表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/138

第123話 ヴェルティーソ高等学園 闘技大会3

 そして、翌日――ついに決勝戦。


 相手は、前評判通り勝ち上がってきたオキサーリス王国のアルタシオ学園だ。


 中堅戦で、こちらのジュールさんが相手の大将――レスターク王子に敗れ、私の出番が回ってきた。


「ここからは、今大会のダークホース――鉄仮面のバーサーカー、ティア選手の登場です! 対するは“雷撃”の異名を持つレスターク選手! 注目の対決が始まります!」


 ……好き勝手に名前つけないでほしい。


「始め!」


「雷神剣」


 レスターク選手が、自らの剣に魔力を込める。スパークが走るその煌めきは、確かにかっこいい。


「おおっと、レスターク選手! アーティファクト『雷神剣』が雷をまといました! この攻撃、ティア選手はどう防ぐのかぁぁ!」


 ……確かに、普通なら剣を合わせただけで感電する。でも、私には効かない。


 ――少し様子を見てみようか。剣技の実力、純粋に興味がある。


 レスターク選手が仕掛けてくる。雷神剣は、当てるだけで感電効果があるので、小刻みで素早い動きを多用している。


 けれど、私はアンチマジックシールドを纏っている。雷撃など通用しない。


 冷静に、普通に捌く。


「なんと! ティア選手、雷撃がまったく通じません!」


 私も軽い攻撃でじわじわと相手を追い込んでいく。


 そんな中、レスターク王子が静かに言う。


「……お強いですね。でも、ここまでです」



 すると、レスターク選手は剣を地面に突き立てた。


「雷撃陣」


 足元に魔法陣が展開され、床一面から雷撃が奔る。


「おおっと、ティア選手、雷撃に包まれたーーー!」


 ……少し演出に使わせてもらおう。


 私は右の掌を胸の高さで水平に広げる。その上へ、四方からの雷撃をすべて誘導するように集めていく。


 そして攻撃が収束した瞬間、掌をレスタークに向け、


「サンダーボルト」


 そう呟きながら、相手の雷撃耐性をわずかに超える程度の威力で、ゴッドサンダーを撃ち放つ。


「な、なんだこれは!? ティア選手、雷撃を吸収して跳ね返したのかーー!?」


 ――そう見えるよね。でも本当は……


 誘導した雷撃はアンチマジックで無効化しただけ。返した雷は、私が新たに放ったものだ。

 アーティファクト雷神剣による雷撃耐性はかなり高いため、それを上回る雷撃は特大のものになった。それがレスタークに直撃し、彼は地面に崩れ落ちた。


「そこまで!」


 会場が歓声に包まれる。


「ヴェルティーソ高等学園、第二チームの優勝です! おめでとうございます!」



 そして、表彰式へ——。


 ……あれ? クローズヘルムのまま表彰式に出るのって変じゃない?


 でも、いまさら外すのも……このままで行こう。


「ティア様、そのまま表彰式に出るのですか?」


 フォーリアさんが困惑した表情で尋ねてくる。


「これを外すと、逆に誰かわからなくなるでしょ」


 と押し切って、強行することにした。


 式では、大会の主催者からトロフィーが渡される。


 だがその時——


「顔を見せろ!」「礼儀がなってないぞ!」


 観客席から次々と声が飛ぶ。


 最初は小さかった声が、次第に会場を包むほどに大きくなっていく。


 ……くっ、これはマズい。


 観客が暴徒化するほどではないけど、このままじゃ雰囲気が悪くなる。


 しょうがない——


 私は右手を高く掲げ、ゴッドサンダーを放つ。


 空へと放たれた稲光が、空を裂きながら炸裂し、轟く雷鳴が会場を揺らす。


 普通の雷撃とは桁違いの威力に、観客は一瞬で沈黙した。


 その静寂の中、私は言い放つ。


「私に勝てる者が現れるまで、素顔はお預けよ!」


 そして、掲げたトロフィーを高々と振り上げる。


 一瞬の間のあと——


「うおおおおおおお!!」


 称賛と拍手の嵐が巻き起こった。


 ……よし、うまくいった。


 頭の中の人との相談で、これが一番成功率が高いって言ってたけど……やっぱり実際にやるのは緊張する。


 私らしくはないけど、神様として生きるなら、これくらいの度胸は必要だ。



 ——その後、運営スタッフや先輩たちに思いっきり怒られた。


「表彰式であんな危険な魔法を使うな!」


 ……いや、あなたたちが守ってくれないんだから......、とは言わず、黙って聞いておいた。


 ともかく、冒険者ギルドから受けた依頼——


 オキサーリス王国の王子レスタークと、シドニオ帝国の魔人ガルサスの対決阻止は成功。


 あとは、無駄に有名になるのを防がないと……。


 一応、学園長には私の情報を外部に出さないようお願いしたけれど、どこまで効力があるかは不明。


 魔人ガルサスについては、念のため監視を付けることにしよう。


 ——そして、シドニオ帝国を離れ、帰国の途についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