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第21話 祈年祭と魔物狩り勝負7 勝負の結果

 私がウィスバーロの町へ戻った時には、すでにキュレネとムートも戻っていた。


 ムートは開口一番、「早速だけど、魔物狩り勝負の結果を確認しようぜ」と言い出し、3人で冒険者ギルドへ向かった。


 受付には、いつものソフィアさんがいる。


「獲得したギルドポイントが多い方が勝ちだからな」


 ムートが念を押す。確かに、それが今回の勝負の条件だった。


 まずは、祈年祭での光神官代理の依頼完了を報告し、報酬を受け取る。

 3人合わせて90万サクル、ギルドポイントは900だ。


 次に、魔物討伐の清算へ。


 ムートは自信満々に「俺からな」と言い、ジャラジャラと魔石を受付に差し出した。



 Bランクの魔物

 牙狼デンテスルプスリーダー1匹


 100万サクル


 Cランクの魔物

 オーガ2匹


 2万サクル


 Dランクの魔物

 牙狼デンテスルプス20匹

 オーク8匹


 合計28匹で14万サクル


 総合計116万サクルで1160ギルドポイント獲得。


「どうだ、牙狼デンテスルプスの群れを討伐したからな」


 次はキュレネが魔石を出す。

 ムートよりも数が多い。


 Bランクの魔物

 ゴブリンキング1匹


 100万サクル


 Cランクの魔物

 ゴブリンロード2匹


 2万サクル


 Dランクの魔物

 ホブゴブリン9匹


 4万5千サクル


 Eランクの魔物

 ゴブリン32匹


 6万4千サクル


 総合計112万9千サクルで1129ギルドポイント獲得。


「よし、俺の勝ちだな」


 ムートが呟く。


 すると、キュレネが微妙な笑みを浮かべながら言った。

「ドゥコン村とパーニュ村から、共同でゴブリン討伐の依頼が出ていたと思うのですが?」


 それを聞いた受付のソフィアさんが、依頼の記録を確認する。


「はい、確かに依頼が出ています」


 キュレネは書類を取り出し、「これが討伐の確認書です」と言って紙を渡した。


「確かに。では、事後受注ということで20万サクル、200ギルドポイントを追加します」


 結果、キュレネの獲得ギルドポイントは1329。

 ムートの1160を上回った。


 キュレネが得意げに微笑む。

「ふふ、獲得ギルドポイントが多い人が勝ちよね」


「くっ、せこいことしやがって……」


 ムートは悔しそうに唇を噛んだが、すぐに私の結果が気になる様子だった。


「ティアはどうだ?」


「ふー……」


 私は軽くため息をつき、「私はこれだけ」と言って、4つの魔石をテーブルに置いた。


「ヤギの魔物とサルの魔物……確か大猿(グランダシーミャ)だったかな」


 受付のソフィアさんが魔石を手に取り、鑑定しながら眉をひそめる。


「……これ、大猿(グランダシーミャ)の魔石じゃないですよ」


 怪訝そうな顔をしながら、ソフィアさんは続けた。


「これは上位種の王猿(レックスシーミャ)ですね。Bランクですから、3匹で300万サクルになります」


「Bランクだったのか……。どうりで強いと思ったよ」


 一瞬驚いたが、内心ガッツポーズをする。私の勝ちじゃない!?


「ヤギの方はどうですか?」


 そう聞くと、ソフィアさんが魔石を見つめたまま固まった。


「……少々お待ちください」


 そう言い残し、彼女は席を離れる。


 しばらくして、ギルドマスターが姿を現した。


「すまん、ちょっと場所を変えてもらえるか」



 応接室へ移動する。


 ギルド側の出席者は、ギルドマスターと受付のソフィアさんだ。


 ギルドマスターは開口一番、鋭い視線を向けながら尋ねた。


「早速で悪いが、この魔石の主を倒したのは嬢ちゃんか?」


「はい」


「……一人で?」


「はい」


「どこで仕留めた?」


「えーと……一番最初に訪れた村だから……ランツ村ですね」


「なぜランツ村に?」


「光神官代理の依頼で向かいました」


 ギルドマスターがソフィアさんを見る。


「確かに、光神官代理の依頼でティアさんがランツ村を担当していました」

 ソフィアさんがフォローするように答えた。


「なるほど……」


 ——何だこれ? 疑われてる?


 キュレネも何か違和感を覚えたのか、怪訝そうな顔で尋ねた。


「ギルドマスター、これはどういうことですか?」


「すまん、確認が必要なんだ。もう少し付き合ってもらえるか?」


 ——何やら訳ありな感じだけど……まあ、いいか。


「では、この魔石の主の死体はどうした?」


「村長が欲しいと言ったので、村に寄付しましたけど」


「……なるほど」


 またその反応か。


 ——「なるほど」ばっかりだな……。


「最後に、どうやって倒したのか、外で実演してもらえないか?」


「……はい???」


 ——どういうこと?


 訓練場へ案内される。

 ギルドの裏手にある、簡単な練習用の施設だ。


「この像を、魔石の主と同じように攻撃してくれ」


 そう言って示されたのは、魔物の形をした金属製の像だった。

 普段は魔法練習用のターゲットとして使われているらしい。


「えっ、これを切るんですか?」


「やはり、剣で倒したんだな。これは魔法の練習用に頑丈に作られているが……あの魔物を斬れたなら、これも斬れるはずだ」


 ——いやいや、金属製だよね?

 念のため、剣を抜いて軽く当ててみる。


 カンッ


 ……やっぱり、普通に斬れる気はしない。


 エンチャントがかかっているとはいえ、さすがに無理では?


 ——もしかして、あのヤギ、めちゃくちゃ強かった?


 どうする……?

 とりあえず、斬らないと面倒なことになりそうだし……ここは、しれっと斬っちゃおうかな。


「どうした?」


「……今、やります」


 ——女神モード


 真刀流奥義——「閃き」


 左下から右上へ、一閃。


 静寂。


「ゴトン」


 切断された像が地面に落ちる音が響く。


「「「なっ!!」」」


 背後から、一斉に驚きの声が上がった。


 私は振り返り、ギルドマスターを見て尋ねる。


「これでいいですか?」


「バ、バ、バーサーカー……!」


 ……え? なんでバーサーカー?


「目が赤くなってるからよ。おとぎ話に出てくるバーサーカーは、赤目になると手がつけられないほど強くなるのよ」


 ——あっ、そういえば……女神モードになると目が赤くなるんだった。

 ……すっかり忘れてた。


 いや、ていうか、私、勝手に「女神モード」って呼んでたけど……実はムートが言うようにバーサーカーだったの?


 ……なんか、やだな……。


 ふと、目の前の像の切断面が鏡のように滑らかになっていることに気づく。

 試しに、そこに自分の顔を映してみると——


「えー……目が赤いって、瞳が赤く輝いてるの???」


 てっきり、白目が充血して赤くなってるのかと思ってた……。


「……知らなかったのか?」


 ——えっ、じゃあ……もしかして……


 女神モード(バーサーカーモード?)を使うと、瞳が赤く輝くから、一発でバレる……?


 もしかして……


 オオグモを倒したとき、雷が落ちたとか適当なこと言ったけど……嘘ってバレてた???


 


 

誤字報告ありがとうございました。

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