表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/138

第43話 ネコ探し9 魔法の威力と大ピンチ

--------------------------(こちらはティア視点です)


 通路を抜けると、奥行き・幅ともに100mはあろうかという広大な空間が広がっていた。


 奥には数十体のアンデッドコボルドが徘徊しており、そのさらに奥には身長2mを超えるエルダーコボルドのアンデッドが10体ほど。これは、私がこの世界に来て初めて倒した魔物のアンデッド……。


 そしてさらに奥、ひと際異質な存在がいた。


 身長3mを超える、巨大なコボルドのアンデッド――アンデッドコボルドキング。


 死してなお精悍な顔つきをしている。


 私の侵入に気づくと、アンデッドたちは統率の取れた動きでこちらに迫ってきた。


 ――なにこれ? コボルドキングの能力? アンデッドになっても使えるの?


 まあ、いいわ。

 ちょうど魔法の威力を試したかったところだし。


 これまで、魔力を極限まで抑えていたけれど、今回は周囲に仲間もいない。


 気にせず使えるわね。


 前回ギガスアラーネに対して中途半端に使った炎の魔法……。今度こそ本来の威力を確かめてみようかしら。


 確か、炎の魔法は酸素の供給も魔法で行われるから、空気中の酸素は消費しない。


 ――つまり、酸欠の心配はないってこと。


「よし、やるよ」


 とはいえ、さすがに全力を出すのは怖い。ほどほどに抑えて――


火炎地獄ムスペルスヘイム


 白い炎が勢いよく空間全体に広がる。


 同時に、高熱の爆風が私の横を通り抜け、外へと吹き抜けていった。


 ――マジか……。やっちゃった……。


 威力が高すぎた。


 私は魔法結界に守られているから平気だけど、もし仲間がいたら間違いなく全滅していた。

 酸欠だけ心配してた私がバカでした……。


 炎が消えた後の空間を見渡す。


 天井や壁面の一部は溶けて流れ出し、床は黄色、オレンジ、赤色に輝くマグマのような状態になっていた。


 まさに()()()()


 もはやアンデッドの姿はどこにもない。いや、痕跡すら見つかるかどうか……。


 ――何、この魔法……。


 一都市くらいなら簡単に壊滅させられるんじゃない?

 神様の天罰として使うならともかく、普段使いには向かないわね……。


 このまま放置するのも気が引けるし、冷やしておこう。


氷結地獄ニブルヘイム


 今度は慎重に魔力をコントロールし、氷魔法を展開する。


 瞬く間にマグマは固まり、周囲の温度も常温まで下がった。


 ――うまくいった。


 まあ、岩の色や質感がすっかり変わっちゃったけど……もう、気にしないことにしよう。


 改めて周囲を見渡す。


 入ってきた通路以外、どこにも抜け道がない……。


 もし別の通路があって、その先にキュレネたちがいたら、さっきの爆風でどうなっていたかわからない。その点では安心だけど――手がかりがないのも困るわね……。


 仕方ない、転移の罠があった祭壇に戻ってみるか。


 そう思った瞬間、嫌な予感が脳裏をよぎった。


 ――祭壇、大丈夫かしら?


 急いで祭壇まで戻ると……


 崩れていた。


 はめ込まれていた魔石にはひびが入り、一部はすでに崩れ落ちている。


 ――爆風で壊しちゃったんだ……。


 キュレネたちの行き先を探る、手がかりのひとつを……。

 呆然と立ち尽くしていると、ふと、足元に振動を感じた。


 ゴゴゴゴゴ……


 ――地震? いや、違う。


 ……これは、戦闘の振動?


 誰かが魔法を使っている……?


 どこから?


 集中すると、頭の中の人が教えてくれる。


 前方、10度下方向、約50m先で魔法の行使あり。


 ――って、待って、それって……壁と地面なんですけど!?


 どうすりゃいいのよ……。



--------------------------(ここからキュレネ視点です)


 強力な魔法一つだけなら、なんとか防げるかもしれない。


 けれど――並列で発動されたら防ぎきれない。


 防ぎきれない分はムートに担当してもらうしかない。二人で連携すれば、防御面はなんとかなるか……?。


 問題は攻撃。


 私の魔法や、ムートのブレスを直撃させても、致命傷には至っていない。


 ――炎耐性が高いのは確定ね。


 さっき、ネコちゃんが放った魔法は風魔法。


 ダメージは与えたみたいだけど、倒しきれなかった。


 つまり、魔法耐性全般がかなり高いと考えるべき。


 それなら、物理攻撃……?


 アレはアームシールドやパラライズガードを腕にかけて攻撃を防いでいた。逆に言えば、ガードできなければダメージを与えられるはず。


 ――隙を突いて、腕以外に攻撃を仕掛ける。


 理想を言えば――剣を突き刺し、剣先から魔法を体内で発動させる。


 いくら魔人でも、それならダメージを受けるはず。


 防御も攻撃も、ムートとの連携が鍵になる。


 私はムートに作戦を伝え、無理を承知で身体強化の度合いを上げた。


 ――よし、決戦だ。


 気合を入れ直し、魔人に備える。



 一方、魔人もそれなりにダメージを負っているようだった。


 ゆっくりと近づいてきたものの、少し手前で足を止める。


「ほう……」


 魔人は、私を見据え、不敵に笑う。


「その気合の入った顔――まだ勝てるつもりでいるようだな」


 そして、両手の掌を向かい合わせる。


 その瞬間、赤黒い炎が渦巻きながら輝き始めた。


 ――まずい。


 あれを食らったら、間違いなく即死する。


 これまでのフレイムスピアとは桁違いの魔力を感じる……!


「グランドシールド!」


 咄嗟に、防御魔法を発動させる。


 できるだけ障害物を作らなきゃ……!


「そうだ、その顔だ……」


 魔人が嗤う。


「私と戦おうなどと考えたことが、そもそもの間違いだったのだ――」


 魔人が、魔法を放とうとした瞬間――


 左後方の壁が、崩れ壁に大きな穴が開いた。


 壁に大きな穴が開き、瓦礫が崩れ落ちる。


「……なんだ?」


目を向けると、そこには一人の人影。


「あー……やっと見つけた! よかったー!」


 生死にかかわる緊迫した状況 だというのに――あまりにも場違いな、能天気な声が響き渡る。


「……ふん、仲間か?」


 魔人は、再びニヤリと笑った。


「では――まずは、あいつから殺すとしようか」


「ティア、逃げて!!」


 叫んだ――その瞬間。


 魔人の魔法が発動した。


「ヘルフレイム」


 赤黒い炎が、一瞬にしてティアを包み込む。


「ティアーーーーーーーーッ!!」


 目の前の光景に、私は呆然とするしかなかった。


 ティアの姿が、燃え盛る炎の中に消える――。


「……ははは……!」


 魔人の不気味な笑い声が響く。


「悲しむことはない……次は、お前たちだからな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