実力も十分に認められたようだ。その甲斐もあり、今度の3カ月に1度のクラン主催の攻略会には、メンバーとして受け入れられた。ちなみに、前回の攻略会はクランに入ったばかりだったため、参加していない。


 今回の攻略会では、クランエフシー初の地下7階層の攻略が目的だということで、クランエフシーでメインダンジョンの攻略が認められているほぼ総戦力と言える8パーティ、約30人が参加する予定だ。


 実は、ディスカバリーや天空といった他国の大クランでも地下7階層を攻略中らしく、ようやく追いついたということで士気もかなり高まっている。ただし、両大クランはかなり前から地下7階層に挑んでおり、苦戦しているという情報もあるので、注意が必要だろう。


 1週間後にサブダンジョン地下5階のキャンプに集合とのこと。攻略に必要な結界付きテントや食料などはサポート部隊がキャンプに運んでくれるという話だった。


 早めに行って準備を整えるのも良し、ギリギリに行っても問題なしということで、私たちは2日前にキャンプに向かった。すでに半分ほどの人が到着しており、各々が武器の点検や荷物のチェックをしながら休憩していた。そして、出発前日には全員が揃った。


 クランエフシーのリーダー、アイザックさんが今回の攻略でもリーダーを務める。アイザックさんが前に立ち、これからの予定を確認した。


 メインダンジョン地下6階層までは全員で進み、地下7階層への階段付近でベースキャンプを設置する。道中は人数が多いため列を作り、その際、最も危険な最前列と最後尾にはベテランメンバーを配置。私たちのような新参者は列の中ほどで荷物持ちを務めることになった。


 その後、出発祝いと称して懇親会が開かれたが、それは結局、勝手に酒を飲む会となった。


 私たちがクランに所属してから、時々声をかけてくれていたカシューという親切なおじさんが、攻略用のベースキャンプセットと食料はかなり重いが大丈夫かと荷物持ちとなった私たちを心配してくれた 。キュレネが「身体強化ができるから問題ない」と伝えたが、カシューさんの反応は微妙だった。そこで証明すると言ってキュレネがカシューさんの大剣を借りると私が一番か弱そうに見えるから一発かまして、と大剣を渡してきた。


 私なの?と思いつつも、流されるまま大剣を受け取った。力を示せばいいだけだろうから、適当に振ってみることにした。柄の端を持って片手で一振り。


「ブオン」


 結構な音がして、周囲の注目を集めた。調子に乗って「ブオンブオン」と振り回してみる。体重が軽くバランスが取れないので、こっそり土魔法を使って自分の重量を増していたりもする。まあ、こんなものでいいだろうと思っていると、


「すげえな、嬢ちゃん」


 と声がかかり、周りの人たちが盛大な拍手を送ってくれた。


「いや、これ芸とかじゃないんだけど……」


 困惑していると、カシューさんがやってきて、私に返された剣を受け取って、同じように振り回し始めた。


「ブオン」


「どうだ?」


 自信満々な顔で私に言ってきたが、何がどうだかわからない。


「おお、いいぞーカシュー」


「嬢ちゃんに負けてんぞー」


 適当なヤジが飛んできた。もしかして、酔っぱらって私に対抗意識を燃やしているのか?面倒なので負けを認めておくことにした。


「すごいです、さすがです」


「そうだろ、これ俺の愛剣だからな」


 満足げな顔でそう言われた。自分の愛剣を上手に使えるところを見せたかったのだろうか。荷物持ちが平気だという話だったのに、何だか訳の分からない感じになってしまった。


「お疲れ様」


 とキュレネがねぎらってくれた。うやむやになった感じもしたが、まあいいか。最初から割とどうでもいい話だったし。


 その後、私たちは早めに引き上げた。明日からの攻略に向けて、他の人たちもそれほど遅くならないうちにお開きにしたようだった。


 翌日、予定通り出発した。



 先頭は、なんとあのカシューさんのパーティだった。私たちは列の中ほどにいて、護衛されているようで安心感があった。ちなみに、リーダーのアイザックさんは私たちの前にいた。前後に指示を出せるようにとのことだった。


 地下6階層から地下7階層への階段付近まで、多少魔物との戦闘はあったものの、順調に進んだ。唯一、苦戦したのは地下6階層で遭遇した牛頭人身の魔物、ミノタウロスだった。


