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第114話 ヴェルティーソ高等学園 面会

 今日はルイーズとともに、彼女の知り合いである伯爵令嬢――オリビア・ウェストウィック様に会う。


 目的は、この世界に私を召喚したと思われるクヴァーロン王国第三王女との面会の仲介をお願いするためだ。


 場所は、ルイーズが手配してくれた学園の談話室。そこへオリビア様をお招きする形になった。


「ルイーズから、簡単にお話は聞いておりますわ。もう少し詳しく教えていただけますか?」


「わかりました」


 私は静かに話し始めた。


「何度も夢の中で、第三王女が“降臨の祭壇”で祈っている姿を見ました。はっきりと声が聞こえたのは一度だけですが、そのとき――『この国をお救いください』と、そうおっしゃっていました。

 あまりに印象的な夢だったため、魔法絵師にその場面を絵にしてもらったのです。……当時は、あの方が王女だとは知らず、その絵を手がかりに探していたのです」


「その絵を、拝見してもよろしいかしら?」


 私は鞄から絵を取り出し、そっと渡す。


 オリビア様は、しばし絵を見つめ――目を細める。


「なるほど、これは……普通の夢とは思えませんわね。背景の建築まで正確に描かれている。まるで実際に見たかのように……。

 ところで、その夢――王女様が祈る場面で終わったのですか?」


 ……さて、どこまで言うべきか。


「いえ、そのあとで。王女の手前にある祭壇の柱の一本が、倒れて――そこで夢は終わりました」


 その言葉に、オリビア様の表情がわずかに揺れる。


「……なるほど、そこまで知っていらっしゃるとは。では、あなた様はその時、どちらに?」


 “日本にいました”は言えない。


 けれど、「その時」が“柱が倒れて夢が終わった時”を指すのなら、こう答えられる。


「当時は――トゥリスカーロ王国のウィスバーロの町の近くにいました」


「ウィスバーロ……。随分と離れておりますわね。それを証明できますか?」


「その日ではありませんが、翌日にウィスバーロで冒険者登録をしました」


 そう言って、ギルドカードを差し出す。


 オリビア様はそれを手に取り、じっと見つめる。


「……なるほど、日付も一致していますわね」


 その口ぶりからすると、彼女は“柱が倒れた日”を正確に把握しているらしい。

 ――まぁ、あれだけの事故だ。記憶に残っていても不思議じゃない。



 オリビアさんはしばらく考えた後、口を開いた。


「確かに、あなたの言葉が真実なら、不思議な何かが起きているのかもしれません。けれど、夢で見たというだけでは王女に紹介するわけにはいきませんわ」


 まっとうな判断だよね。確かに、夢を見たからといって王女が会ってくれるわけもない。


「この学校を出た後、王女に近い場所で働くことはできませんか?」


「就職希望ですの?……なるほど。この学園に通っている人材なら、欲しがる人も多いでしょう。でも、私が推薦するとなれば、特別に優秀でなければなりません。

 ――今度の期末試験で、どれか一科目だけでいいのでトップ10に入りなさい。ただし、難易度が分かれている授業なら、上級以上が対象ですわ」


 この学校は二学期制だから、前期の期末試験で結果を出さなきゃいけないのか。


 うーん、モブキャラ作戦で目立たずに行こうと思ってたのに、これはちょっと目立つことになるかも……。


でも仕方ない。


 まあ、一科目だけトップ10ならそこまで派手に目立たなくて済むかな?


「はい、わかりました。ありがとうございます」


「お礼を言うのはまだ早いですわ。試験をクリアできたら、推薦の前に身辺調査もさせてもらいます。それを踏まえて、改めて判断させていただきますわ」


「はい、承知しました。ありがとうございます」


 オリビアさんとの面会を終え、部屋を出る。


 ルイーズに礼を言う。


「ありがとう」


「ねえ、大丈夫?うまくいったら王女の離宮で働くことになるけど……。あの場で、即答してたように見えたから心配になって」


「うん。前から考えていたの」


「そう……それならいいわ。本当は、第三王女のところは人手が足りていないはずなんだけどね。警戒されてるのか、それとももったいぶってるのか……」


「今は、これで十分よ」


「でも、トップ10に入るって並大抵のことじゃないわよ?」


「そうなのよね。でも、やってみる」


 ――多分、本気でやれば1位を狙うこともできる。けど、それは避けたい。


 できれば、ギリギリ10位を取りたいんだけど……10位を狙って取るって、逆に難しくない?

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