第24話 未知のダンジョンを発見せよ1 打ち合わせ
今日は、冒険者ギルドに呼ばれていた日だ。
受付に向かうと、すぐにギルドマスターの部屋へ案内された。
「よく来てくれた。まずは先日の称号と勲章の件だ」
式典などは特になく、ギルドマスターから直接、
「この度のカペルディアボルス討伐、見事であった。よって、『デーモンスレーヤー』の称号を授ける」
と言われ、勲章を手渡された。
「ありがとうございます」
「これからも冒険者として精進してほしい。
なお、この勲章には記名と魔力登録がしてあるため、『デーモンスレーヤー』としての身分証明ができる」
と説明を受ける。
この後は、ダンジョン探索についての打ち合わせだ。
ギルドマスターとともに部屋を出て、応接室へ向かう。
すでに「銅の花」のメンバーが集まっており、受付課長のセリシャさんも同席していた。
まず、ギルドマスターが口を開く。
「前回の話から、ギガスアラーネ(オオグモ)はダンジョンに生息する魔物であることがわかった。
つまり、セプバーロ大森林内にダンジョンが存在する可能性が高いということだ。
そこで、ギガスアラーネの目撃情報をたどれば、ダンジョンの位置を特定できるのではないかと考え、一か月間かけて情報を収集した。
その結果を地図にまとめたのが、これだ」
そう言って、ギルドマスターはテーブルに地図を広げた。
目撃ポイントは地図上にバツ印で示され、特に信頼性が高い情報はバツ印を丸で囲んでいるという。
ギルドマスターは地図を指しながら説明を続けた。
「まず、ここがクラーレットが遭遇したブランカの地点だ。この周辺にもいくつか目撃報告があるが、最も多いのは南東のアルタピーノ周辺、その次がブランカの南、ソノリオ周辺だ。」
セプバーロ大森林は広大で起伏に富み、特に目立つ山や丘には名前がつけられている。今回のエリアではブランカ山、アルタピーノ山、ソノリオの丘が該当し、地元の人々はその周辺地域を山の名前で呼ぶことが多い。例えば、ブランカ山周辺は「ブランカ」として区分されている。
ギルドマスターは地図を見渡しながら言った。
「隣接する3エリアで目撃情報が集中している。もしダンジョンがあるとすれば、この3エリアのどこかだろう。どう思う?」
真っ先に反応したのは、銅の花のリーダー、バーンさんだった。
「ああ、俺もそう思う」
彼がそう言うと、メンバーたちもうなずく。
こちらもキュレネが視線を送ってきた。私とムートを確認すると、
「私たちも異論ありません」
と答えた。
「では、この三つのエリアでダンジョンを探してくれ。新しい情報があれば、その都度報告を頼む。ダンジョンを発見した場合、一人につき200万サクルを支払おう。
ただし、ダンジョン発見とは入り口を見つけ、内部がダンジョンであると確認できた場合を指す。地下探索魔法での構造物発見のみでは、ダンジョン発見とは認めない。
また、ダンジョンだと確認できた場合でも、深くは入らないように。ダンジョンを発見した際には国への報告義務があり、勝手に探索すると処罰される可能性がある。ダンジョン内の探索については、別途対応を考える」
「「了解」」
「ちょっといいか?」
スキンヘッドの大男、アーサーさんが声をあげた。
「クラーレットはCランクだろ? Bランクのギガスアラーネと戦うことになる可能性があるが、大丈夫なのか? 一応、討伐実績はあるみたいだが……」
それに対し、ギルドマスターが即座に答える。
「ああ、大丈夫だ。3人ともBランク以上の魔物を単独で討伐した実績がある」
「……Aランク並みの実力があるってことか」
この時、副リーダーで魔法士のヒルデさんが微妙な顔をしながら呟いた。
「今、Bランク以上って言ったわよね?」
……あ、まずい。ギルドマスター、余計なことを言ったよ。
単に『Bランクの魔物を倒した』って言えばよかったのに。
ちらっとギルドマスターの顔を見ると、彼は慌てて
「まあ、なんだな。クラーレットは全員強いから、心配するな」
と言ってごまかしていた。
幸い、ヒルデさん以外は気にも留めていないようだった。
銅の花のリーダー、バーンさんがギルドマスターに向かって言う。
「調査の進め方だが、いくら地下探索魔法を使うとはいえ、この人数で全域をくまなく調べるのは不可能だ。だから、まずは大まかにオオグモの目撃ポイントを巡り、そのルート上で適当に地下探索魔法を使って調査しようと思う。
ダンジョンは通常、数十kmから数百kmの範囲に広がっている。どこかで手がかりが見つかれば、そこを足掛かりにして、さらに詳しく調べていけばいいと思うが、どうだ?」
「わかった。任せよう」
ギルドマスターはそう答えた後、こちらを向いて尋ねる。
「クラーレットは一緒に行動するか?」
「別々のほうが効率がいいと思います。ブランカ、アルタピーノ、ソノリオの目撃ポイントを巡るだけでも、かなり広範囲になりますから」
「……そうだな」
「では、別々に行動するとしても、情報の共有はしておきたいな」
受付課長のセリシャさんがすぐに発言する。
「では、出発時には予定を、戻ってきた際には結果報告を私の方へお願いします。調査中や調査済みの箇所を地図に記入し、コメントなどがあれば追記して、どちらのパーティも確認できるようにしておきます。伝言も承ります」
「それは助かる。ダンジョンの痕跡があれば、なるべく早く報告してくれ。その際は、改めて調査方法を相談したい」
「わかりました」
「俺たちはまずアルタピーノから調べる。お前たちは?」
「私たちはブランカから始めるつもりです」
ブランカって、私たちがオオグモと遭遇した場所だよね。
私もそこから調べるのがいいと思ってた。
こうして、今日のところは解散となった。