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第125話 ヴェルティーソ高等学園 学園祭1

1日2回(10:10頃/18:40頃)更新中

 さて、学園の後期が始まる。


 後期の目立つイベントは、学園祭とその後のパーティだ。


 新学期、学校へ行くと、さっそくルイーズを見つけて声をかける。


「ルイーズ、この前はありがとう。クヴァーロン王国へ行けることになったわ」


「よかった!どうなったのか気になってたの」


 どうやら、王女様が直接訪ねてきたことまでは知らない様子。そのまま伏せておくことにする。


 そこへ、キアラとクロエもやってきた。


 ルイーズが皆に話しかける。


「ねぇ、聞いた? 夏休みの闘技大会、うちが優勝したんだって!」


「ルーカス会長たちが?」


 どうやら、クロエは事情をよく知らないらしい。


「鉄仮面の選手が優勝したのよ」


 と、キアラがぽつり。


「そうそう、鉄仮面かぶった選手が、すごく強かったんだって」


 ……あれ? もしかして、私だって気づいてない?


「でもね、その人、上級武術や上級魔法の授業にいないんだって。不思議でしょ?」


「その選手、名前がティアだったよね」


 ギクッ。キアラはやっぱり知ってたか……。


「そうそう、ティアって名前なの! 面白い偶然よね。ティア、知ってる? その選手のこと」


「……それ、私に聞いちゃう? もちろん知ってるけど」


「えっ? 知ってるの? どんな人?」


 私は自分を指さして答えた。


「こんな人、だけど」


「えっ!? 本当? 冗談でしょ?」


「本当よ……」


「ティアって、そんなに強かったの?」


「まあ、冒険者の稼ぎでこの学校に来てるくらいだしね。それなりに強いわよ」


「そっか……確かに、あんな豪華な家に住んでて、この学校に通ってるんだもんね。普通じゃないよね」


「改めて考えると、ティアってすごいよね。私たちは皆、親のお金で来てるけど……ティアは自分で稼いで入学してるし、闘技大会で優勝するほどの実力者……なんだか雲の上の存在って感じ」


「やめてよ……そういうの苦手なの。今まで通りでお願い」


「うん、わかった!」


 ──と、仲間内では和やかだったのだが、その後の始業式で闘技大会の報告があり、私は学校からも表彰されてしまう。


 ……もはや、モブではいられなかった。


 そこからというもの、あちこちから「うちの領地に来ないか」とか、「婚約を......」などという話が舞い込んでくるようになった。


 そんな時は、スピカ第三王女からもらったメダルを見せて、「クヴァーロン王国へ行くことが決まっているので」と丁寧に断ると、皆意外とあっさり引き下がってくれた。


 ……もしかして、スピカ第三王女はこれを見越して、夏休みが終わる前に慌てて来てくれたのだろうか?


 それとも、システムが私に都合よく介入しているのか。


 いずれにせよ、面倒ごとにならずに済んで、本当に助かった。



 そんな感じで始まった後期も、順調に日々が過ぎていき、やがて学園祭の話題が出るようになった。開催は、だいたい二か月後の予定だ。


 でも私は社会人コースだし、特に何かに参加する義務もない。当日はのんびり見て回るだけでいいかな、なんて思っていた。


 ……ところが。


「ねえ、ティア。一緒に魔導具コンテストに出てみない?」


 ルイーズ、クロエ、キアラの三人が揃って声をかけてきた。


「魔導具コンテスト?」


「うん。学園祭のイベントのひとつで、チーム参加もできるの。面白いものを作ったら結構注目されるのよ」


 うーん……どうしようかな。楽しそうではあるけど、ちょっとその場では決めきれず、返事は保留にした。


 家に帰ると、なんとキュレネたちも同じ話をしていた。


「私たちも魔導具コンテストに出てみようかと思ってるの。ちょっと試してみたいアイデアがあってね」


 キュレネがそう言いながら、楽しそうにしている。


 なるほど、キュレネたちは将来、貴族家の再興を目指していて、卒業後はきっと多忙を極めるだろう。さらに、私が彼女をエレメンタルマスターに任命したら、その自由もほとんどなくなる。


 ――それは、私も同じか。


 いずれ私は女神として、この世界での本格的な活動を始める。


 そうなれば、今のように気軽に人と接することは難しくなるだろう。


 思えば、こうして“普通の学生”として楽しめるのは、今しかないのかもしれない。


 ……そう思うと、私もやっぱり出てみたくなった。


 せっかくだから、ルイーズ、クロエ、キアラに加えて、キュレネ、ムート、そして私――この六人でチームを組んで挑戦してみるのはどうだろう?


 次の日そう提案すると、皆乗り気になってくれた。


 そしてその日の放課後、六人で集まって、早速話し合いを始めることになった。



 まずは、どんな魔導具を作りたいか、みんなの意見を聞いてみることにした。


 最初に口を開いたのはキュレネ。


「私たち、ゴーレムみたいなものを作りたいと思ってたの。さすがに本格的なのは無理だから、動く人形くらいのイメージで」


 ――たしかに、家には人間と見分けがつかないゴーレムがいるし、興味を持つのも自然かもしれない。


 続いてクロエ。


「私はね、物をつかんだりするアーム型魔導具を作ってみたくて。今あるものより、もっと滑らかに動かせるアイデアがあるの。でも、魔法の知識が足りなくて……誰かに手伝ってもらえると嬉しいな」


