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第14話 オオグモその後

 休みも終わり、今日から冒険者の活動を再開だ。


 昨日の夕方、冒険者ギルドからオオグモの件で連絡があった。

 ――というわけで、朝からギルドを訪問することになった。


 案内されたのは応接室。

 中へ入ると、ギルドマスターのアルベルトさんと、受付課長のセリシャさんが待っていた。


「おお、来たか。まあ座れ」


 アルベルトさんが手で席を促す。


「オオグモの件と、他にも話がある」


 そう言った後、ギルドのスタッフがお茶を運んできた。


 ――お茶が出るってことは……話が長くなるのかな?


「先ずはオオグモの件だな」


 アルベルトさんが話を切り出す。


「このオオグモは、かつてギガスアラーネと呼ばれていた魔物と判明した。新種ではなかったが、冒険者ギルドには登録がなかったんだ。少なくとも、ここ200年は討伐の記録がない。おそらく、絶滅種扱いになっていたのだろう。この前の魔石と過去の資料を元に、新たにBランクの魔物として登録した」


 ――やっぱり珍しい魔物だったんだ。


「そこで、報酬の話なのだが……」


 そう言って、アルベルトさんがセリシャさんに合図を送る。


「Bランク魔物討伐の報酬、100万サクル」


「さらに、情報提供料として150万サクルを追加。合わせて250万サクルとさせていただきます」


「はい、ありがとうございます!」


 キュレネが即答した。どうやら妥当な金額みたいだ。


「なお、この件で2500ギルドポイントを獲得し、パーティの合計ポイントが3010になりました。一人1000ギルドポイントをクリアしたので、皆さんCランクに昇格となります。おめでとうございます」


「ありがとうございます!」


 3人とも、自然と笑顔になった。


「ちなみに、Bランクへの昇格には、一人1万ギルドポイントが必要になります。残りのポイントは、3人で約2万7千ポイントです」


「頑張ってくださいね」


 ――うわー、先は長いな。




「よし、次の件に移ろう」


「セリシャ、悪いがバーンたちを呼んでくれるか?」


 すぐに5人が部屋に入ってくる。男性3人、女性2人だ。


「ギルドからの依頼で、未確認の魔物を調査していたのが、このパーティー『銅の花』だ」


「Bランクパーティー『銅の花』のリーダー、バーンだ」


 がっしりした剣士の男が挨拶をし、続いて副リーダーの魔法士・ヒルデ、スキンヘッドの大男・アーサーが名乗る。この3人がBランクで、年齢はおそらく30代だろう。


 さらに、魔法士の男性・シュート、剣士の女性・シュンカの2人が名乗った。彼らはCランクで、年齢は20代といったところか。


 全員が、銅でできた花形のバッジを胸に着けている。


「こちらが、ギガスアラーネを討伐したCランクパーティー――クラーレットの奇跡だ」


 そう紹介され、それぞれが名乗る。


「ずいぶん若いな……まあいいか。


 ギルドマスターから、お前たちにオオグモの件の調査で、これまでにわかったことを話せと言われたんだが……正直なところ、あまり情報がないんだ。済まねえな。


 もともと、正体不明の魔物がいるって噂が広まり、ギルドから調査依頼を受けたんだが、目撃者や襲われた者たちの証言から、蜘蛛の魔物らしいと見当をつけていんだ。ちょうどその矢先に、お前たちが討伐してきた。だから、噂の主はあのオオグモで間違いないと思う。


 ただし、オオグモは1体だけじゃない。ほぼ同じ日、同じ時間に、離れた場所でも目撃情報があったんだ。


 それでな、蜘蛛の魔物について調べていたら、古い魔物の資料の中に、嬢ちゃんたちが討伐したやつと特徴が一致するものがあった。そこから判明したんだよ――お前たちが倒したのは、ギガスアラーネって魔物だ」


 そう言って、資料の写しを差し出してきた。


 ――ほんとだ、間違いなさそうだ。


 資料を眺めていると、生息地の欄に「ダンジョン」と記されていた。


「ダンジョン?」


「ダンジョンとはな、地下に複雑に入り組んだ通路や部屋が存在する地下迷宮のことだ。自然にできたような部分もあれば、人工的に作られたような構造もある、謎の多い場所だ。


 一般的に魔物の生息地となっていて、まれに“アーティファクト”と呼ばれる神々の道具が見つかることもある。そうしたことから、ダンジョンは神々が作った場所ではないか、という噂もあるんだ」


 キュレネも同じ疑問を抱いたのか、質問する。


「このセプバーロ大森林にダンジョンがあるのですか?」


「いや、冒険者ギルドとして確認できているものはない」


 ギルドマスターは即座に否定したが、バーンは考え込むように言った。


「……俺は噂なら聞いたことがある。セプバーロ大森林の周辺の古くからある村に、そんな言い伝えが残っているとか、いないとか……」


「オオグモの目撃情報をたどっていけば、ダンジョンが見つかるのではないですか?」


 キュレネが口をはさんだ。


「ん? どういうことだ?」


「オオグモがダンジョンに生息しているなら、地上で目撃される個体は、そこから出てきたもののはずです。つまり、頻繁に目撃される場所があれば、その近くにダンジョンがある可能性が高いと考えました」


「なるほど……それなら、調べてみる価値はありそうだな」


 セプバーロ大森林の地図を広げ、私たちが遭遇した場所を含め、これまでの目撃情報を地図上に示していく。


「……これだけじゃ、場所を絞り込めないな。よし、冒険者ギルドで報酬を出して、1か月間、目撃情報を収集することにしよう。


 銅の花には引き続き、情報収集の手伝いを頼みたい。そして、クラーレットには別件の依頼が来ているから、先にそちらをお願いしたい」


「えっ?」


「ところで、クラーレットのメンバーの中に、地下探索魔法を使える者はいるか?」


「私が使えます」


 キュレネが答える。


「おお、それはありがたい。この辺りでは、銅の花のヒルデぐらいしか使い手がいなかったからな。


 では、情報がそろい次第、銅の花とクラーレットの奇跡にダンジョン探索の依頼を正式に出す。よろしく頼む」


「了解だ」

「承知しました」


 ――よし、打ち合わせ終了だ。


「すまないが、クラーレットの奇跡は残ってくれ」


 そういえば別件の依頼があると言ってたっけ……長いな。


 銅の花と受付課長のセリシャさんが部屋を出て行き、しばらくすると、指名依頼担当のエステバンさんが入ってきた。


「皆さんに、精霊教会からの指名依頼が入りました」

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