第35話 ネコ探し1 掲示板から選んでみた
「私たち、それなりにギルドの仕事やってるけど……常時依頼か指名依頼だけだよね」
「あと出しでは受けたけど、掲示板に貼ってある依頼を普通に受けたことないよね……」
「たまにはそういうのもやってみたいな」
「ああ、いいわね」
「じゃあ――ティア、依頼選んで」
「えっ、私が!?」
「……わかった」
掲示板の前に行き、依頼を探す。
どんなのがあるかな……?
Cランクまでの依頼しか受けられないから、それに絞って見ていく。
平和な依頼がいいかな……。
―― 黄カエルの肉、5匹分。
うーん、カエルはちょっと嫌だな……。
―― 甲羅ガニの甲羅、1つ。
カニならまあ……。
報酬は1万サクル、ギルドポイントは10。
もうちょっと欲しいな……。
一通り見回して、目に留まったのは――
―― ネコの捜索依頼。受注後1カ月以内に発見すること。
報酬100万サクル。要魔力。
「これがいい」
「んっ!?」
キュレネが依頼票を覗き込む。
「ネコの捜索で100万サクルっておかしくない!?」
「よっぽど大切な猫なのかしら……?」
「100万サクルっていったら、Bランク魔物の討伐報酬と同じレベルだぞ?」
「どう見ても怪しいな……」
「まあ、せっかくティアが選んだ初めての依頼なんだから、受けてみてもいいんじゃない?」
依頼票をはがし、受付へ向かう。
これぞ冒険者って感じだよね!
「ネコ探しですね。依頼主が受注希望の方と直接面会し、依頼するかどうか決めたいとのことです。面会は先方に伺うことになりますが、よろしいですか?」
うっ……!!なんか面倒な依頼だ。
「報酬が高いと思ったら、やっぱり訳ありか。依頼主は信用できるのか?」
「はい、パピリオ家の方です。元魔法士だったそうで、今は引退して隠居されていますが、立派な方ですよ」
「パピリオ家?」
「このあたり一帯を治める領主、パピリオ伯爵家よ」
「伯爵家って、貴族じゃないの!?貴族と面会するの!?うぅ……なんか嫌だな」
「まあ、そうですよね。貴族との面会が嫌で、この依頼を避けるパーティもありますし……。それに、この依頼、これまでに2組のパーティが面会したものの、どちらも受注には至りませんでした」
「なるほど、なかなか面白い依頼を選んだわね。ぜひ受けましょう」
「えっ!?」
なぜかキュレネが楽しそうな顔で、ノリノリで受ける気満々だ。
「では、受注希望者として面会を申し込みます。日程が決まり次第、お知らせしますね」
ギルドを出たあと、ムートが渋い顔で言う。
「ティアの選んだ依頼でよかったのか? 下手すると、1カ月無駄になるぞ」
「ティアはこれまで十分すぎる成果を出してるでしょ。たまには好きにさせてあげようと思って」
「確かに、とんでもない成果を出してるよな……。でも理由はそれだけか?」
「相変わらず鋭いわね、ムートは」
「ティアって、引きが強いんじゃないかと思うの」
「引き?」
「例えば、普通は崖から落ちても未登録の魔物には遭遇しないし、村の道を歩いててもAランクの魔物には出会わないでしょ? ダンジョンの入り口を見つけたのも、変なことやってたけど偶然よね、きっと」
「幸運か悪運かはわからないけど、何か重大なことを引き当てるというか、巻き込まれるというか……そういう運勢よね」
「えー!? そんな理由で私に依頼を選ばせたの!?」
「現に、とっても怪しげな依頼を選んだじゃない」
……それで、あんなにうれしそうだったのか。
なんか微妙な気分。