 身長2mを超える筋肉質な体、茶色の体毛を持つ、かなりパワーのある魔物だ。Bランクに分類されているが、その中でも上位の強さを誇るそうだ。


 階段近くの広間に到着後、すぐにベースキャンプを設置した。以前ソノリオでダンジョンを探索した際に設置したものと同じ、結界柱で囲み魔石をセットすることで内部を結界で守る仕組みだ。ただし、ダンジョン内には結界柱を突き刺すことができないため、床から天井まで突っ張り棒のように伸ばして固定する形になっている。また、今回の結界はAランクの魔物が来ても、しばらくは耐えられる性能があるとのことだった。


 ベースキャンプは広く、出入口に大きな共同スペースがあり、その周りにパーティごとの簡単な仕切りが設けられていた。今日は共同スペースで食事をとった後、すぐに解散し、それぞれ割り当てられた場所で休むことになった。


 そして、地下7階層攻略初日。


 参加している8パーティは4チームに分かれて地下7階層を攻略することになっていた。


 4チームを作るのだが、必ず1チームはキャンプに残ることが決まっている。キャンプに残ったチームは、他のチームが戻ってきた際に入れ替わりで攻略に出ることができるというルールだった。


 私たちは第4チームとなり、カシューさんのパーティと組むことになった。攻略チーム全体で先鋒を任されるパーティと、私たちのような初参加のパーティを組ませてくれるとは、ありがたいことだ。


 私たち第4チームは最初の居残りチームとなった。


 まずはチームメンバーの確認をした。


 カシューさんのパーティは「ローストサマー」という名前だ。


 メンバーは以下の通りだ。

• リーダーのカシューさん:大剣使いのアラフォー男性、身長2m近くの大男。

• ウォルさん:大盾使いのアラサー男性、カシューさんより一回り大きい巨漢。

• ヘーゼルさん:魔法使いのアラサー女性、身長はキュレネたちと同じくらい。

• アーモンさん:魔剣士の年齢不詳の男性、遊撃担当のオールラウンダー。このパーティの中では背が低いが、それでも180cmほどある。


 皆、背が高くて体格も良い。やはり、高ランクの冒険者になるには、体格も重要な素質なのだろうなと思う。


 私たち「クラーレットの奇跡」のメンバー紹介では、皆が魔剣士&ヒーラーのオールラウンダーだと説明している。実際には光神官でもあるのだが、光神官制度について知っている人は少ないため、普通の神官と勘違いされないよう、冒険者として活動する際にはヒーラーとしての役割にしている。


「おいおい、オールラウンダーが3人って、どんなパーティだよ。ちゃんと役割分担しないと、強い魔物と戦えないぞ」


 そうかな?別に不都合を感じたことはなかったけど…。


 キュレネたちはどう思ってるんだろう。


 そう思ってキュレネの方を見た。すると、彼女は小声で答えてくれた。


「私とムートは小さいころから一緒に訓練しているから、状況に合わせて色々なパターンで連携できるの。初めから役割を決めて動くより、ずっと効率的なのよね」


 なるほど、もっと高度な連携をしているってことか。


「でも、私はうまく連携できないかも」


「ティアの場合、Aランクの魔物でも瞬殺しちゃうぐらいだから、役割分担も何もないわ」


 やっぱりそうだよね。まあ、カシューさんも強い魔物との戦いの話をしているから、戦う相手が弱ければ役割分担なんていらないってことだろう。


 でも、そんなことは言えないよね…。と考えているうちに、話が進んだ。


「それでは、今度戦い方を見せてください、参考にします」


 おー、さすがキュレネ、無難な返しをするな。



「多分、どこかのチームがすぐ戻ってくるから、すぐに地下7階に行けると思う。そしたら、好きなだけ参考にしてくれ。お前たちのような若い冒険者を育てるのも俺たちの仕事だからな」


「ありがとうございます。他のチームがすぐ戻ってくるのですか?」


「ああ、攻略の初日は軽く回っておおよその状況を把握するのが普通だからな」


 そんな感じの話をした後、自分たちの区画で休んでいると、しばらくしてどこかのチームが帰ってきたような音がした。


 私たち3人は共同スペースに出ていくと、第1チームが戻ってきていた。とりあえず、飲み物を配り声をかける。


「お疲れ様、地下7階層はどんな感じでしたか?」


「いやー、まだまだ周辺を軽く回っただけだから、何とも言えないんだが、どういうわけか魔物が強いんだよ」


 ???


「強い魔物がいたってことですか?」


「いや、上層階にもいる魔物が、地下7階層ではやけに強い気がするんだ。お前らも気をつけろよ」


「はい、ありがとうございます」


 たまたま強い個体がいたという感じなのかしら?


 話に一区切りがついた時、カシューさんたちも出てきて、


「よし、俺たちも行くぞ」


 と私たちに声をかけた後、第1チームに向かって声をかける。


「留守番よろしくな」


「おー」

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