 なるほど、最近はアーム型魔導具が流行ってるらしいし、クロエが科学系に興味があるのは前から聞いていた。これはかなり本気かも。


 ルイーズはというと——


「私は、作るっていうより、材料の調達とか、コンテストの主催者との調整とかをやってみたいな」


 さすが商会の娘。実務方面に強いのは心強い。私とはまったく違うタイプだけど、だからこそバランスがいいのかも。


 そしてキアラ。


「私は、デザインとか造形を担当してみたい。見た目に美しいものを作ってみたいのよね」


 へえ、キアラって芸術方面に強かったんだ。ちょっと意外。


 そして、私。


 ……正直、魔導具に関しては膨大な知識があるので、ちょっとやりにくい。でもせっかくの機会だし、“皆が頑張れば届きそう”なくらいのラインを狙ってみよう。


「私は、音楽を演奏する魔導具を作ってみたいな」


「へー、意外ね」


 ルイーズがちょっと驚いたような顔をする。


 そして、キュレネがみんなを見渡しながら話をまとめに入った。


「一通り、意見が出そろったわね。


 具体的な案としては――


  • 人形型ゴーレム

  • アーム型魔導具

  • 演奏魔導具


 ってところかしら。さて、どうやって決めようかしら?」



 そこで、私がすかさず、決めていた答えを口にした。

「全部まとめて――人形が、手を使って楽器を演奏する魔導具にしましょう」


 一斉に、みんなの視線がこちらに集まった。


 キュレネが少し眉を上げて言う。


「それ、相当難易度高いのだけど……わかってる?」


「うん、大丈夫よ。私が本気でサポートするから」


「「えっ!?」」


 皆が一斉に「どういうこと?」という顔になる。


 すぐにルイーズが質問してきた。


「ティアって、魔導具に詳しいの?」


「うん、かなり詳しいよ」


「……意外……でもないか。そういえば、ティアって妙に頭よかったし。なんかさりげなくハイスペックなのよね……」


 それを聞いて、ちょっと照れつつも、私は提案を続けた。


「ということで、私が仕切ってもいい?」


「うん、お願い」


「じゃあ、まずは演奏する楽器を決めましょう。私としては、バイオリンなんてどうかと思ったんだけど――」


 即座に、キュレネが反応した。


「ちょっと待って、さすがにバイオリンは繊細すぎるわよ。力加減が難しすぎるし。せめて、とりあえず押せば音が出るピアノにしておきましょうよ」


 ――なるほど、確かにそれはそうだ。音を鳴らすだけなら、ピアノの方がハードルは低い。

 ピアノでも中級者レベルの演奏ができれば十分評価されるだろう。


「そうね。ピアノの方がいいかもしれないわね」


 皆もうなずいて、反対はなかった。


「では、楽器はピアノに決定ね。となると、人形はピアノが弾けるサイズにしないと」



「じゃあ、役割分担をしましょう」


「造形と機構は、キアラとクロエでいいかしら?」


「そうね」


「キュレネとムートは、魔法関係でお願い」


「ええ、了解」


「材料の調達や外部との調整は、ルイーズね」


「わかったわ」


「私は全体のスケジュール管理と相談役をやるわね」


 さっそく、具体的な材料と構造の話に移る。


「人形の骨格は木で作って、関節部分にはルナストーンを使いましょう」


「ルナストーン?」


 ルイーズとキアラが首をかしげる。


「ルナストーンって、磁石みたいに同じ石同士を引き寄せられるの。ただ、魔法を使うと、くっつく位置を自由に制御できるのよ。だから、それを関節に使えば、魔法で動きをコントロールできるってわけ」


「へえ……それ、便利そうね」


「というわけで、ルイーズ、関節の数×2個分のルナストーンを用意してくれる?」


「う、うん、任せて」


「あと、魔力供給にはフレイムクリスタルを使いましょうか」


 ここで、キュレネが目を丸くする。


「ちょっと待ってティア、それってアーティファクトでしょ? 魔石じゃダメなの?」


「魔石だと精密な魔力制御が難しいのよ。ピアノの音を出すだけならいいけど、"演奏" となると、それじゃ対応できないわ」


「そうなんだ……。演奏となると、そんなに細かい制御が必要になるのね」


 ルイーズがやや焦った様子で口を挟む。


「ちょ、ちょっと待って。アーティファクトって簡単に手に入らないよ? 下手したら調達できないかも……」


「そうかもね。でも、まずは探してみて。もし見つからなかったら、私に相談して。何とかするから」


 ――ソノリオダンジョンの在庫をちょっと使えば、何とでもなる。


「ということで、当面やることをまとめるわね。


 ・クロエとキアラ → 人形の基本設計

 ・キュレネとムート → 基本動作の魔法陣設計

 ・ルイーズ → コンテストへの届け出と材料の調達


よろしくね」


 ルイーズが慌てて口を開く。


「ねえ、申請するのにチーム名と作品名が必要なんだけど、どうする?」


 おお、そうか。名前を決めないといけないんだった。


「私は、なんでもいいよ」


「じゃあ、チーム名は――『ティアに導かれし者たち』!」


「却下で!」


「冗談よ」


 結局、チーム名は『マジックミュージック』、作品名は『ピアノドール』に決まった。


 こんな感じで、今日の話し合いは終了した。


 ふー。なんだか私っぽくないけど……神様になると、こういうのを国王とかに向かってやることになるんだよね。だから、今のうちに経験を積んでおこう。


 幸い、ブレインエクスパンションシステムのサポートがあるから、なんとかできる。

※本作は7/5(土)10:10完結予定です。現在1日2回(10:10頃/18:40頃)更新中。

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